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ぼくは信長  作者: ほすてふ


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伊賀

 息子が勝手に伊賀に攻め込んでボロボロにされた。

 息子といっても信忠ではない。伊勢北畠に送り込んだ次男だ。

 このころ、ぼくは本願寺や京での活動などに忙殺されており、息子が予定外の軍を動かしたことは事が終わってから知ったのだった。


 次男は信忠の下につけ各地の戦に参加させて経験を積ませていた。

 もしかするとそれが気に入らなかったのかもしれない。

 兄と弟で序列をつけたことが。


 織田の当主と従属大名では扱いが変わるのは当然だ。

 兄である信忠をぼくの後継としたのはもとは慣例に基づくものだが素養から見てもそれが正しかったと思う。

 その一方で、弟たちにもそれぞれちゃんと役目を与えて織田に貢献できるように配慮したつもりだった。

 だが、弟が兄に対抗心を持っていたらどうか。


 あるいは周りのものがそうなるよう吹き込むことも考えられる。


 ぼくも兄弟で争った経験がある。

 戦乱の世ではよくあること、といえる。

 だが、そういうのをなくすためにぼくはこれまで頑張ってきたのだ。

 天下の静謐とはそういうことを含めたもの。


 であるというのに、肝心の織田の子がそれを乱すとなっては。


 伊賀は厄介な土地で、紀伊もそうだが大軍を生かせないために地の利で負けていると極めて危険な場所である。

 幸い美濃近江をつかう街道を整備してきたことで無理に攻め取る必要がない場所でもある。

 状況が落ち着いてからゆっくりと調略をすすめ確実に取れる時に攻めようと考えていた。


 だが、次男が、無断で攻めたのだという。

 それで勝てばまだよかったが、大負けして這う這うの体で逃げ出したのだと。


 何危ないことをしているんだ。

 ぼくは次男をしかりつけた。

 次男の役割は要所である伊勢の重しが第一だ。

 第二に伊勢の兵を織田全体のために使うこと。

 そしてそのための必要なだけの武功を立てる場も与えてきたつもりだったし、今後もそのつもりで計画を考えていた。


 だがそれがよくなかったようだ。

 どうやら、遠方である上方への出兵は負担が大きく部下に嫌われる、近所の伊賀を攻め取れれば功績になる上皆に喜ばれると吹き込まれたらしい。

 伊勢衆の誰かか、それそのものが罠だったか。


 なんにせよ、次男がその口車に乗ってしまったのだ。

 次男は統治者である織田一門としての視点が欠けていたのだ。

 織田の者は勢力下全体を見て判断しなければならない。

 しかし、次男は伊勢衆の都合に迎合したのだ。


 せめてぼくに相談していればと思うが、無断で動いたのは知られれば止められると考えてのことだろう。つまり負い目があった。なのに動いたのだ。もうね。


 さらに織田勢が伊賀に負けたという実績がついてしまった。

 それも次男、次代の一門衆筆頭の有力候補がだ。ぼくの次代は将来の統治のためにも勝利を約束されるべきだった。負けるのはぼくまででよかったのだ。


 挽回する必要がある。

 考えなければならないことが増えてしまった。

 伊賀滅ぼすべし。

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