表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/54

義昭死す!?

 美濃に帰った理由の大きなところは金銭的な問題だった。

 万単位の兵を山城に駐屯させるのは、豊かな国を領している織田にとっても大きな負担だったのだ。

 これ以上居座ろうとすると、山城や周辺諸国への略奪を繰り返さなければならなくなる。

 しかし、前にも述べたが山城は将軍家のナワバリである。

 周辺の国も、幕府に味方する大名の支配域である。


 そんなところで略奪をするわけにはいかない。


 だからぼくは織田軍を美濃へ帰すことにしたのだ。

 そうなるとぼくが京にいる必要もなくなる。幕府の運営に貸している配下を残して美濃へと帰ることにした。


 もちろん、なにかあればすぐにも駆けつける。そのつもりで準備もしていた。

 それでもこれで一息つける。

 織田が潰れてしまっては幕府へ、そして義昭さまへ奉公することもできなくなるのだから、これも必要なことなのだ。


 少し余談になるのだが、この時期、なぜか公家の方々がぼくに対して陳情を持ってくるというおかしな現象が起きていた。


 持ち込まれる案件は訴訟や儀式について。もちろん公家のことなので軍事には関わらないことがほとんどだ。


 管轄が違う。


 それは幕府が、重要なことであれば将軍が扱う案件だったのである。

 織田の支配域である尾張や美濃の中のことであればあるいはぼくの管轄かもしれないし、幕府の軍事に関わることならこれも、天下布武を称するぼくが関わることだ。

 だけれども、そうでなければ管轄違いだし、本来の管轄である幕府に対して不遜ともとれるだろう。

 筋が通らない。

 そんなことは誰も、少なくともぼくや主である義昭さま、味方の大名たちも望んでいない。


 しかし美濃に帰っても公家からの使者が後を絶たなかった。


 どうも原因は前例にあるらしい。三好時代に将軍を差し置いて三好がそのあたりの案件も差配していたらしいのだ。

 将軍を無視して時の有力者が陳情を受け差配する、というのは健全な幕府ではない。


 ぼくはそんな前例を作った者たちを恨んだ。

 公家の使いなんておろそかにできない相手が次々現れては、休む暇も本来の仕事をする暇もなくなってしまう。

 織田は幕府を守るための力を蓄えなければならないのだ。


 だからやむを得ず、失礼に当たるとわかっていても、軍事以外の陳情は受け付けないという内容の制札を領内に掲げることになったのだった。

 これで公家の方々も、ちゃんと筋を通してくれるといいという願いながら。


 ただ、今現在幕府にお金がないことは事実である。

 崩壊していたものをいちから立て直すところなのだ。

 なので予算問題については、幕府を通して受けることになる。

 そもそも朝廷の運営費は幕府が用意しなければならない。

 そして幕府はカネがない。

 幕府の軍事的後ろ盾であり少なからず金を持っている織田が負担するのはやむを得ないことだろう。

 将軍の就任儀式の費用や、禁裏の補修、以前打診されてごまかした親王殿下の元服費用、その他もろもろ莫大な費用を、幕府を通してぼくが負担することになる。

 今日に万軍を駐屯する余裕がなくなるのもわかるだろう?


 しかもこのカネのことでちょっと失敗してしまって怒られたり……。

 カネを出させておいて、と思わなくもないが、失敗は失敗だ。

 正直しんどい。でも、ちゃんとした幕府を再興して筋を通して天下に静謐をもたらすためには必要な苦労だろう。

 がんばろう。


 そして。

 ぼくがそんな想定外の苦労をしている間にまたまた大事件が起きる。


 阿波に逃げた三好、阿波三好によって、義昭さまが襲撃されたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ