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ロリコン教師は魔法で世界を救いたい  作者: ぺぐしる
第1章 ユリの薫る街
9/21

08 ロリコン教師と空の色。

本編第8話、おともだちとのふれあいパート第2弾。


第1回のアピアちゃん編に引き続き、今回はトキオ雑貨店の双子の姉、ソラちゃん編です。

「それじゃ、行ってきます」


朝食を摂り終わり、父さんは職場の師範学校へと出かけていく。


「うん。頑張ってきてね。行ってらっしゃいのチューだにゃ」


母さんは、父さんの首に腕を回すと、頬に優しく口づけをする。

父さんは少しでれっとした顔をするが、すぐにキリッとした顔に戻って、母さんを抱きしめる。


「…うん。これで今日も1日頑張れるよ。ありがとう、チエちゃん」


「ファイトだにゃ、ロビンくん!」



両親曰く、ここまでの流れがルーティーンらしい。

顔を合わせる度にチューチューチューチューやっててよく飽きないもんだ。

「魔法使い」なんて不名誉な称号を得てしまった俺にはよくわからん。



父さんを見送った母さんは、台所へと戻る。


「そうだアリオちゃん、おつかい頼めるかにゃ?」


居間にいた俺は、立ち上がって台所へと向かう。


「おかず作りすぎちゃったから、トキオ雑貨店に持って行って欲しいのにゃ。頼んでいい?」


トキオ雑貨店…。ソラちゃんマチちゃんの家か。

これは都合がいい。同期の子と顔を合わせるチャンスだ。

それに、イツキさんが言っていた妹のマチちゃんのことも気になる。

なんにせよ、トキオ雑貨店は一度行っておかねばならない場所だった。


「うん。わかった。持ってくよ」


「ありがとにゃ」


そう言って、フキの煮物が入れられた大皿を俺に持たせる。


「それじゃ、行ってきます」


「気をつけるのにゃ」


☆☆☆


トキオ雑貨店は、うちから三軒ほど離れたところにある。

家族経営の雑貨屋で、店主は家主のトキオさん、会計事務は妻のマイさんが受け持っている。

村では一番の品揃えを誇り、多くの村人がここへ買い物に訪れる。

建物は2階建てで、1階が店舗、2階が居住スペースになっているらしい。


店の前に到着するが、店頭に人影はない。


「ごめんくださーい。お店の方いらっしゃいませんかー」


「はいはーい」


奥から声が聞こえる。


「あれれ、君はチエちゃんとこの…魔法使いの子だね」


エプロンと三角巾をつけたふくよかな女性が、2階から下りてきた。

三角巾から覗く髪の毛は、子供たちと同じスカイブルーだ。


「はい。アリオといいます。いつも母がお世話になっております」


早速いい子を演じる。この辺りは得意だ。

保護者に対する態度は前世で訓練されているのだ。俺に怖いものなどない。


「あら、なんだい。よくできた子だ。さすがチエちゃんの子だね。ところで、今日はどうしたんだい?」


母さんに託されたフキの煮物が入った大皿を差し出す。


「今日はこれを。母が持っていけ、と」


「あら、フキの煮物じゃないかい。チエちゃんの煮物おいしいのよねえ。ありがとね」


「それで…ソラさんとマチさんはいますか?」


「ん?ああ、いるよ。あの子たちに何か用かい?」


「はい。役場ではあまり話せなかったから、お話ししたいなと思って」


「そうかいそうかい。いいよ、上がってきな。二階にいるはずだよ」


「ありがとうございます」


2階に上がり、居住空間の入り口のドアをノックする。

どうぞ、という声がかかり、俺は部屋に入る。


「やあ、久しぶり」


ダイニングでは、双子の姉のソラが遅い朝食を摂っていた。

彼女は俺に気づくと、食べていたパンを飲み込む。


「あれ、魔法使い。久しぶりだね。どうしたの?」


「僕はアリオ。アリオって呼んでほしいな」


俺は敵意を持っていると思われないよう、柔らかい表情を心がける。


「うん。で、今日はどうしたの?」


ソラが俺に尋ねる。


「この前は全然喋れなかったからさ、お話ししたいな、と思って」


「ふうん。マチはまだ寝てるから、私しかいないけど。いいよ」


「あ、ご飯の邪魔しちゃったね。食べ終わるまで待ってるよ」


「うん。そりゃどうも」


ふむ。

話してみてわかったけど、この子とっつきづらい。

ほっといてタイプかもしれない。

ほっといてタイプはあんまりちょっかいを出すと嫌われちゃうからなあ。

困った。非常に困った。


「おまたせ」


ソラが食事を終え、食器を片付ける。


「ソラの髪の色、綺麗だね。空の色みたい」


「うん。ありがとう」


…。


「普段は何してるの?」


「本読んだり、マチと遊んだり、色々」


…。


ダメだ。会話が続かない。


「そ、それじゃ」


「ねえ、アリオくん」


ソラが俺の質問を遮る。


「アリオくん…君さ、何しにきたの?」


「いや、だからさっきも言ったじゃない。君と話しにきたって」


「でも君さ、さっきからずっと一生懸命会話を続けようとしてるよね」


ぎくり。


「本当は、なんか別のモノが目的なんじゃないの?」


「そんなことは…」


俺は、変な汗が出てきたのを感じた。


「例えば…私の体とか」


場が凍った。


なんなんだこの子。

絶対5歳児じゃねえ。

いろんな意味で5歳児じゃねえ。


俺が焦る様子を見て、ソラはくすくすと笑って、言った。


「ごめんごめん。冗談だよ。ついいたずらしたくなっちゃってさ。…もしかして、本当に私の体が目当てだった?」


「そんな訳あるかー!」


心の叫びが口から出てしまった。


「ごめんって」


あまり表情を見せなかったソラは、ちょっとだけ嬉しそうな表情を浮かべた。


「アリオくん。君、面白いね」


「はあ」


「ママはさ、男なんてみんな体にしか興味ない、って言うんだ。でも君は、なんか違う気がする」


…おい母親。子供になんちゅう事教えてんだ。

というか俺、前世ではロリコン(性犯罪者予備軍)として迫害されてたんですけどね。


「私も商家の娘。人を見る目くらいは持ってるよ」


「そうなんだ。ありがとう」


…俺がロリコン(性犯罪者予備軍)じゃないことをわかってくれてるのかもしれないな。


☆☆☆


突然、ソラが立ち上がり、俺に向かって言った。


「…そうだ、アリオくん。私ちょっと出かけなきゃならないから、マチのこと見ててね」


そしてソラは、そのままカバンをひっつかんで家を出て行ってしまった。


「ええ…」


乙女心と秋の空、なんていうが、(もっとも、今は春だけれども)この子の考えていることはどうにも読めない。


俺も、教育者としてまだまだなんだな、と痛感する。



…。

例え一流の教育者でも、こんな状況には対応できないのでは…?


しばらくおともだちとのふれあいパートが続きます。

次回は双子の妹、マチちゃん編です。


煉獄魔法の使い手(になるかもしれない女の子)は一体どんな子なのでしょうね。

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