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早い誕生

「シロのタマゴか・・・」


本日は早めの帰宅をした遥が眺めているのは先日譲り受けた友人のタマゴ・・・ルナが夕食の準備をしているのでイチャイチャすることも出来ず、手伝おうと思ったが本日は断られてしまったので大人しくルナのエプロン姿を後ろから眺めるのもいいと思っていた遥がついでにやっていたのがそれだった。

人間の赤ちゃんくらいの大きさのそれを傷つけないように慎重に眺めているが・・・


(なんか・・・昨日より大きくなってないか?)


心なしか昨日よりもタマゴの大きさが変化しているように感じる遥。重量感的にはそこまで変わらないが・・・どことなく大きさが変化しているように感じることに疑問を抱きつつも遥はタマゴをさらに深く調べるために目に力を入れた。正確には自身の目を観察ように切り替えるとも言えるかもしれないが・・・この世界にきて手にいれたチートの一つである特別な視力ーーーあらゆるものを見透す力を使って遥はじっくりとタマゴを観察した。


(懐かしいシロの魔力に・・・まさか、これは俺の魔力か?)


結果、タマゴの内部に見えたのは懐かしい友人の力に・・・慣れている自身の力のように感じた。


(シロの力はわかるが・・・なんで俺の力が・・・いや、そういうことか)


疑問に思ったのは一瞬のことだった。タマゴの一部から外からの力をいれているような箇所が見えたので遥はそれで納得した。おそらく、この家に漂う遥の魔力の一部がその箇所から入ったことでタマゴに遥の力が入ったのだろう。この家には3年分の遥の魔力の痕跡と、家の回りなどに張ってある結界などのための魔力分など、多数の遥の魔力の残りが漂っているのでそれもある意味納得できたが・・・


(それにしても・・・クロは2、3日くらいで孵るとか言ってたけど・・・この様子だと今にも孵るそうに見えるな)


ドラゴンのタマゴというのは他の生き物と違い、個体としての魔力が整ってから生まれるのが普通なのだ。タマゴを親のドラゴンが生んでから内部にある親のドラゴンの力と外からの魔力を取り込み、それを自身の源にしてからそれらの準備を終えてタマゴは孵るのだが・・・目の前のタマゴは自然の魔力ではなく、遥の力を多分に吸収しているようで、クロの予想より早く孵るように思えた。

そんなことを考えていたからだろうか・・・ピキっと、タマゴに亀裂が入った。


「お・・・生まれるのか」


無論遥が傷をつけたわけではないのでそういう結論になり・・・そうこうしているうちにタマゴは光を発してからーーー中から小さな白いドラゴンが出てきた。


『き・・・きゅー・・・』


生まれたばかりで目が見えていないのかドラゴンはしばらく眩しそうに身をよじっていたが・・・しばらくして遥に視線を向けてから、テコテコと遥の方に歩み寄ってきてペロリと遥の手を舐めた。


『きゅ・・・きゅい?』


ドラゴンはしばらく遥の匂いを嗅いでは舐めての確認をしてから・・・遥の膝元に移動してからポジションが決まったようにゆっくりと座りこんだ。


「遥、ご飯だよーーーえっ?」


そんな風にポジションを決めているドラゴンを眺めているといつの間にか準備を終えたらしいルナが遥の方を見て固まっていた。

視線は遥の膝元のドラゴンに向いており・・・遥は苦笑気味に言った。


「思ったより早く生まれてくれたみたいだよ」

「・・・そ、それって・・・あのタマゴなの?」

「そうだね。名前はどうしようか」


呑気にそんなことを言う遥にルナは若干凄いと思いつつも恐る恐る遥の方に近づくとドラゴンを見ながら聞いてきた。


「触っても大丈夫・・・?」

「多分大丈夫だよ」


確証があったわけではないが・・・ルナが怪我をするようなことはないと自然と思えた。何故ならこのドラゴンは遥の魔力を取り込んで生まれたドラゴンなのだ。それはつまり・・・


『きゅい?きゅー』

「きゃっ・・・」


驚いたように小さく悲鳴をあげるルナだったが・・・ドラゴンがルナの手を優しく舐めただけだとわかると恐る恐るドラゴンに触れて・・・そっと撫でてみた。


『きゅいー』


気持ち良さそうにルナに撫でられるドラゴン・・・予想取りというか、やはり遥の力を取り込んだドラゴンはルナの匂い嗅いで瞬時に敵ではないと判断したようでルナの手に身体を任せていた。遥の力を取り込んだということは、つまり遥の一部を受け継いでいるようなもの・・・要するに遥がルナに害を為すわけがないので自然とそうなったことは必然と言えるのだろう。


「可愛い・・・」

『きゅー』


優しく撫でているルナと優しく撫でられているドラゴン・・・なんとなくルナを取られたような気分にもなるが・・・ルナが幸せなら遥としても嬉しいので醜い嫉妬をするようなことはなかった。・・・まあ、後で存分にルナを愛でることにすることは確定だったが・・・これは決して嫉妬からのものではなく、足りないルナ成分の補充だと自分に言い聞かせる遥だった。



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