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兄弟ドラゴンの殲滅

『兄貴!いつになったら見えるようになるんだよ!』

『静かに待て弟よ。時雨遥が死ねば結界は解ける。今は待て』


魔の森の上空には2体のドラゴンが旋回していた。体の大きい薄い赤色のドラゴンが兄で、それより少し小柄な薄い青色が弟のドラゴンなのだが、その兄弟は遥の家を探して旋回していた。手筈通りならそろそろ人間の協力者が時雨遥を殺して、見えない遥の家の結界を解くはずなのだが・・・一向に動きがないことに弟のドラゴンはどこか苛立ちを含んだ口調で言った。


『けどよ!もう随分待ってるんだぞ!いつまで待たせる気だよ!』

『・・・確かに遅いが、人間はノロマな生き物だ。きっと、そのうち見えるようになるはずーーー』

「んー・・・残念だけど、それは無理かな?」


そんな呑気な声が上から聞こえてきたことに早く気づいた兄のドラゴンが頭上を見上げるよりも早く、弟のドラゴンは上から降ってきた遥に思いっきり地面まで叩き落とされた。


『がっ!!』

「悪いが大人しくしててくれーーーよっと」


言い終わるより前に遥は地面に叩きつけた弟ドラゴンを思いっきり踏み台にしてから上空に再び舞い上がり、今度は兄のドラゴンを狙うことにした。


『なめるな人間!』


しかし、遥の動きをみてから兄のドラゴンは冷静に自分に向かってくる遥を避けて空中で動けないはずの遥の背中をとる。


『死ね!』


思いっきり鋭い爪で遥に襲いかかる兄のドラゴン。普通なら避けられいはずのそれを、兄のドラゴンも確実に仕留められるとニヤリと笑みを浮かべるがーーー次の瞬間それはすぐに消えることになった。

遥はドラゴンの攻撃を鮮やかに避けてから、まるで空中を足場にするように踏み締めてから再び兄のドラゴンに向かって跳躍したのだ。


『なんだその動きは!貴様人間ではないのか!?』

「お喋りなドラゴンだな・・・」


驚愕する兄のドラゴンに遥は面倒そうにため息をついてから、突撃をする。それをなんとか避ける兄のドラゴンだったが・・・遥はそれを最初から予測していたかのようにみたび、同じように空中を蹴ってドラゴンの背中に回り込んでから思いっきり踵落としを食らわせた。


『ぐがっ!!』


ドラゴンはその遥の蹴りをもろに受けて、重力に任せて下に落ちていきーーー弟のドラゴンより少し離れた場所に落ちた。


『あ、兄貴!!くそ!!!』


どうやら気絶から回復したらしい弟のドラゴンが兄の惨状に驚きの声をあげてから上から降りてくる遥に狙いをつけて渾身の力で爪で切り裂こうとするがーーーそれを遥はひょいっと、身軽に避けると、弟のドラゴンの爪の上に飛びのった。


「さて・・・弟くん。何か言い残すことはあるか?」

『お、お前・・・なんで生きてるんだ!なんなんだお前は!!』


怒りと戸惑い・・・そして、未知への恐怖からか大声でそう言った弟ドラゴンに遥はため息をついて言った。


「勝手に殺さないでくれる?・・・まあ、いいや。俺はね、別に狙われても殺すつもりはなかったんだよ。多少なら多めに見ようってね。でも・・・俺の宝に手出ししようとしたのは許さない」

『た、宝だと!?何のことだ!!』


弟ドラゴンはもはや恐怖が隠せなかった。目の前人間は間違いなく自分達より強い。そして、その強者の目からは紛れもない殺意が自分に向けられていることもわかった。

ガタガタ震える身体をなんとか抑えようとするがーーーそんなドラゴンを冷やかに見つめて遥は言った。


「お前らが何を企もうと知ったことじゃない。だがーーー俺の宝、俺の大切なルナに一度でも悪意を持った時点で、もはやお前らはこの世から消される運命なんだよ」

『・・・お、おいら達はまだ何もしてないだろ!?』


理不尽だと叫ぶドラゴンに遥は侮蔑混じりの表情を浮かべて言った。


「おいおい、今さらそれはないだろ?もっとも、俺だけを狙ったなら別に無視していたさ。でもな・・・それ(・・)だけは許さない」


すっと、静かに手刀を構えてから遥はドラゴンの首を真っ二つにしてからーーーもはや聞こえていないであろう弟ドラゴンから視線を反らして言った。


「ルナを害するものはなんであれ殺す。例え、人間だろうが、神様だろうが・・・ドラゴンだろうがな」


ポトリ、とドラゴンは首と身体の二つに分かれて倒れた。


『お、弟・・・!』


その光景を気絶から回復した兄のドラゴンが見てから急いで身体を動かそうとするがーーーそれを許さないように遥は兄のドラゴンの顔に蹴りをいれてから言った。


「次はお前だが・・・命乞いの時間は必要か?」

『・・・ま、待ってくれ!俺達は頼まれただけだ!アッシェとかいう人間からお前を殺してから家の住人を喰えと!』

「アッシェ・・・なるほどな。それで?」

『だ、だから、俺達は悪くない!!なんで殺されなくちゃならないんだ!?』


怯えを隠せずにみっともなくそう喚くドラゴンにーーー遥はため息をついてから冷めた視線を向けて言った。


「あのさ・・・勘違いしてるけど、別に俺は自分が狙われたことに関してはなんとも思ってないんだよ。俺のこの怒りの理由はただひとつーーー俺のルナを一瞬であれ害そうと考えたことだけだ。だから・・・せいぜい、あの世で弟によろしく伝えてくれ」


そう言ってから遥は手刀をドラゴンに振り下ろした。

ドラゴンはそれを見て思った。

今度生まれ変わったら、目の前のような鬼だけは敵にまわさないでおこうとーーー。




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