心重ねて・・・
「夢じゃないんだよね・・・」
楽しかった結婚式もあっという間に終わりを迎えていた。貸しきりの会場には現在は遥とルナの二人だけしか残っていない。二人を祝いにきたメンバーは二人に気を使って早めに撤収していた。まあ、時間的にもこのまま新婚二人とオールナイトするほど無粋な人間はいないので自然とそうなったのだが・・・そんな会場の静けさに身を任せていたルナは遥の隣でそう呟いた。
「なんだか幸せすぎて夢かと思っちゃうくらい幸せで・・・私・・・こんなに幸せでいいのかな?」
月明かりがウェディングドレスのルナを綺麗に照らしている。そんなルナの姿を心底愛しそうに見つめて遥は言った。
「いいんだよ。ルナはこれから更に幸せになるからね。ちなみに夢だったら、目が覚めてからもう一度結婚式すればいいから大丈夫だよ」
「もっと幸せに・・・」
「うん。そう。ルナはこれからもっと幸せなってもらうよ。いや、俺が絶対に幸せにするから」
そう言いきった遥にルナは顔を向けてから・・・その左手に光る指輪を見て呟いた。
「遥は、その・・・大丈夫なの?」
「なにが?」
「その・・・この結婚指輪って、遥は私と私の家族以外の女の人と触ることが出来ないんだよね?それで大丈夫なの?」
遥とルナがつけている結婚指輪は、遥の魔法により家族以外の異性とは触れられないという魔法がかかっているらしい。普通の男なら少なからずそのことに思うところがありそうだというのが少し疑問になったが・・・いや、もちろんルナとしては遥が他の女性と親しげに触れあうというのは嫌だし、遥の全ては自分のものだと思っているからむしろそれは嬉しいのだが、平気で他の女性と浮気をしていた父親を間近で見ていたルナからすれば少なからずそれは疑問だったので聞いてしまった。
そのルナの質問に遥はしばらく何かを考えると・・・微笑んでルナに言った。
「ルナはどうなの?」
「どうって・・・?」
「俺がルナ以外の女性に触れられないことについてどう思うかなって思ってね」
「それは・・・その・・・」
その予想外の質問にしばらくどもってから・・・ルナはポツリと言った。
「その・・・安心する・・・かな・・・」
「安心?」
「遥のこと信じてはいるけど・・・私以外の人が遥に触るのはなんていうか・・・嫌だから・・・」
恥ずかしそうにそう言うルナ。そんなルナの様子を見て優しく微笑んでいる遥は内心ではその可愛いさに悶えつつ頷いて言った。
「うん。ルナ以外の女性には絶対に触れないよ。そもそもルナ以外の女性を俺は愛せないからね」
そんな台詞を恥ずかしげもなく言う遥。今の遥にはもはやどんな美少女や美女が誘惑してきても心は微塵も動かないことが確信出来ていた。以前からそこまで異性に対して積極的ではなかった遥なのだが、ルナという唯一の存在に出会ってからはその心は全てルナに占められていた。
そんな遥の台詞にルナは嬉しそうに微笑んでいたが・・・遥もこの機会についでに聞いてみたいことを聞いてみた。
「ルナ。その・・・この指輪なんだけどね」
「なに?」
「さっきの話に通じるんだけど・・・ルナは本当に良かったの?この指輪は一生はずれないし、ルナも俺以外の男には触れられないこと・・・もちろん、ルナを他の男に触らせる気は微塵もないけど、その・・・重くないかなってね・・・」
遥としてはこの指輪はある意味独占欲の象徴ともいえることだろう。最初はここまでするべきか少し悩んだが・・・遥の覚悟を示すためにはこうするのがベストだとその時は思っていた。まあ、とはいえ、普通はこんなの重いと引かれそうだとは思ってもいたので不安になりこの機会に聞いてみたが・・・そんな遥の様子を見てルナはくすりと笑って言った。
「私も・・・遥以外の男の人に触らせる気はないよ。私の・・・私の全部は、その・・・遥のものなんだから・・・」
「ルナ・・・」
「そ、それに・・・重くなんてないよ。むしろ遥が本気だってわかって嬉しいというかその・・・とにかく、私は・・・この指輪をつけれて本当に嬉しいから」
恥ずかしそうにそう言ったルナ。恥ずかしそうに・・・でも心底嬉しそうに左手の薬指につけられた結婚指輪を優しく撫でるルナの様子に・・・とうとう我慢ができなくなり、遥はルナを抱き寄せた。
「は、遥・・・?」
突然抱き寄せられて不思議そうに首を傾げるルナに・・・遥は絶対離さないように・・・でも、ルナが痛くないように優しく抱き締めて言った。
「ありがとう・・・こんな俺の我が儘に付き合ってくれて・・・」
「我が儘なんて・・・むしろ、私の方がいっぱいいっぱいありがとうだよ」
抱き締めてくる遥を優しく微笑んで受け入れるルナ。そんなルナの優しさに感謝をしつつ遥は改めて気持ちを口にしていた。
「ルナ・・・俺はルナのことが大好きだ。愛してる・・・だから・・・これからもよろしくお願いします。俺の最愛の奥さん」
「私も・・・遥のこと大好き・・・こちらこそよろしくお願いします。私の旦那様・・・」
そこから先、二人の間に言葉はいらなかった。互いにどちらからともなく唇を近づけると、そっとーーー互いの唇を近づけてキスをした。
月明かりが二人を照らしている中で・・・二人は互いを求めて、より心を深く交わしたのだった。