表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ガンナイフブレイカーズ〜近未来リアルMMOのゲーム実況トッププレイヤーは「本物の戦争」で無双し、敵ヒロインをネットアイドルにするために略奪する!〜

作者: イーサーク

 警告:本作はVRではなく、残酷なディストピアSFです。


 そいつの頭と胸がブッ飛んだ。

 そいつの汚ねえ血が、きれいな花火となって飛び散った。


 昨日のプレイ中のことだ。最高の瞬間だった。

 RyuSEIにとっては気分爽快だ。

 クソつまらない学校に行っている間、そう思わずにはいられなかった。


 このクソオヤジ教師も、あのクソババ教師も、ウザったらしい。

 うるせえんだよ。俺は国の英雄だぞ。お前らなんかより、ずっと偉いんだ。

 お前らが安月給でこき使われた後で、俺は一晩で何千倍もの金を稼ぐことができるんだ。

 さっさと学校が終わってほしくてたまらない。あんなクソ教師どもなんてブチ殺したくてたまらない。


 そんな地獄で拷問な時間が、やっと終わった。


 すぐに鞄を手にして、教室を出る。

 廊下から階段を降りて、校舎の出入り口から校門に向かった。


「お迎えに上がりました。御主人様マスター


 校門で、彼女が出迎えてくれる。

 着させている服はこの学校の夏服、容姿はトップグラビアアイドル顔負けだ。

 自宅に帰れば、彼女のようなアイドルがたくさん待ってくれている。


 校門の前で彼女を思いっきり抱きしめると、皆に見せつけるようにキスをした。

 それから周りの目を無視して、彼女と手をつないで、校門から外に出る。


 帰り道の途中で、コンビニに寄った。

 その時の気分で、適当に選んだ炭酸飲料とスナック菓子を買った。


 次に向かった先で、いつもどおり駅前のファーストフード店に入る。

 コーラLサイズとハンバーガーMサイズとポテトLサイズのセットを彼女と一つずつ頼んだ。

 それから店内の客席で空いている席を探し、見つけた隅の席に彼女と向かい合って座った。


 そうしていつもどおりに、ゲームを始める。


 鞄から取ったゴーグルを二つ取って、もう一つを彼女に渡す。

 彼女と一緒に、ゴーグルを被り、ポケットからスマホを手に取った。

 スマホだけでもプレイ可能だが、ゴーグルかぶれば臨場感が違う。


 準備完了。スマホの画面からゲームのアプリを指先でクリックする。


 ゲームが起動する。周囲の空間がゲームの世界に変わっていく。自分の意識がゲームの中に入っていく。


 ゲームの中で、彼は「RyuSEI」という名前ネームになる。

 ネット上でライブ配信が開始され、観客ゲストが何百万人と集まってくる。


 RyuSEIは業界トップクラスのゲーム実況プレイヤーだ。

 彼にとって、RyuSEIこそが本当の自分だった。


 さあ、みんな、プレイ開始だ。

 リアルMMOゲーム、ガンナイフブレイカーズの始まりだ。


 RyuSEIの意識が、プレイヤーキャラクター「ペルセウス」の中に入り込む。


 ペルセウスの体は、今、大型輸送機の中だ。

 天井からクレーンで固定され、前から後ろまで、他の様々なキャラクターと共に吊り下げられている。背部には降下用のブースターが取り付けられてあった。

 敵地を目指して飛行中なのだ。


御主人様マスター、私も近くです」

 彼女から連絡のボイスが送られてきた。


 ペルセウスは忍者タイプのキャラクターだ。蒼色の全身は超強化骨格で、顔の仮面マスクにある横に細長いゴーグル状の眼が超イカス。

 左側には大型銃、右側には振動剣をメイン兵器ウェポンとして装備。さらにサブ兵器ウェポンとして、剣と銃身を一種ずつ隠し持つ。


 降下まで、残り10分。視界の隅に、文字列テキスト表示されている。

 それまでにRyuSEIは今回の作戦ミッションを確認することにした。


 目的は、敵拠点にいる敵司令官の暗殺だ。

 プレイヤーたちは、敵拠点の南1キロ先の周囲に、味方NPCと共に降ろされる。

 そこから自分たちの足で目的地まで目指すことになる。

 途中で遭遇するザコ共は、いつもどおり殺していくだけだ。


 目的達成に成功したプレイヤーは、100万Pが与えられるルールだ。

 先に着いたプレイヤーには、ボーナスで10万Pもらえる。


 敵プレイヤー一人を倒せば、1万Pゲット。

 ザコ一匹は、1Pにしかならない。


 そして最後に最もポイントが高かったプレイヤーが、今回の作戦ミッションの勝利者となるのだ。

 まあ今回も勝利者は俺だろうなと、RyuSEIは思った。


 降下まで残り3分。

 輸送機の中で、サイレンが赤く点滅する。

 警告音が激しく鳴り、底部のハッチが開かれていく。

 遥か下に、これから降りる都市が見えた。


 カウントダウン開始、9、8、7――。

 RyuSEIの闘志が、ペルセウスの中でたぎっていく。


 6、5、4――。

 ネット上で観戦中の客たちも歓声を上げて数える。


 3、2、1――。

 チャットのコメントが殺気立つ。


 0。降下開始。

 クレーンアームが解除され、他のキャラクターたちと共に、RyuSEIは輸送機から空へと解き放たれた。


 急速に落下しながら、背部のブースターが点火される。

 RyuSEIは、空中で頭を下に、足を上に傾け、降下体勢を取る。


 自由落下に噴射が加わり、物凄い勢いで落ちていく。

 青い空の上で、下に広がる市街がぐんぐん近づく。


 コンクリートでできたビルや家屋が立ち並び、所々に破壊された形跡があった。

 この戦場ステージに降りるのは、何度目だろうか。


 まあ、そんなことはどうでもいい。いつもどおり暴れるだけだ。

 RyuSEIは落ちる軌道を左側に傾ける。

 降りる場所は気分で変わる。今回は、目的地から南南西を通る道路に降りることにした。


 低高度に到達。

 市街の地面がほんの下まで迫る。

 頭を上に、足を下にして、着地体勢を取る。


 落下速度が緩やかになっていき、道路の路面がすぐ下まで来る。


 RyuSEIは冷静になる。

 観客ゲストたちのテンションが上がる。


 背部ブースターが急点火。

 RyuSEIは両足を踏ん張って路面に着地し、戦場ステージに降り立った。


 そしてブースターを背部から切り離す(パージ)

 すぐに目的地めがけて、自らの足で走り出す。

 観客ゲストたちの盛り上がりは、最初の最高潮クライマックスに達した。


「来たぞ、ブレイカーズだ!」

 

 道路の向こうから、叫び声が聞こえてくる。

 早速、ザコ敵のお出ましだ。


 通りたい道路の曲がり角や建物の影から現れたのは、人間だ。


 数は十匹。全員、顔や全身の服はひどく汚れ、突撃銃アサルトライフルを持っている。


 RyuSEIは彼らに向かって、走行ダッシュを加速させた。


「撃て、撃――」


 ザコ共が生意気にも、こちらに向かって突撃銃アサルトライフルを撃とうとする。

 その前に、こちらから左手の大型銃を撃つ。


 大型銃『メドューサ』。

 愛用する銃の引金トリガーを引く。いつものように立て続けに。


 弾倉に装填されていた60口径の弾丸十発が、銃口から連続発射される。


 銃声が轟いて、十匹のザコが一瞬で赤いチリと化す。

 そこをさっさと通り抜ける。


 さらに敵が断続的に現れ、速やかに脳天直撃ヘッドショットで撃ち殺す。

 武器を持たない敵もいて、背を向けて逃げ出す。一匹残さず撃ち殺す。


 何のことのない技だが、観客ゲストから見れば華麗だ。

 投銭スパチャが何十回と振り込まれる。これだけでクソ教師どもの日給分以上が稼げた。ざまあみろ。


 弾切れになり、走りながら大型銃を左腰の銃嚢ホルスターに格納する。腰裏に装着された収納領域バックパックから自動で弾丸が運ばれ、一瞬で大型銃に再装填リロードされた。


 幹線道路に出て、そこを横断する。

 正面には壊れかけた灰色の建物が並んでいた。

 最短距離を進みたいが、道はない。


 ならば近道ショートカットだ。正面の建物の三階にある窓に向かって跳躍ジャンプし、ガラスを割って建物の中に飛び込んだ。


 床の上で転がって(ローリングして)、受け身を取る。

 すぐに立ち上がり、目的地に向かって走行ダッシュした。


 建物の中はコンクリートがむき出しで、壁のあちこちが崩れていた。

 部屋を出て、廊下を駆け抜ける。


 その先の曲がり角で、ザコ三匹と遭遇した。

 奇襲だ。

 左右から散弾銃ショットガン手榴弾グレネードを持って、接近戦を仕掛けてくる。最悪、しがみついて自爆する気だ。


 左手の大型銃では間に合わない。と即座に反応し、右手の振動剣『ハルパー』を振り回した。


 三匹順に、首斬る、頭割る、腹()さばく。

 あとは放置。血と内臓が飛び散ったその場から落ちた手榴弾グレネードだけを拾って、すぐに去る。


 タイムは0.3秒。またもや多くの投銭スパチャが振り込まれる。

 いい調子だ。RyuSEIはいい気分になった。


 廊下を走り抜け、奥の窓からガラスを割って飛び込む。


 建物の外に、宙の上に躍り出た。


 その瞬間だった。


 空中で体を思いっきり曲げて、右側から飛来したライフル弾を回避する。


 敵プレイヤーによる遠距離からの狙撃だ。

 そろそろ誰かが襲ってくると思っていた。


 おそらく使用キャラクターは遠距離タイプの『ライト』、使用武器は大型狙撃銃スナイパーライフル『キューピット』か。


 このゲームは、作戦中の同士討ちも許される。

 敵プレイヤーを倒せば、1万P。もらうのは当然俺だとRyuSEIは疑わない。


 敵の位置はどこだ。

 彼女に命じる。「了解、御主人様(サー・マスター)


 すぐに前方の建物二階の中に逃げ込む。

 左手の銃を銃嚢ホルスターに収め、前に向かって走る。


 速度を一瞬落とす。目の前の右の壁がブチ破られた。


 敵の狙撃。まだ建物越しで狙ってくる。

 再び加速。走る。

 

 観客ゲストたちは慌てだす。RyuSEIは冷静だ。


 敵の連射。右の壁が次々と破壊される。

 その中を駆け抜ける。左腰から剣を取り出す。


 そこへ、左後ろの階段から敵キャラクターが飛び込んできた。

 敵狙撃手と連携している相方のプレイヤーだ。


 バレバレなんだよ。


 それに背を向けたまま、左手のサブ兵器ウェポン・片手剣『クリュサオル』を投擲した。

 と同時に反転、接近する。


 相手は暗殺キャラクター『キャット』だ。

 両手剣『オオスズメ』で突き刺さそうとしたようだが、逆に胸部にRyuSEIが投げた片手剣が突き刺さっていた。

 RyuSEIは笑いながら片手剣を左手で掴み、右手の振動剣『ハルパー』を振り回し、『クリュサオル』との双剣でキャットをバラバラに解体した。


 敵相方を撃破。1万P加算。

 観客ゲストからチャットのコメントと共に歓声が上がる。


 と同時に再度反転。ライフル弾に粉砕されるキャットの死体を置き去りにした。


御主人様マスター


 彼女から敵座標が送られてくる。

 位置は、右5百m先の5階建てビル屋上。

 次の指示を送る。


了解サー


 二階の中を走る。

 前方に窓が近づく。そこから外に出た瞬間、敵はまた狙ってくるだろう。


 両手の剣を鞘に収める。

 左手で銃嚢ホルスターから大型銃を出し、右手で腰裏の収納領域バックパックからサブ兵器ウェポン銃身バレルを取る。


 次の瞬間、窓から外に飛び出した。


攻撃アタック


 同時に、彼女が敵プレイヤーに砲撃。

 閃光手榴弾スタン・グレネードで、敵の狙撃を封じ込む。


 そしてRyuSEIは宙を跳んだまま、右5百m先の5階建てビルの屋上を狙う。


 銃口に延長銃身(バレル)『ペガソス』を取り付けて、狙撃銃スナイパーライフルに変えた大型銃『メドューサ』で。


 屋上に混乱中の敵プレイヤーを発見した。


 空中を跳んだまま、正確に狙い、『メドューサ』の引金トリガーを引く。

『ペガソス』の銃口から銃弾が飛ぶ。


 脳天直撃ヘッドショット

 右5百m先の5階建てビル屋上で、敵プレイヤーの上半身が木端微塵と化した。


 1万Pに加え、ボーナス3000Pをゲット!

 観客ゲストは総立ちだ。


 どうだ、クソ野郎ども! これが俺だ! RyuSEIの実力だ!

 大声で叫んだ。叫びたくてたまらなかった。


御主人様マスター、バッチリ録れました」

 彼女から敵が直撃の瞬間を録画できたと連絡が来る。

 何もかもサイコーだ。


 そのまま路面に着地し、大型銃から銃身バレルを取り外す。再び目的地を目指して、建物に沿って道路の上をひたすら走る。


 またザコが現れる。

 遠いのは一発お見舞いする。近いのは一太刀浴びせてくれる。

 建物の影や屋上からロケット弾を撃ってくる奴は、跳躍ジャンプして爆炎を飛び越えながら『メドューサ』を撃ち返す。


 止められるモノは誰もいない。

 どいつもこいつもザコすぎて笑いが止まらない。


 おっと、外した。

 畜生、別の奴が押し倒してかばいやがった。

 まあ、いいや。

 そいつは代わりにミンチになって死んだから。

 助けられた奴もすぐに死ぬ。


 そう思いながらRyuSEIは仰向けに倒れたザコに近づいた。

 血に濡れた肩を抑え、とても悔しそうな涙目でこちらの顔を見上げているそいつに、大型銃の銃口を向ける。


 ペルセウスの顔は仮面マスクで隠れ、プレイ中のRyuSEIは、ほくそ笑みながらスマホをクリックしようとする。


 直後、視線と銃口を右に向ける。別のザコが接近してきたからだ。

 しかし見惚れてしまい、撃てなかった。

 

「逃げて!」


 そのままフルオートで撃たれた突撃銃アサルトライフルの全弾を浴びる。

 ペルセウスの装甲の前には豆鉄砲だ。問題ない。

 倒れていたザコに逃げられるが、既に興味は撃っている相手に移っていた。


 撃たなかったのは、撃った相手が、とてもかわいい美少女だったからだ。


 黒髪の長いポニーテール。

 突撃銃アサルトライフルを必死に撃ち続けて、息を弾ませながらこちらを睨んでいる。着ている戦闘服なんて、とてもとても似合わない。


 それと見覚えがあった。

 通名コードネームは、メルヘン。

 懸賞金けんしょうポイント300万Pの敵ヒロイン。

 そんな大金ポイントがかけられている理由は、もちろん美少女だからだ。


 現時刻を確認する。明日届けるためには、あと三十分しかない。


 RyuSEIは決断する。

 目標を「敵司令官の暗殺」から「メルヘン略奪ゲット」に変更。

 観客ゲストたちに宣言する。


 明日の夜は、あの美少女をネットアイドルにして公開ライブだ!

 観客ゲストたちは大盛り上がりとなった。


 RyuSEIはペルセウスを動かして、メルヘンへゆっくりと歩かせる。


「逃げろ! 狙われてるぞ!」


 ザコの誰かが叫んだ。

 メルヘンが怯えた顔を浮かべ、後ろを振り返って逃げ出す。

 RyuSEIは最高に笑って、ペルセウスを走らせ、彼女を追いかけた。


 市街の路地を、メルヘンが走って逃げる。

 ペルセウスが走って追いかける。

 その間に、ザコ共が次々と出てくる。


「止めろー、こいつを止めろー!」


 メルヘンを守ろうとしているのだ。


 うぜえんだよ、邪魔すんなよ、と罵りながらRyuSEIはザコ共を蹴散らした。

 遠くのザコはメドューサで射殺し、近くのザコはハルパーで斬殺する。


 ザコどもの頭や胸が消し飛び、首や腹が断たれ、死体が次々と出来上がる。


 時間稼ぎにしかならない。そのせいで未だに追いつけない。忌々しい。


 向こうのヒロインが振り返る。泣いていやがる。

 だったらもう止まれよ、君のせいでもっと死ぬぞ。

 安心しろよ、優しくしてやるからさ。


 そう叫んでも、ヒロインは止まらない。

 邪魔なザコも尽きない。イラついてきた。


御主人様マスター、他のプレイヤーが数機接近中」


 今、その一人が左側の建物の屋根に見えた。

 横取りするつもりか、ハイエナ。

 盗られてたまるか、殺してやるよ。


 と思った瞬間、そいつが空から跳んできた何かに踏み潰される。


御主人様マスター、敵の人型ドローンです!!」


 遅えよ、役立たず! と罵りつつ指示を送った。


 その兵器が横から乱入してきて、RyuSEIは急停止する。


 頭部が元から欠けていた。

 そんな首なしの身長5mにもなる灰色の巨人が、目の前に立ちはだかる。

 新型のドローン兵器『ベラトリックス』だ。


『早く逃げろ! こいつは俺が食い止める!』


 巨人がマイク越しの声を響かせ、メルヘンが誰かの名前を叫び返した。

 パイロットの声だ。おー、おー、随分と親しげじゃないか。誰が食い止めるって!? 

 RyuSEIはいろいろと気に食わない。お返ししてやると心に決めた。


 巨人が大熊のように両手を大きく広げて、こちらに突進してくる。


 体格差からパワーの差は歴然。


 RyuSEIは、右に避けた。

 避けながら、ベラトリックスの脇腹めがけて『メドューサ』を撃つ。


 しかし案の定、硬い装甲に弾かれる。

 忌々しく思いながらも、躊躇せず後退する。


 建物の壁と壁の間を続けて蹴って、屋根の上まで飛び跳ねた。

 ベラトリックスも腕で壁を駆け登って、ここまで追いかけてくる。


 どこから流れたものだ。ヒロインをもう少しで捕まえられたのに。クソ。武器を持ってないのか。使うなら装備もちゃんと整えとけよ、貧乏人が。倒した絵がサマにならねえんだよ、クソッタレめ。とRyuSEIは心の中で罵りたいだけ罵った。


 とりあえず今は退く。

 真っ向からは戦いづらい。退くために屋根の上を走る。

 当然、背後から巨人が屋根を叩き割る足音を轟かせながら追ってくる。


 逃げながらも敵の動きからパイロットの腕を測る。

 畜生、中堅プレイヤーごときが。

 まだか?


御主人様マスター、見つけました」


 彼女から連絡。仕事が速い。やるじゃねえかと褒めた。

 座標が送信されてくる。そこに向かって方向転換して、隣の屋根に跳ぶ。


 後ろから一瞬だけ足音が途絶える。

 すぐに気づいて、慌てるように追ってくる。


 屋根の上を走り続けて、壁を飛び降りる。

 背後で巨人が降り立つのを無視して、地面を疾走した。


 向かうのは、この先の廃工場だ。


 廃工場が近づく。高い金網フェンスに囲まれていて、その中には広場があった。決闘デュエルの場には、おあつらえ向きだ。


 そして廃工場を出たすぐそばで、黒く汚れた服を着た若者が立っていた。

 スマホをコントローラーにして、必死に操作している。

 『ベラトリックス』のパイロットだ。


 RyuSEIは金網フェンスを飛び越えて、そいつの前に躍り出た。


 ペルセウスにヘビのように睨ませると、若者がカエルのように震え上がる。

 獲物を前にして、RyuSEIは舌なめずりした。


 その前に、若者が呼び戻した巨人『ベラトリックス』が立ちはだかる。


 若者が絶叫し、操作するベラトリックスが猛然と突っ込んでくる。

 年季の違いを目の前で教えてやるよ、とRyuSEIはペルセウスを前進させた。


 廃工場の広場で両者の決闘デュエルが始まり、観客ゲストたちは大興奮だ。


 ベラトリックスの右腕が叩き込まれ、その下を掻い潜る。

 懐に飛び込んで、右脇の装甲の接合部にメドゥーサの弾丸を撃ち込んだ。


 ベラトリックスの装甲は身体全体を覆っているわけではなかった。

 装甲と装甲の間に接合部があり、わずかに脆い。そこが弱点だ。


 さらに右に踏み込み、左腰の隙間にハルパーの刃を叩き込む。


 パイロットが反応し、ベラトリックスが振り向く直前に、速やかに飛び退いた。


 次に巨人が大きな左腕を打ち込んでくる。

 その左腕に、メドゥーサを連発。

 左手の平、手首、ひじ、脇、脇腹、腰に銃弾を浴びせながら相手の懐へ。


 即座に敵の膝蹴りが来るも、スライディングして足元に飛び込んだ。

 そして足を伸ばして回転し、ベラトリックスの片足を蹴り飛ばして転倒させた。


 ベラトリックスが無様に倒れ、必死に起き上がろうとする。

 その間、銃で撃ちまくり、剣で斬りまくった。


 若者には見向きもせず、希望が潰えていく一瞬一瞬をただ見せつける。

 周辺で見始めている、ザコどもにもだ。

 その中には、愛しのメルヘンもいた。


 起き上がった巨人が狂ったように暴れ出す。こちらに飛びかかって、拳を打ち、両腕を振り回し、蹴りまくり、体当りしてくる。

 何としてもこっちを殺そうと、生き抜くのに必死だとわかる。


 RyuSEIはそう感じた。それでどう思うのか。バカなヤツだと思うだけだった。


 若者と巨人の抵抗をRyuSEIはことごとく避け、巨人に弾と剣を与え続ける。

 斬る、撃つ、壊す、弄ぶ、泣かす、遊ぶ、楽しむ、遊ぶ、楽しむ。楽しむ。


 トッププレイヤー対中堅プレイヤーじゃ、次元が違うんだよ。


 ベラトリックスの左脇の装甲が剥がれ落ちる。


 とどめ(フィニッシュ)だ!


 相手が気づく前に、RyuSEIはペルセウスをそこへ接近させた。

 右手で剣を鞘に収め、腰裏の収納領域バックパックから手榴弾グレネードを取り出し、安全ピンを指で外してその中に押し込んだ。


 即、離脱。

 次の瞬間、ベラトリックスの左脇が爆発した。


 左腕と周りの装甲は弾け飛び、左胸部の内部が露出して炎上する。


 そこへ、RyuSEIはペルセウスを再び接近させた。

 大型銃メドゥーサは全弾装填済み。露出した左胸部へ全弾連続で撃ち込んだ。


 廃工場の広場に、希望が破壊される音が鳴り響く。

 若者は呆然と見つめることしかできない。

 ベラトリックスが膝をつき、完全に機能を停止する。

 若者がスマホをどれだけいじっても無駄なことだった。


 楽勝。

 RyuSEIは喜んだ。観客ゲストたちの興奮は最高潮クライマックスに達した。

 さて、仕上げといこう。


 ペルセウスを振り向かせ、大型銃を再装填リロードしてから近寄らせる。

 若者が何かしてくる前に、相手の首を右手で掴んでゆっくりと持ち上げた。


 若者の首を絞めて苦しめ、出てこいと声音ボイスを辺りに響かせる。


 周辺で観戦するザコどもの中からメルヘンが出てくる。

 やっぱり出てきてくれた。さっきは親しげだったもんな。


 涙声で彼を助けて欲しいと必死に訴える。ザコたちが止めるのも聞かない。


 RyuSEIはペルセウスの右手を離して、若者を地面に落とす。

 倒れて苦しむ若者を放って、メルヘンに近づいて向かい合う。


 きれいな瞳をしたメルヘンの目を見つめる。

 そうしながら、メドゥーサの銃口を後ろに向けて撃った。

 悪いな、コイツは挽肉ミンチだぜ。


 泣き叫び、駆け寄る彼女の首を右手で掴む。

 メルヘンを略奪ゲットした。


 ザコが邪魔してきて、ついでのデザート気分で撃ち殺す。

 RyuSEIは、楽しくて最高だった。

 

御主人様マスター


 そこで彼女のキャラクターがやってくる。RyuSEIと同じ『ペルセウス』だ。

 偵察に特化させて、検知器センサー撮影カメラ機能を課金で大幅に強化してある。


 略奪ゲットしたメルヘンを放り投げて、彼女に預けた。


 現時刻を確認する。明日届く時間まで、残り十分。

 絶対に明日の放課後、自宅に届くように注文しろと、彼女に厳命する。


了解、御主人様(サー・マスター)


 彼女が操作するペルセウスが、泣き叫ぶメルヘンを掴みながら去って行く。


 明日のことを聞いてくる観客ゲストたち。RyuSEIはネット上に明日の予定を登録して彼らを招待した。


 それからペルセウスを当初の目的地に向かわせる。


 その後、RyuSEIはプレイを終えると、自分と彼女からゴーグルを取って鞄にしまい、テーブルにトレーと食べ残しを置いたまま立って、ファーストフード店を出た。

 それから彼女と一緒に駅から電車に乗って、車内でスマホだけでまたガンナイフブレイカーズをプレイしながら時間を潰し、最寄り駅を降りて帰宅した――。




 ピンポーン。


 翌日、自宅の呼び鈴が鳴る。

 宅急便だ。学校から帰ってきてからずっと待っていた。


 彼女にドアを開けさせる。配達員が棺桶のようなダンボールを運んできていた。

 ドアのすぐ外に置かせて帰らせ、彼女たちに家の中の広い居間リビングまで運ばせた。


 RyuSEIはゴーグルをかぶって、ネットに接続する。

 観客ゲストたちも、オンライン上でずっと待っていた。


 ゴーグルの内蔵カメラを使って、ライブ中継を開始スタート

 観客ゲストたちに中継しながら、テープを剥ぎ取ってダンボールを開ける。


 中に、眼が虚ろなメルヘンが入っていた。

 観客ゲストたちから「ヒュ~♪」と言葉やコメントが漏れる。


 彼女にさせた注文通り、可愛いアイドル服に着替えさせてあった。

 起きろと命じる。メルヘンが起き上がり箱の中から出てきた。


「初めまして、御主人様マスター

 メルヘンが笑顔で最初の挨拶をする。


 脳内インプラントは順調に機能していた。

 これでメルヘンも、彼女たちと同じ傀儡アイドルの仲間入りだ。


 RyuSEIはソファに腰掛け、リビングに同じ服を着たアイドルたちを並ばせる。


 さあ、公開ライブスタートだ。

 マイクを手にしたRyuSEIの彼女たちが、脳内インプラントの機能で完璧に制御コントロールされた歌と踊りを披露し始める。

 観客ゲストたちは本日最初の最高潮クライマックスに達した。


 その時、RyuSEIの視界の片隅に、ニュースの見出しが通知で飛び込んできた。


『ゲーマードローン反対運動家、国家反逆罪で逮捕』


 RyuSEIは、通知の見出しをクリックした。

 なになに。運動家はこう言ったとさ。「敵も同じ人間だ。機械やゲームなんかで殺してオモチャ扱いするのは間違っている」だって。

 

 RyuSEIは、大笑いした。

 RyuSEIはこの手のニュースを読んで、バカどもを笑い飛ばすのが大好きだ。


 現在の戦場で戦う国側の兵士は、全て無人兵器ドローンに置き換わっている。

 その中で、RyuSEIのようなゲーマーやゲームプレイヤーが操作する大多数の無人兵器ドローンが、ゲーマードローンだ。


 昔から軍が始めたこの制度により、兵役は徴収、義務、志願のようなものから、「娯楽」へと変わる。

 人間の兵士にかかっていた給与、福利厚生、退職金といった莫大な人件費はなくなり、代わりにゲームとして売り出すことで莫大な利益がもたされることになった。


 制度が始まった当初は、人権、倫理、国際法の観点で反対する奴が大勢いたようだが、本当にバカな連中だ、とRyuSEIは思うだけだ。


 俺たちの敵は、殺さないといけない悪い奴らなんだからと。だから好きなだけブッ殺していいし、好きなようにオモチャにして遊んでいいんだと。

 自分で操っている彼女たちを見ながら、そう思うだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ