夫婦の距離
恋人ーーーいや、夫婦になってから二人は先ほどよりも近い距離感で帰宅する。
ルナはどこか恥ずかしそうにしながらもしっかりと遥の手をにぎっていて、遥もそんなルナを愛しそうに大切に手を繋ぐ。
出掛ける前とは異なる距離感にルナのドキドキは最高潮に達していた。
(・・・遥の手・・・おっきくて安心する・・・)
男と手を繋ぐこと自体が初めてのルナ・・・しかも先ほどプロポーズされて夫婦になった人と手を繋ぐということに対してルナは大いに意識してしまう。出掛けた時はまだ魔の森の道の悪さの方に意識がいっていてそれほどでもなかったのだが・・・一度異性として意識してしまうとダメだった。手から伝わってくる体温と、遥の男らしい手にドキドキしてしまう。
(・・・まだ感触が残ってる)
無意識にそっと唇に触れてからーーールナは顔を真っ赤にする。
(な、何を考えてるの私は・・・ふしだらな)
しかしいかに思考を切り替えようとしても思い出してしまうのは先ほどの遥からの熱烈なプロポーズとキスの感触ーーー
(遥・・・やっぱり格好いいな・・・えへへ)
知らず表情を緩めてしまってから、はっとしてルナは恥ずかしそうに頭をふってその思考を飛ばすがーーーそうするとまた繋いでいる手に意識がいってしまい結果同じようにループする思考。
一方、そんなルナを優しく見守っている遥は遥で表情は大人しいものだが・・・内心はかなり悶えていた。
(やべぇ・・・家の嫁が可愛すぎる件について)
思わず脳内でスレッドをたててしまうほどに遥は隣にいる少女に心がもってかれていた。
先ほどから繋いでいる手から伝わってくる柔らかな感触と体温だけでもいっぱいいっぱいなのに、チラッとこちらをみては恥ずかしそうに顔を反らすルナに遥の心はもってかれていた。
(思いきってプロポーズして良かった)
勢いで言ってしまったが・・・結果として成功したのでよしだろう。まあ、恋人を通り越して夫婦になったのはさすが異世界というか・・・正直、やりすきだ気がするけど・・・でも、それくらいの気概で告白をしたので後悔はない。
むしろようやくスタートラインにたてたので遥としてはこれからが本番だと気を引き締める。
結婚はゴールじゃない。二人の始まりとはよくいうが・・・まさに遥としてはこれからが本番だ。これからは夫婦になったぶん今まで以上にルナを愛でることができるのだ。
いやらしい意味は・・・まあ、少しはなくもないけど、それよりも些細なふれあいだけでも遥としては今まで以上に出来ると知らず頬を緩める。
(絶対に幸せにしてみせる)
これまでこの子が一人で頑張ってきた分まで愛でて愛でて・・・絶対に幸せにしようと誓う遥。
こんなに優しくて可愛い子が幸せになれないなんて世界が間違っている。だから・・・そんな世界なら遥が目一杯可愛いがって幸せにしてみせる。
恋をすると性格が変わる人がいると言うが・・・なんとなく遥はその理由がわかった。うん、確かにひとを好きになるとセカイが違って見える。今までただ面倒だと思っていた魔の森のでこぼこ道も二人だと楽しい。
(問題は俺がどこまで理性的にいられるかだな・・・)
夫婦になった今、遥が不安なのはその点だ。今まではどうにか理性で耐えてきたことも夫婦になったことでそれが外れてしまわないかどうか・・・
チラリと視線をルナに向けるとーーー丁度ルナもこちらに視線を向けていたのか目がばっちりと合って・・・恥ずかしそうに視線を反らすルナ。
(可愛いすぎる!!)
そう、この初々しい子に対して遥がいかに理性的にいられるのかが大切だ。
もちろん遥としても、ルナが嫌がることはしたくないししないが・・・涙目で頬を上気させるルナを見たら耐えられる自信はない。
(落ち着け俺、クールに行こうぜ。心は羊・・・狼さんにはまだ早い)
こんな初期の段階で狼さんにチェンジすれば嫌われかねない。だからしばらくは清らかな関係でいるべきだろうと、チキンな決意をしつつも・・・・本当に耐えられるかかなり不安になっていた。
「きゃっ・・・」
「おっと・・・大丈夫?」
そんなことを考えていたらルナが足下の石に躓いてしまい慌ててそれを支える遥。結果ーーー
「「・・・・・」」
近くでみつめあうことになる二人・・・と、ルナが先に視線を反らして(顔は真っ赤です)言葉をはっした。
「あ、ありがとう・・・」
「当たり前だよ。むしろ俺こそごめん。もう少し気を付ければルナが躓かずにすんだのに・・・」
そう遥が言うとルナは首を横にふって言った。
「た、助けてくれたから・・・大丈夫だから・・・」
「うん。怪我がなくて良かったよ」
ニッコリとそう遥が言うとルナはその笑顔をしばしぽーと見つめてから恥ずかしそうに真っ赤になりながら顔を反らした。
(あぁ・・・ダメだ。抑えないと今すぐ抱きついてキスをしちゃいそうだ・・・)
それくらいの可愛い反応をするルナ。
そんな感じで二人で互いを意識しながら家に帰るのだった。