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34 会議

 俺達はあの後各々の部屋に案内され、荷物を置いた後応接間にまた集まることになった。

 だが、アリスは心労により仮眠をとるため、彼女だけは不参加となった。

 無理もない。財布が悲惨なことになったのだから。


 彼女を除く全員が各々のソファーに座ったのちに、ベテンブルグがまず先に口を開いた。


「さて、ラザレス君。君はここまでの旅で何かわかったか教えてはもらえないだろうか?」

「わかりました。では、まず魔女側からの行動をかいつまんで説明しますね」


 俺はソファーから立ち上がり、中央にある長いテーブルの端のほうに移動した。

 それと同時にメンティラはマニカのそばに座り、翻訳の準備をする。


「まず、私たちはベテンブルグの元から離れた後、ダリアという魔女に連れ去られ、この大陸の反対側まで連れてこられました」

「連れてこられたというのは、魔法でという事かね?」

「はい。……でも、あんな魔法初めて見ました」


 俺の言葉に疑問を感じたのか、今度はシルヴィアが手を挙げた。


「何故連れてかれたのか、理由はわかっているの?」

「それは……」


 ……俺はアルバに言われたことを思い返す。

 賢者であることは隠せ。だが、疑われたら素直に答えろ。


「……俺が、彼らの世界で言われている賢者と呼ばれる魔女だからです」

「賢者、って何?」

「魔法を使いこなし、戦争において優秀な戦力である魔術師。それが賢者です。俺は、ある戦争でたった一人生き残ったため、そう呼ばれているのかと」

「それで、知り合いであるその……ダリアという人に誘拐されたという事?」

「いえ、俺が生きていた時に彼女らとの面識はありませんでした」

「生きていた?」

「はい。俺はこの世界に意識を持ったまま、ちょっと特殊な方法で転生しました。その証拠に、魔法だって使えます」


 俺は左腕でポケットに入っていた布の切れはしを硬化させ、テーブルを滑らせてシルヴィアに渡す。

 彼女はそれを手に取ると、顔をしかめた後にポケットにしまった。


「これが魔法の力、という事なの?」

「ええ」


 俺は返されない布に少し疑問を抱いていると、今度はベテンブルグが手を挙げた。


「君が魔女なのはわかった。だが、彼女らは君を捕まえて何をしたいのだろうね?」

「それは、この世界に移住するために俺の協力が必要なんだそうです。詳しくはわかりませんが……」


 扉もつながっている。国も設立まであと一歩だ。

 だが、それ以上に俺は何をすればいいのだ?


 俺は顎に手を当てて考え込んでいると、今度はソフィアが手を挙げた。


「あの、それと魔女の目的としてはこの世界を滅ぼすってダリアという女性は言ってました」

「ソフィアの言うことも真実です。彼らの移住という目的に、彼女の滅亡させるという目的。どこか食い違っています」


 滅亡させた後の世界に移住したい?

 だが、まず何故この世界を欲するんだ? 自分たちの世界があるはずだというのに。

 俺の考えがまとまらないうちに、今度はマニカが手を挙げた。


「……あたし達の目的は移住だよ。戦争なんてしたくないもん」

「彼女は?」

「マニカという名の魔女です。なんでも、賢者を探していると」


 マニカの言葉を、メンティラが翻訳する。

 ……言語が理解できないというのは中々不自由だな。後で迷惑でなければ教えてあげたい。

 ベテンブルグは彼女の言葉にうなずいた後、ゆっくりと彼女に尋ねた。


「では、君自身に私たちへの敵対の意思はないと?」

「ないよ。あたしだって誰かが傷つくのは嫌だよ」

「そうか。なら私たちは君を歓迎しよう」


 ベテンブルグはシルヴィアに目を配せると、彼女は彼の態度にため息をついた後、勝手にしろと言わんばかりに目をそらす。

 マニカは彼らの態度に、霧が晴れたかのような笑顔を浮かべた。


「それと、メンティラ。君は何故その言語を使えるのかね?」

「シアンさんに教えてもらったんだよ。御者だから、喋れる言語は多いほうがいいだろう?」

「なるほど」


 ……そういえば、何故メンティラはベテンブルグには敬語を使わないのだろうか?

 歳的には近いだろうが、身分の違いは歴然だろうに。

 彼の性格からすると、気後れしてしまってもおかしくない。


「それと、もう一つ皆さんに教えておきたいことがあります」

「……何かね? 不用意な発言は好ましくないものとは思うが」

「それは承知です。でも、用心するに越したことはない」


 俺は……あの事を話さなくてはならない。

 きっとそれで、俺が疑われることになったとしても。


「この世界とあちらの世界。つなげる扉にはお互い魔力を持つ現地の協力者が必要です」

「つまり何が言いたいのかね?」

「この世界に、魔女を入り込ませた裏切者がいます。勇者以外魔力を持っている誰かが、この世界の扉を開きました」


 俺の言葉に、二人は静かに目を閉じた後、口を開いた。


「……この件は私たちが対処するわ。一任されてもいいかしら?」

「え? でも……」

「皆を疑心暗鬼にでもさせる気かね? 頭を使うのはこの老いぼれ達に任せておくといい」

「……わかりました」


 俺は彼らの言葉を無理やり納得した後、一度大きく息を吸って、吐きだすと同時に喋りだす。


「俺からの情報は以上です。何か質問はありますか?」


 俺の言葉に、一斉に静かになる。

 ……本当は、まだ夕暮れの時のことや、魔族のこともあるがあれは見間違いという事も否定できない。

 余計なことを言ってまた混乱させる必要はない。


 しばらくした後、俺達は各々自分たちに与えられた部屋に足を運んでいた。

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