第七登場人物紹介
久しぶりです。また同じ理由で遅かったので誠に申し訳ありません。
この小説に存在している人は名前について現実の人間とは関係がない。現実にそのような名前を持つ人がいるなら知らなかった。
それに私の日本語、特にちょっとも完璧じゃない関西弁を許してください。
京都府京都市
『ディン~ディン~ドゥドゥドゥドィンドゥン~ディンドゥドゥドゥドィン~ディン~ドゥドゥドゥドィ~~ドゥン~ドゥドゥディディッ』
ああ~、それやわ。その神曲だけのおかげで元気に起きれはる。
しかし毎日は同じこと、目覚ましの鳴りを消さんとあかんです。
お静かも大事。
ほんで、学校の準備をしよう。
浴室にシャワーを浴びに行って、きちんとシャワーを浴びて、白と黒の二色の制服を着はった。上は黒、下は白。
さて、着替えが終わったので朝ご飯を食べに行けはる。
うちの名は野沢虎子、年齢17歳の高校生。
はい、知ってはる、男っぽい名前。小学生の時、めっちゃいじめられた。まあ、自分の行儀も昔から少し男っぽいが、人を名前で判断すべきやない。
ちなみに、虎ってうちの外見にも当てはまる。ヘアスタイルが虎のたてがみのようにもじゃもじゃ、それと髪色が虎の毛のように白と黒とオレンジ色の三色。目が翡翠色。
それがうちのこと、虎のような女。経験した全てのおかげでうちがこの虎のような女になりはった。いじめられたことが過去のこと、もう気にしまへん、虎っていつも前を見て目標を追い求めるのでね。
さあ、うちについては十分。
階段を下って、廊下を通って、食堂に着きはった。うちの親、野沢満と野沢さゆり、もうテーブルに座ってはった。
「おはよう、お父さん、お母さん」
「おはよう、虎子ちゃん。元気ですか?」
答えたのはお母さんやった。
「はい」
「良かったね」
それからうちもテーブルに座った。
「...おはよう、虎子ちゃん」
またか?
お父さん、うちと話す時にいつも悲しいようや。
「お父さん、大丈夫?」
「...大丈夫や、心配せんでくれ」
うちを見て苦笑いで言った癖に...
理由が全く知りまへん、お父さんが全く教えてくれまへんので。しかし教えてくれなくても明らかになぜか悩んでいる。
「虎子ちゃん、今日特に食べたいことありますか?」
お母さん、理由を知ってはるはずや。いつもこのことからうちの気をそらそうとしている。
どうして娘に教えまへん?
「...今日は卵かけご飯が欲しい」
「はい、分かりました。今すぐ作って上げます」
ほんで立って台所に行きはった。
あることをなんで教えてくれまへんか分かりまへんが、毎日うちのために頑張ってはるので何も言えまへん。
結局お静かが大事やと思って、無理矢理言わせてもらいたくへん。
自分の家族に対して積極的な行動はあかんやと思ってはる。
なのでお父さんと今別のことについて話した方がよろしいと思ってはる。
確かに何よりもあの理由を知りたいが、礼儀正しさはより重要やと思ってはる。今まで人のために頑張ってはった大切な家族に無理矢理ことをさせたらあかんです。
それはうちの意見。
「お父さん、お仕事はどう?」
お父さんも話題を変えて良かったと思いそう。お顔がほんの少し明るくなったので。
「仕事か?...ええや、お金がどんどん入ってくる」
「そうか?」
お仕事について話したら熱心がお顔に出はる。それなのでうちを見てもお父さんの内心の悲しみが消える。
「せや、最近の需要はほんまに大きい、最大企業もうちのシステムを買いたい。今年の収入は特に大きい」
「素晴らしいな」
今は楽しかった
「じゃあ...虎子ちゃんの仕事は?」
そしてもう楽しくない。
話がうちのことについてに変わるとお顔にまた悲しみが出た。その悲しみ、うちにも影響ある。
一体何考えるか、ほんま分かりまへん。
「うちのお仕事も今結構です」
「そうか?」
少なくともうちのことには興味を持ってはる。
問題が何かほんまに知りまへんが、興味の欠如やなくて良かった。
「はい、うちらは毎月もっと人気になって、もっと曲を売りはる。新しい動画の再生の数がどんどん増えはる。最近うちらの曲がラジオにももっと流される」
「フン、さすがやな、俺の虎子ちゃん。嬉しいわ」
その上、うちが成功したらお父さんがそれを誇りにして、ほんまの嬉しさをお顔で伝えはる。
うちのことについて話してはったのにお顔に悲しみと嬉しさが共存してはった。
お父さんがうちを愛してはるのが分かったが、そのためあの理由がより分かれなくなってもうた。
「お...おおきに...」
なので気持ちがとてもぎこちない。何が言ってよろしいか分かりまへんので恥ずかしいわ。
お父さん、どうしてあなたと話すのが難しい?
「戻って来まーーーす」
次の瞬間、お母さんが台所から朝ご飯を持って戻ってはった。
「虎子ちゃんに、美味しい卵かけご飯一つ!」
ああ、見るだけで美味しそうとしか思えまへん。
味わってみたら...
「ほんまにうまい!ありがとう、お母さん」
反応を見て、お母さんが嬉しそうに微笑みはった。
「良かったね」
幸いお母さんとうちの間のコミュニケーションには問題がない。
お互いに話すのが簡単。
「ねえ、私は台所にいた間、何について話したの?」
「別に、お仕事について」
「お仕事か」
うちもお父さんも見てまた微笑みはった。
「まあ、二人とも頑張っているんでしょう...ね?」
そういうことや、確かに。頑張ることをお父さんから学びはった。
それより、お父さんもお母さんを良く聞いてはった。
お母さんがいたら、少し緩んではる。今ほんまに優しいお顔をしてはった。
「ああ、せや...」
頷いて微笑もうとしてはった。
微笑むことが良く出来まへんが、それでも優しさが感じられる。
「本当に良く働いていますねー、分かっている」
ほんでうちだけを見はった。
「なあ、虎子ちゃん、あなたがお父さんより話しやすいんでしょう」
「はい、もしかして聞きたいことがあるの?」
言葉が早くて簡単に出た。話しやすいのがお母さんなので。
「そうそう、今日は何をする気ですか?」
少し分からないことがある。お父さんかお母さんか、どちらの方がうちのことにはもっと興味を持つか、分かりまへん。嬉しいが、分かりまへん。
「今日?学校が終わった後で録音スタジオとダンススタジオに行く予定です」
全部お仕事と関わりがある。
「そうか、頑張ってね」
「はい、ありがとう。絶対頑張ります」
お互いをいつも支持すべきやと思ってはる。うちもお父さんとお母さんを何をやっても必ず支持しはる。
お父さんとお母さんに今まで受けた支持を絶対忘れまへんので。
支持を限らず、今まで両親はうちにくれた全てに感謝してはる。なので頑張ることはうちの義務やと思ってはる。
さて、朝ご飯を食べた後に歯を磨いて、靴を履いて、家から出はった。
「行って来ます」
「またなー、虎子!」
ほんで学校へ立ち去った。
うちのリムジンに乗って学校に運転された。電車の方がもっと環境にやさしいので好きが、身元が知れたらあかんです。
京都に住んではることがよく知られるし、若い女子なのに背中が結構高いし、髪と目の色が違っても人相が同じ。それより、声が聞こえたら一瞬にして終わりや。
将来は知りまへんが、今の高校生の時には二つの身元を分けんとあかんです。
こういう生き方が難しいが、うちの夢なので結局自分が選んだ生き方や。勤勉に頑張るより他に道がない。
15分後、校門に着いはった。リムジンから降りはった。
『京都姫島学院高等学校』
ここに京都のエリートの子供が通ってはる。
平等が大事やと思ってはるので自分をエリートとして見なしたくへんが、うちのような人がここで多くの知らない他人に一瞬にして囲まれへん。
そうしている人は学年の入学の一週の後輩だけや。
しかし、完全に一人やない。周りに数人の友達がいはる。
「来たで~、京の虎姫さま」
ご紹介いたしはる、北里爽。
「みんな、近寄らなくても相変わらず虎子さんだけを見つめてるんやないか」
そちらの方が古里小夜子。
「大したもんやからなー。ちゃうか、虎子さん?」
そして依知川ちえみ、うちの親友と見なしてはる女。
数人って一握りという意味やった。
「おはよう、みんな。元気そうやな」
すぐに彼女たちに囲まれていた。
「さあな、フフッ」
爽さんが笑ってはった。
「確かにせや。しかーーーし...あんたほどやないはずや」
なんでそう思うのかな、小夜子さん。
「ほんま、あんたほど楽観的になろうとしてる人が知らへん...いや、悲観的になるのを避けてるだけやないけ」
後半は正解、ちえみさん。
「教えてくれや、なんでそれほどメンタル強いのか?」
と小夜子さんに聞かれた。
そうなのか?
「うちのことがメンタル強いって適当かな?簡単に諦める人やないが、とても感情的になれる時がある」
他の人にどう思われるかって結構興味深いやな。
「分かる分かる。感情的になれるって、人間の証明やないけ」
とちえみさんが言って急にうちを見て薄く笑ってはった。
なんか興味深い意見。同意しはる。
「人間は悲しみも楽しみも良~~く知ってるんやで...せやねん?」
速く目を開けた。
あれ?なんや突然この重い感じ?
また同意見やが、ちえみさんの雰囲気がちょっと...
「ハハハハッ、しかし今は楽しいやろなー」
それからうちの肩に手を置いはった。
「ハハハハハハハハハハハハッ、楽しい、楽しい!」
そして爽さんと小夜子さんも共に笑っていた。
一体なんやこれ、急に笑い出す...ビックリしたわ。
「この朝、楽しいから楽しいことについて話そう」
こいつら...おちょくるんでしょう!
急にけったいな雰囲気感じさせるなんて。
ほんま、たった2秒やったが、ほとんど危機感のようやった。
それでも楽しいのか?
「酷い!」
手を組んで振り向いはった。
「冗談やで、冗談」
「聞かんわ」
少し丁寧な話し方で話すように教えられたが、こういう時にはそうしまへんわ。
やりすぎたので、ちえみさん。
「落ち着けや~」
「聞かんわ」
謝ったらどう、小夜子さん?
「好きにせえ。しかし聞かんなら、毎日のお喋りを聞く必要がないやろ」
酷い!
酷い!酷い!酷い、爽さん!
うちらの授業前のお喋り、毎朝のことや!
お喋りから外すつもりなら、受け入れまへん。
「聞かん...ってわけか!」
再び振り向いて彼女たちを見はった。
「フフフッ、やっと落ち着いたな~」
「いちびるな」
手をまだ組んではった。
「分かった分かった、悪かった~~~」
まだふざけていたが、まあな、友人なので許す。
緩やかな人で良かった。
「代わりにうちが話し始める、理解できた?」
この相手以外とはより形式的に話しはる。
「了解やで、好きにせえ」
あら、この寛大さがありがたい、爽さん。
そして、やっと、友達の間のお喋り。
「あのさあ、高橋しょうの新曲、聴いたの?」
この名前を聞くと直ちに彼女たちの興味が引かれた。
そういうことや。
「ちょう待って、ほんまか?」
驚いたな、爽さん。
これからうちをお喋りから外すなんて、脅しとしても口にする気はもうないんでしょう。
「はい、神曲や!昨日2時間しか聴かんかった」
小夜子さん、大ファンなので知っていたはず。
「ええええ!? 知ってたならなんでうちに言わんかった?」
「自分で調べたらどう?出来へんの?」
「余計なこと言うな、このアホ」
ご覧の通り、こういう細かい口喧嘩になる。少しおもろいです。
「何が余計なの?」
「恐らくお前は正しいと思うんやが、それは全くない」
笑える。
二人がかなり親しいが、口論しやすい。
「実は、うちもその新曲をまだ聴いたことない。ちょっとなんでええ曲か、言い表せへんの?」
小夜子さんと爽さんが議論していた間、ちえみさんがうちだけと話したかった。
ちえみさんを見て返事しはった。
「どのところがええかって...良く聞いたな」
うちが教えて上げはるので。
「一言で言えば...『ベース』や」
その言葉を言いながら、テンションを上げようとしてあの有名なイタリア人の手の手振りをしはった。
「ベース?」
「はい。この曲のベースだけは...うっますぎる」
「せか?」
「そう、そう!出来るだけ早く聴いてみな」
お顔を見れば、納得させたようや。
「分かった、聴いてみる」
それから横を見たが、小夜子さんと爽さんの口喧嘩はまだ終わってまへんでした。
うちが終わらせんとあかんのようやった。
それ、どうすればよろしい?
簡単や、新しい情報で興味を引く。これからや。
「あのねえ、高木なおきが相葉みことの結婚を発表したのは、聞いたの?」
「何?」
「マジか?」
フフフ、おもろいやな。
即座に頭をうちの方に向けはった、何もなかったように。
「ほんまや、ほんま」
「せか?残念やな、お祝いせんわ」
早っ!
さてはある意味ですごい発言。
どうしてそう思うのかな、小夜子さん。
「相葉みこのこと...嫌いのようや」
「当たり前や!高木さんみたいな男、なんで相葉みこみたいな下品な女と結婚したの?分からんわ」
小夜子さん、ずっと相葉さんのアンチやったのか。
全く知りまへんでしたわ。
「うちもせ思うんやで。なんであの相葉とやったの?河原なら良かったのに」
「だよな?」
なんや急に小夜子さんと爽さんが同意見。
やはり近いなー、あの二人。喧嘩から同意へ。
ちえみさんもこれがおもろいと思って笑いはった。
しかしそれより、
「うちの番や!さて、良く聞けや~、高田まさよしがっ」
あっ、ベルが鳴った。今は教室に行かんとあかんかった。
悪いタイミングやったね、ちえみさん。
「何?なんて酷いことやで!」
ちえみさんの怒り、分かることが出来た。
「後で続けたらどう?」
「当然続ける!」
強い情熱やなー。
「はい」
しかし間に合うために、急がんとあかんや。
「じゃあまたな」
「またな」
「また、みんな」
「待ったるわ」
ほんでみんな教室へ歩いてはった。
さあ、お喋りが楽しいが、教育は大事。
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ついに授業が終わった。
さて、これからはお仕事や。
同じリムジンに録音スタジオへ運転された。ビルに入って、すぐに録音室に行きはった。
あの録音室にテーブルがあった。そのテーブルの上に脚本が置いたった。
先回のブックマーク、まだ覚えてはる。
はい、お仕事の一つは声優や。
本職やないが、声を使って働いてはるので適当なお仕事や。
ボイスが得意なので高校生なのにちょくちょく役を得はる。
ほんまに人々がこの職業を望んでいる理由が分かってはる。
しかしボイスより感情の真似を出来た方が重要やと思ってはる。
声優やない人も聞き分けるのが簡単な声があるが、演技力がなかったら声優になるのが難しい。
色んな感情の真似を出来れば良い。
例えば愛情。
「ジュンくん...あなたでけ...愛している」
ほんまに愛している人間がいれば、ずっと簡単になる。
楽しみ、悲しみ、怒り、痛みなど誰でも感じられるが、『愛』が特別や。
まあ、このお仕事は楽しいので、楽しみを表すのは他の感情を表すほど難しくないと思ってはる。
「これからもよろしくお願いしまっす!」
言いながらほんまに微笑んだら、またより簡単になる。
なので笑顔も練習した方が良い。
しかし悲しみ、怒り、痛みのようなマイナスの感情の場合、そういう感情をあまり経験したことがないなら、練習でしか演技が上手になりまへん。
勿論その練習は厳しいし、時間がかかる。
「もう許さねえ...てめえら...全員ぶっ殺してやる!」
練習には声が大きくなる必要があるので、練習するのに良い場所を見つけることが非常に難しい。
隣人に迷惑をかけないようにね。
さき言いはったセリフ、『ラブリーサプライズ』というアニメにあるキャラのためやった。テレビで自分のボイスを聞くのを楽しみにしてはる。
ここのお仕事が終わったので、立ってここから出てダンススタジオに行くつもりやった。
階段を下がって1階で出口の方へ歩いてはった。
その前にある男の人に止められた。
「野沢ちゃん、少しだけ話してくれへん?」
まったく、またか?
この男はうちの元代理人、堀内さん。元ってエージェンシーが変わったので。
他のエージェンシーに移動しはった。もう決まったことなので解決されたはず。
「文書は全て法的に署名されたのでしょう」
「まだまだや。もう一度だけ考えてくれへんの?」
しつこいなー。
「申し訳ございませんが、一度決めたことは決まったのです。元に戻れません」
「どうして?教えてくれ、金なら2倍も3倍も払える」
必死やなぁ、堀内さん。冷静になってください。
「違うのです。金の問題ではありません。お父さんが私の価値をもっと良く分かって相当に扱うエージェンシーに行けと言いましたので」
「あなたの価値をもっと良く分かってって...分かってたんやないのか?どういう意味や?」
どう説明した方がよろしいか?
いいえ、そもそも説明する必要があるか?
もう社長にご丁寧な手紙を書いはったので。
「堀内さん、今までの全てに本当に感謝していますが、先に進めます。それだけです」
「ほんまに感謝してんなら移動せんかったんやろ」
しつこい、しつこい、しつこい!
お父さんが前から堀内さんの性格が分かったんでしょう。
「それは違うのです、本当に感謝しています。理解してください、堀内さん」
「ああ、あなたの父親のもっと稼げるための計画やと...理解してるで。父親に操られるんや、あなた」
都合が悪くなるとそのようなことを言うと?
やはり移動して良かった。
「すみませんが、話になりません」
もう行きたかったが、堀内さんがうちの行く手を遮った。
礼儀正しく話して紛争を避けたいのに、どうしてこの態度?
「待たんかい!この話がまだ終わってへん!」
「そういうこと言われたら終わりです、堀内さん。受け入れられない話なので」
このような時に少し厳しく対応してもよろしいと思ってはる。
どれくらい丁寧なんでも、無礼に扱われる気がない。
「受け入れられないのはあなたとあなたの父親の方や!そんなアホらしい理由で拒絶されることが許さへん」
「それが真っ当な行儀なのですか、堀内さん?プロ意識がどこに行った?」
「そんな口をきくな!あなたたちの行儀が真っ当やと思ってんの?ふざけたこと言うな」
ここまでや。もっと厳しくなるしかない。
彼の目をまともに見つめはった。
「どいてくれませんか、堀内さん?行かないといけない場所があります」
声を尖らしまへんでしたが、重く言いはった。
「野沢ちゃん、気が変わらんの?」
「変わりません」
ほんで終わったの?
「ほんなら、仕方がもうない」
ほっとくの?
「わしを拒絶すんなら、『あの』ことをメディアに暴露したる」
何やと!?『あの』こと?
突然目を見張った。
「噓でしょう」
待って、落ち着け。証拠がないはずや。
心配するな。
「噓やない。影響力を保つため、写真を多く撮った」
まずい!うちの弱点!
晒されたらうちのキャリアがおしまいや!
「どうしてその...」
ほんまにまずい!
「あなたにその禁じられたことを許したのに、その恩を仇で返すか?」
誰が恩を仇で返すって?
「こそこそ写真をたくさん撮るって、酷くない?」
もうほんまに腹が立つ。
「あなたに言われたくへん」
なんや急にそのドヤ顔?
「悪いのがあなたたちや。屈辱されたらあなたも終わりや」
「最低!」
最悪の切り札や。
何の悪いことしまへんでした癖に。
お父さん、あいつらの本性を気づいたことに感謝してはる。
「今まで、誰もうちの会社から離れんかった理由、分かった?」
「ああ、貴様らの会社がくそみたいな会社だと、良く分かった」
それはうちのセリフやなかった。
「誰なんや?」
反応としてあのドヤ顔が消えた。
「こっちだ」
うちもあの方へ見はった。
最近知るようになりはったお顔やった。
うちの新しい代理人、中島空良。
「あなた...知ってる顔やないか!野沢ちゃんを奪い取った連中の一人」
「そういうこと言うな。何を奪い取った?合法的な移動でした」
クールやん、中島さん。
特に服装。
黒いスーツと黒いサングラス、ヤクザの女のような服装やが、ちょうどカッコ良い。
まあ、ヤクザってなら、口がそのようなもの。
「合法的!? 怪しいやり方を使ったんや、あなたたち!わしにはな、絶対に認めへん」
「残念ですが、書類事務が完了されたので法的に認められる。あなたが認めないなんて、何も出来ないので何の意味もない」
とてもクール、この女。
堀内さんと違って。
「それより、怪しいやり方を使ってるのは貴様らの方でしょう。今言ったこと、明らかに強請だ」
「強請やと?ハハッ、やからなんや?写真をメディアに渡しても、あなたたちしか損害を受けへん」
うち、ほんまにそのような会社と関わっていたの?
「それを思うなら、大違いですよ」
「何?」
ハラハラしてはるわ。
中島さんも切り札があるのか?
「貴様の行為は犯罪行為だと言っている。訴えたら貴様らは大変」
「何が犯罪行為?その写真は無害で普通の写真、内容が犯行とは関係ない」
それは確かに事実や。
「『大変』ってあなたたちのことや」
またドヤ顔が出て来た。
しかし今回には、ブーメランが来そう。
「フッ、思ったよりの間抜けだな」
「何やと?」
これ、熱い状況になる。
うちも、ハラハラよりピリピリや。
「貴様、本当に気づいていないの?」
「わしが何を気づくべきやと?」
「愚かな貴様、教えてやるので聞け」
ああ、中島さんは本気を出そうとしてはるようや。
「犯行なのは内容ではない。撮り方だ」
「ん?」
「野沢虎子さん、名前でも外見でも、全国に知られているアイドルとは関係ない。ただの個人です」
そうや。この業界には、篠宮女神やと知られている。
「どういうことを言いたい?」
「個人的私事の侵害だ。どれだけ愚かなの、貴様?」
言いたいことを言ってくれたな、中島さん。おおきに。
そして元エージェンシーの連中、許しまへん。
「それをそもそも知ってるんや。愚かなのはあなたや!」
ほんまに最低。
「違う」
「アホか、あなた?」
「個人的私事の侵害で訴えたら多額の罰金を払わせる、常識でしょう」
訴えましょう、中島さん!頑張って!
「アホやな、あなた。まずは、その前に野沢ちゃんのキャリアもあなたたちの評判もガタガタになる。その次、全ての写真を良~~~く隠れてる。訴えたら、あなたたちの証拠はどこ?」
「証拠?要らない」
ちょっと待って、うちも分かりまへん。
「んんんん?」
「疑惑だけがあったら、それは十分」
「もう意味不明の話...頭が大丈夫?」
確かに中島さんの話が分かりにくいが、堀内さんより頭が大丈夫でしょう。
「その疑惑の次、我々の会社は貴様らの契約者全員に新しい高い契約を申し出る。それだけでなく、貴様らに対する疑惑を証言したら、5倍のボーナスを出す」
ちょっと、5倍って、高値やなーー。
うちの新しいエージェンシーがそれを払う余裕があるが、それでも大金。
『大』を強調。
「何やそれ、このアホらしい話...確かにあなたたちの会社が裕福やが、そこまで金持ったら気が狂うのか?...そんだけの金を投げ出したら、メリットにならへんやろ」
「ああ、心配するな。貴様らが他の契約者も野沢さんのように扱うのなら、契約者がこのチャンスを見逃すわけがないんでしょう」
全員離れようとしたらまずい切り札で強請して影響力を保つって、怖い会社。
「それで、貴様らがパーになり、我々はほとんど独占になる。それから...ごゆっくりとあの投資を回復出来る」
堀内さんの口、窓のように開けていた。すごいシナリオやな、それ。
そして中島さん、突然狭く笑ってはった。
もしかして計画に...
「再び考えたら、野沢さんを構わなくてもそれは我々にとっては最大級の機会です。社長に今すぐ報告しないとっ」
「待て!それだけは勘弁してください!」
さき必死になった時、必死さがフェイクやったが、今はほんまもん。
すごいなー、中島さんの怖さ。
「なんでそうしようか?そうすれば我々にとってはメリットがない」
冷静すぎる。
「わし...わしらはこれから野沢ちゃんをほっとくから勘弁してください!」
これは嘘のようには聞こえまへん。
やっと言った、聞きたかったこと。これでうちの勝ちや。
「納得しないようです」
いいえ、冷たすぎるだけや。
「それ...それと写真を全部燃やして欲しいなら燃やすから勘弁してください!」
もっとよろしいこと言ったな、堀内さん。
しかし、それを絶対に実行してもらいたい。
「まだまだです」
これでおしまい。中島さんの勝ち。
「くそぉー!何でもしたるからええ加減勘弁してくださいって!何でも、何でもやるから!わし...将来地位が上がるから...何でもやる!」
必死の極度。土下座までしてはった、堀内さん。声でほとんど泣きそうやと分かった。
「何でもやる...だと?」
「はい!」
良くやってはった、中島さん。
完全勝利や。
堀内さん、完全に大人しくなりはった。よろしい。
「なら、私が選ぶ10名の契約者の移動の準備をいたして...ください」
「10名!? それ...無理や!社長にどう説明してええと思ってんのか?」
「無理なら、その内『社長』がいなくなる...そして貴様に地位を高める人は誰もいなくなる」
たった一つのセリフで堀内さんのメンタルを徹底的に壊した...
可哀想。堀内さんも何の抵抗も出来まへん。
「わ...分かった!か、必ず納得させる!」
堀内さんは嫌らしい人間やと分かったが、結局今は気の毒に思わずにはいられまへん。
あんな風に完全に敗北するって、ほんまに可哀想。
「ほら、どう行った、この商売?」
最後に中島さんも偉く堀内さんを馬鹿にして大きい屈辱を受けさせた。
さすが中島さん、敵に回したらあかんです。
「ま...まずかった」
「これこそは『ビジネス』、堀内さん。下手をしたのでただの自業自得」
「自業...自得...」
そうや、堀内さん。もっと早く止めれば良かった。
精神がこれからどうなるかな...心配しはる。
「明日まで野沢さんの燃やした写真の写真を送って。送らないと...」
「は、はい...」
「10名のリストを今晩送る。これだけです」
「最悪...」
「もう行ってもいいんです、堀内さん」
鉄の女より金剛の女...
「はい、間もなく行く...」
精神的に殺された堀内さん、だるくここからびっこを引いた。
結局言葉を失った。
とても有能な代理人やが、怖すぎ!
「これで全ては解決です、野沢さん。いいんでしょう」
「確かに...」
とてもぎこちない気持ちや。
「とにかく、ありがとうございました、中島さん」
それでも礼儀を忘れず感謝を伝えんとあかんです。
「何でもない、野沢さん。ただの仕事でした、あなたの代理人としての」
「はい」
感謝を求めずなんて、堅いな。
「さあ、私たちももう行こう。あいつによく邪魔されたな」
そう、堀内さんのせいで急がんと間に合いまへん。
「車に乗って、早く運転する」
「分かりました」
さき言いはった、中島さんの服とサングラスが黒いって...車の色、もう明白でしょう。
...違う、この言葉はあの場合には適当やない。
まあとにかく、中島さんが言った通り車に乗ってダンススタジオに行きはった。
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少し遅れていたが、中島さんと一緒にダンススタジオに着いはった。
このダンススタジオの外側は地味に見えていた。
中に入って、下の階へ降りてはった。
ここで会うべき人に会いはった。
「やっと来たなぁ、何かあったの?」
この人はうちのコーチ、飯泉千晶。
ボイストレーナーでダンストレーナー、どちらもやってはる。
「あったが、別に大したものではなかった」
中島さんにとって、確かに大したものや全くなかった。
「ならええ、遅いんで早く来い。虎子ちゃん、仲間が待ってる」
あっ、そうでしょう。
「はい、すぐに」
飯泉さんに付いて行って、ダンス室に入った。
仲間に見られると謝りはった。
「待たせて悪かった、すみません」
仲間が二人いた。
彼女たちがうちのパートナー。3人でアイドルグループや。
「なんでだ?もっと早くしてよ」
この少女の名は里野理理。
お姫さまのような外見と性格っていうわけや。元々は千葉の人。
「すみません、ある人に邪魔されたもんです」
「せやだ、責めるならそいつを責めぇ」
うちを今擁護したのは、この朝学校で見たお顔、依知川ちえみ。
爽さんと小夜子さんと違って、ちえみさんはアイドルや。なのでうちとより親しい。
「どうでもいいわ、そろそろ早く始めたい」
待つことが嫌いのでせっかちでイライラしているが、それでも理理さんはうちにとって近い人や。
「そうなんや、そろそろお時間や。虎子ちゃん、早く着替えへんのか?」
飯泉さんも早く始めたいようや。
まあ、仕方がないわ、早くしよう。
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間もなく着替えたが、もう始める用意が出来てはる。
オレンジ色のスポーツシューズ、黒いレギンス、白いタンクトップ、全然虎のような身支度。
「みんな、準備が出来ています」
「良さそう。今すぐ始めるんでこっち来い」
飯泉さんの言った通り、位置に着いた。
右側にちえみさん、左側に理理さん、そして中にはうち。
演じる時にはそれは普段の位置。
「ほな、曲を流す。ええな」
うちのまだ未発表の新曲...
発表する時、ええダンスで表現せんとあかんです。
なので今頑張らんとあかんです。
「はい」
ほんで...
1
緊張してはる。
2
しかし半端なダンスなんか見せる余裕もつもりもない。
3
行くで。
『諦めたい?いやダメです、うちがいる限りさせない』
『諦めたい?絶対ダメです、助けを求めれば、ど~うでしょう~?』
『先生がまさか自分、の弟子から~の~、教えが要るの?』
『先生がまさか自分、の教え~を~、そんな風に忘れちゃうの?』
『ほらいい加減、しっかりしないの~かあんた?』
『恋に落ちた、恩人がま~さか~おし~まいに~?』
『諦めたい?いやダメです、うちがいる限りさせない』
『諦めたい?絶対ダメです、助けを求めれば、ど~うでしょう~?』
『口達者のあなた、突然なんで今~、沈黙している?』
『行動の怪物、なんで今この~、優柔不断な姿を』
『目を逸らしながら、うちから隠そう~としているの?』
『悩んでいる、あなたを元気に~取りも~どしたい』
『諦めたい?いやダメです、うちがいる限りさせない』
『諦めたい?絶対ダメです、助けを求めれば、助けるよ~』
『愛している、あなたを落胆させな~い~』
『手を組んで、一緒にもうい~ちど~やってみ~ましょう~』
『諦めたい?いやダメです、うちがいる限りさせない』
『諦めたい?絶対ダメです、助けを求めれば力を貸す』
『諦めたい?その状態なら、うちの手伝いを頼んでくれ』
『諦めるな、お願いします、あなたなら絶対に、助けるよ~』
終わった。
ハー、少し疲れてもうた。
うちのように毎週複数回体操しても、一生懸命ダンストレーニングしたらこうなる。
それから飯泉さんが長くパチパチと手を叩いはった。
「素晴らしい!絶対に素敵なダンスやったで!パーフェクト!」
あら、ほんまにそんなに完璧やったのか?
飯泉さんが普段厳しいトレーナーなので。
「褒めてありがとう、飯泉さん」
勿論丁寧にお辞儀をしはった。
今回のダンストレーニング、ほんまに良く行った。
それからドアが開けられ、意外な人物がここに入った。
「窓から見てたよ。いいパフォーマンス」
「社長さん!?」
すぐにまたお辞儀をしはった、今回飯泉さんと共に。
飯泉さんも結構驚きはった。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です、社長さん。社長さんがここに来たのを知っていたらっ」
「いいよ、飯泉くん。俺の登場をサプライズとして見てみな」
落ち着いてもらうために腕を伸ばしはった。
それでもすごく緊張している。
この男は数十兆円の価値のあるコングロマリットの社長や。うちのエージェンシーもこのコングロマリットの一部。
「京都は綺麗だね、観光が最高」
社長さんの名は御三門貴雅、超大富豪。
この業界での影響力がほんまに大したものや。
「お前たちも最高だよ。だよな、中島くん?」
そして後ろから中島さんもここに入った。
「そうです、社長さん」
「さあな」
薄く笑いはって肩をすくめた。
「とりあえず、お前たちにはいい話ある」
うちの方へ見はった。
何を言いたいかな。
「さっきのダンス、すごかったよ。こう踊って、聴いた曲のように上手く歌ったら、次のツアーが大成功になると思うのか?」
ああ、なんか緊張してはる。
結局、御三門さんが結果しか見たくへん。
今、はっきり言ってうちの能力を自慢して言ってよろしいか?
「なると思います、社長さん」
あら、先にちえみさんが言いはった。
理理さんの目も、よりはっきり見えてはった。
「それ、お前の評価だ。いいね、自信」
社長さんはこれだけで納得しまへんでしたようやった。
御三門さんの期待は半端やない、雄弁と説明力が欲しいようや。
「自信だけではありません、社長さん。私は私たちの努力をいつでも見せれます」
理理さんも返事しはった。しかし御三門さんを納得させれるとは思えまへん。
「お前も評価がいいね。じゃあ、飯泉くんはどう思う?」
そしてトレーナーの責任者、飯泉さんの番やった。
飯泉さんもよく緊張してはったな。せんわけがないけれど。
「あの...彼女たちの評価が正しいと思います、社長さん!」
思ったよりも汗をかいた。
「そうか?なら、野沢くんの答えだけはまだ...」
こちらを見はった。答えるしかないの、今?
...やったるわ、正直に自分の意見を言える勇気があることを見せたるわ。
待ったらあかんです、はっきりとするわ。
「社長さん、今までのトレーニングが次のツアーを大成功させるのに足りると、ちえみさんと理理さんと同じように、思います」
やっと言いはった。
なんかとても良い感じや、必要やった。
で、御三門さんの判断になる答えが...
「『同意見』と『自信』がビジネスと深く繋がってる。そしてビジネスと『責任』が深く繋がってる...下手をしたら、その責任を取るんでしょう?」
ああ、やはり緊張するしかない。
元エージェンシーと今のエージェンシーの厳しさのところが全然違う。
お父さんが考えたうちの価値を良く分かることとうちを相当に扱うことのところなら、今のエージェンシーの方がより優しいが、ビジネスのところが何よりも厳しい。
「はい、社長さん」
もう考えを決めたので、否定しまへん。
「もう一度言うよ、下手をしたら、その責任を取るんでしょう?」
この感じがもっと重くなってもうた。
御三門さんのレベルが違う。
「はい、取る覚悟があります」
幸いちえみさんと理理さんに支持された。
うちはチームなので、共に答えましょう。
「いいよ、良く聞いてる」
覚悟があるので、もう社長さんの答えを聞かせてもらおう。
「確かに下手をしたら取るべき責任があるんだけど、上手くやれば代償とメリットをもらえるんだ」
やったのか?
納得させれたのか?
「例えば色んな番組に連絡したり、色んなスポンサーに紹介したら、いいんじゃないか」
ええっ!?
心臓が止まるような気がしはった。
社長さんからのOKを得ただけやなく、なんか莫大な報酬までも...
それ、受け入れればよろしいか?
「社長さん、本当ですか?」
ちえみさんも信じられんかった。
「大成功になれば、約束だ」
と薄笑いをしはった。
本気やと分かった。
「まさか...」
理理さんも飯泉さんも手を口の前に置いて口を覆はった。
「ほら、いいことをしたら適切に報われるべきだ」
と言って笑いが広がった。
...すごいとしか思えまへん。
勿論そのメリットが無料やない、次のパフォーマンスが絶対に上手く行かんとあかんです。
それでも今すぐ感謝を伝えんとあかんです。
「ありがとうございます、社長さん」
ちえみさん、理理さん、飯泉さんと一緒にご丁寧にお辞儀をしはった。
「何でもない、頑張るだけでいい。お礼にはまだ早い」
「はい、分かりました」
それから御三門さんがダイヤモンドの時計を見て振り向こうとしてはった。
「じゃあ、これで俺の訪問が終わりだ。そうだね、中島くん」
「確かに、社長さん」
中島さんがうちの代理人なのに、なんやこの秘書扱い?
「はい、行こう」
御三門さんと中島さんがここから去った間、うちらはお辞儀し続けはった。
「来てくれてありがとうございました、社長さん」
「どういたしまして」
ドアが閉まった後、普通の姿勢に戻った。
そして嬉しくハイタッチし始めはった。
「ラッキーやで、みんな!」
ちえみさんが喜びすぎて飛び始めはった。
「それそれ、ありがたい!」
理理さんは今頭の中が夢見なんでしょう
「社長さん寛大すぎる~!」
うちも結構嬉しいが、それでも何かをもらう前に、良い演奏せんとあかんって分かってはる。
「ほんまに感謝ぁ~」
勿論これだけは絶対に忘れたらあかんです。
「そうや、絶対大成功させる!」
飯泉さんも気合が乗ってきたなぁ。
考えることが今うちらと一緒。
若さは良いな。
「そのためみんな頑張ってくださいや」
言うまでもない、飯泉さん。
「はい、約束で」
「私も」
「うちも、飯泉さん。がっかりさせませんので心配しないで」
みんな笑ってお互いを見てはった。
うちの関係が信頼できる関係なので。
「ええ。ほんで、また明日」
飯泉さんの言うことでトレーニングが終わった。
これで行ってもよろしかった。
「また明日、飯泉さん、みんな。行くわ」
うちの場合、今日は確かに行くべきところがある。
「またな」
「また明日」
そしてちえみさんと理理さんがお互いに笑顔を見せて、少し抱きしめた。
すぐに更衣室に行って着替えはった。
それと急ぎはった、次の予定はうちにとってすごく大切なので。
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二つの意味で高いマンションへ行きはった。
中に入って、プライベートエレベーターに乗りはった。
うちのマンションやないが、ここに住んでいる人にそれを使用するために許可カードが渡された。
25階まで乗って、あそこで降りて、馴染みのドアまで歩いてはった。
【矢倉】
それからドアのベルを鳴らしはった。
『もしもし、誰ですか?』
「うちです」
『いいね!良く来たな!少し待って、すぐに開けるから』
うちの声を聞くだけで元気になりはった。彼も、会いたかった。
ほんでドアを開けてうちを入らせてくれた。
入った瞬間いつも通りに抱きしめた。
「願ってもない」
彼の腕が...とても暖かかった。
「君もな」
暑い挨拶、とてもよろしい。
ずっと会いたかった、うちの唯一のボーイフレンド、矢倉将斗。
将斗は元々神奈川の人やが、ここで学生生活をしてはる。
彼のお父さんが、御三門さんのように、超大富豪や。なので将斗は高級マンションに住んだり、高級車で運転されたり、好きにVIPイベントとか舞台裏イベントとかエリートのイベントに行っている。
うちもそのようなイベントで会って、話して、それから仲良くし始めた。
将斗は金持ちだけやなく、頭が賢くて心が優しい、道徳のある紳士なので毎日会って良かったと思ってはる。
「はい、どうぞ」
暖かい笑顔を見せて呼び入れてくれた。
「おおきに」
マンションの外側よりも内側が結構美しかった。
特に広い窓が素晴らしかった。京都の夜景の魅力がここから見やすい。
「美しいね」
「そうですね、素敵ぃ」
並んで美しい街の明かりを遠くから見つめてはった。
見つめながら将斗がうちの肩の周りに腕を回しはった。
うちをどこ触ったら気持ちええところか、良く知ってはる。
「こんな時に、本当にここに来て良かったって思ってる」
「うちも、将斗」
一緒にいるので、このような感じや。
将斗だけなら、穏やかさで心が落ち着くことが出来はる。
「これから、まだ約1時間半見続けられるのもいい」
「1時間半といい、君となら1秒が天国の経験ですよ」
なんか安っぽいセリフやが、仕方なくそうしか言えまへん。愛でまさか平気でダサいことを言えるのかな。
少しおもろいです。
「ところで、何か飲みたい?欲しいならドリンクを用意できるよ」
ああ、よろしいな!美味しいドリンク飲もう。
「いい考えですね!ドリンク作ってくれるの?」
「なら共に食堂へ行こう。すぐに夕食の準備が出来るから」
うまい料理を作れる男がほんまに宝物なのや。
うち、ダンスと歌なら将斗より上手やが、将斗も色々うちより優れているところがある。
それから一緒に食堂へ行きはった。
うちが先に座ってはった間、将斗がドリンクを作っていた。
チーン
「ああ、料理の準備が今出来た」
グリルから取ったのは、鱧の蒲焼やった。
色から良く焼き上げられたと分かった。
それとテーブルの上に置くために将斗がうちを通り過ぎた間、その匂いで美味しさが分かった。
「ねぇ将斗、とても美味しそう」
「そうかもしれないね、すぐに味わってましょう」
共にテーブルに座って、お互いの目を見ながら手を組みはった。
「いただきまっす」
すぐに箸を拾いて一口食べてはった。
お母さんの料理ほど美味しかったので感情が顔に出はった。
「美味しい~~」
「好きで良かったね、虎子。君のためだ、この味」
こうまですれば、将斗が出来ないことが存在しないようや。
ドリンクも飲んで味わってみて...
最高!
「ああ、ドリンクも美味しすぎるーー!ありがとう、将斗!」
「好きだったらいい、虎子」
楽しませてもらったな、将斗。この雰囲気をもたらせる者は天才そのもの。
それから将斗も大きい一口食べはった。
「さあ、今日はどうでした?」
勿論食事の間に話をしはる。
話がなかったらこの夕食の意味もないので。
しかし美味しかったのでよろしい雰囲気を、今日のあった悪いことについて話したら、変えてまうかも。
「どう言おうか...いいことも、悪いこともあった」
「何がいいでした?」
「まずはいいことですか?」
よろしいね。これで良い雰囲気がもっと少し続くんでしょう。
「勿論、君に関するいいことを先に聞きたいんだよ」
もう~将斗、このまま頬が赤くなってまうわ。
「うふふ、やめてよ~~、将斗~」
ほんまに将斗の全てがチャーミング。
では、お望み通り。
「いいよ。いいことは...例えばダンストレーニングは楽しかった」
「上手く踊ったんでしょう」
「そう、そう。飯泉さんも、御三門さんも褒めてくれた」
将斗はうちのお仕事の関係者を知っている。
「何?あの社長がここに来たの?」
良く驚きはったな。
「そうです、中島さんと一緒に」
「あっ、そうか。じゃあ、中島さんも褒めてくれたの?」
「いいえ、褒めなかった。しかし代わりにうちを大変なことから救ってくれた」
一瞬にして将斗が心配しそうな顔をしていた。
立ち上がって声が大きくなった。
「なんだ、危ないことがあったの?」
まず将斗を落ち着かそうとしてはった。
「心配してありがとうが、身体的な問題ではなかった」
幸い落ち着きはった。もう一度座った。
「そんなもんだったらぶっ殺しに行くよ」
間違ってもうたようや。
「ちょっと、将斗...」
「ちょっとじゃねえ、本気だ。誰にもそんなことを許さん」
将斗がこのように怒る時がほんまに珍しい。
えらいことが起きたらうちのために心配してくれて嬉しいが、将斗の怒っている姿を見たくへん。
「じゃあ、何があった?」
言った方が良いようや。
将斗が諦めないし、えらいことをボーイフレンドから隠すのが良くない。
「元代理人の堀内さんにエージェンシーから離れたので脅しを受けた」
拳をしっかり握った。
「この野郎...何の脅し?」
声が怒りでいっぱいので少し不快にほど強くなった。
「それは...ヤバいものでした」
良い雰囲気がもうないのに、もっと悪くなるようや。
「一体何?」
でも...言うしかないようや。
「君とうちの...密かに撮られた写真」
勇気を奮い起こして、危ないニュースをはっきりと現した。
「何!?」
急に緊張して真剣になった。立ち上がってテーブルの端を握った。
「そうです、最初は信じられなかったよ。実は...怖かった」
そうや、ほんまにアイドルとして終わりやと思っていた。
堀内さんの道連れ計画がありえないほどのショックやった。
「ふざけやがる奴ら...許さん!」
将斗がカンカンに怒って、拳をテーブルに叩きつけた。
熱い息を明らかに聞けていた。
「でも幸い、中島さんがそれを解決した。その写真を消させたのでこれからはっ」
「いいえ、そんだけのことは足りないよ」
絶対気が変わるようやなかった。
「虎子、一つだけのことは君が知ってほしい」
突然声が少し下がっていたが、より重くなった。
「何ですか?」
なんて不快な話になってもうた。
「君が望んでいるなら...奴らを全員『終わらせる』ことが出来る」
なんやと?
「本当ですか?何を言っている?」
なんか暗い意味で言ったと感じてまうわ。
「文字通り『おしまい』にすること...」
恐ろしい。
将斗の目つきが完全に変わってもうた。
「い...嫌です...」
言葉遣いが曖昧やが、もっと深く考えたくへん。
「考えてください、虎子。俺の力が半端ない...それを、君のためなら使う覚悟がある」
うちのために、一体どこまで行けるの、将斗?
「それは必要がないって...」
「でも中島さんがいなかったら、痛い目に遭ってたんでしょう!奴らにキャリアが潰されたら、苦しむようになってたんでしょう!」
正論やが...
「まあそうかもしれないが、...」
うち、ろくに答えられまへんのでほんまに情けないわ。
「ならなんで報復させないの?君が何も悪くないのに...奴らが値にするんでしょう」
「うちが...完全になぜか知りませんが、復習や報復など...うちのことに合いません」
ずっとお互いの目を見てきたのに、お互いを説得できまへんでした。
感情的やったのに、効果的やなかった。
「虎子、君が優しすぎる」
うちも将斗もご存知。
それでも悪いかどうか良いかどうか、変わるとは思いまへん。
「でも結局、君は俺がやって欲しくないなら、やらない」
そこまでかな。
「将斗...」
「どうした?」
「うち...あること出来ないので、君だけを頼りにしている...」
情けなくて、ある点では弱いので、将斗に可愛がられたい。
「安心してください。君が出来ないことなら、俺に任せてください。君が出来ないなら、俺がやってやる」
心が将斗に完全に取られた。身も心も将斗だけに完全に任せれば安心できる。
「はい...」
「虎子、君を絶対に何があっても全力で守るから」
幸い、さっきよりよろしい雰囲気になりはった。
「将斗...」
「どうした?」
「この夕食が終わると...うちを...しっかり抱きしめてくれないの?」
今年、今ほどそれが必要やなかった。
「分かった、虎子」
感情を理解できてくれてありがとう、将斗。
すぐに、約1時間半だけやっても、最高の時間になる。
激しく楽しみにしてはる...
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将斗と一緒の時間の楽を超える時間は存在しまへんが、家に帰る時間が来てもうた。
筒井さんの運転手が将斗の依頼でうちを家まで運転してくれた。
「お父さん、お母さん、ただいまー」
「お帰り、虎子ちゃん」
部屋に行く前に勿論迎えた。
そして部屋に着くと手紙がテーブルに置いたことを見出しはった。
手紙ならファンレターでしょうと思ってはった。
よろしい!ファンレターが届いてくれればその日がもっと良くなる。
うちに手紙を書くファンがいると思ったら嬉しさと感謝を感じはる。
「虎子ちゃん、夕食です!」
ああ、お母さんも夕食作ってくれたようや。
お母さんの料理か将斗の料理か、どちらの方がより美味しいと決めるって難しすぎる。
将斗と共に食べはったが、お父さんとお母さんと共に食べる余裕がある。
ほんで、手紙を読むのを後にしはる。