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ロリコン教師は魔法で世界を救いたい  作者: ぺぐしる
第1章 ユリの薫る街
3/21

02 ロリコン、暇を持て余す。

本編2話です。


今回もなかなか攻め気味です。


暇だ。


暇だ。


途轍もなく暇だ。




スマホもパソコンも、そして話し相手もいない。


こんな苦しみがこの地上にあるとは知らなかった。





俺は、ベビー服を(めく)って、俺の俺の存在を確かめる。


俺の俺は、確かにそこにいた。



確認が終わると、ベビーベッドの上を転がる。


まだ体が小さく、ベッドにも比較的余裕があるからこそなせるわざだ。




ここ最近は一日中こんなことをやって過ごしている。



…暇すぎて気がおかしくなりそうだ。





今まで過ごしてきてわかってきたことがある。


ここは中世ヨーロッパみたいな雰囲気のところで、魔法が存在し、いろんな種族が暮らしているらしい、ということ。


本格的にラノベの主人公みたいだな。俺。



そして、俺が「ミクちゃん」と名付けたネコミミガール。


あれは俺の母親らしい。名前はチエリア。16歳。



ふむ。猫キャラなのにチエリ…いや、なんでもない。


この世界にソシャゲはない。よってこれは単なる偶然。偶然なのだ。



…話を戻そう。



なんでも、彼女の祖母が猫の獣人だそうで、猫キャラはキャラじゃないらしい。


彼女は料理が好きで、食べるのも好き。猫舌は慣れで克服したそうな。




父の名前はロビンソン。


師範学校(しはんがっこう)に勤めている。こちらはヒト族。18歳。



師範学校というのは、教員養成学校のことだ。教育系の単科大学に近い。



ロビンソン父さんは非常に頭が良く、12歳の時に飛び級で師範学校を卒業。


それ以来師範学校の職員として働いているという。




この若い夫婦の間に生まれたのが俺、アリオという訳だ。




俺たちは「リリー村」という村に住んでいるらしい。


イツキ=カワグチ男爵が治める、小さな村だ。



ユリの群生地として知られており、観賞用のユリの生産と観光業が村の基幹産業になっている。




イツキ=カワグチ。どことなく日本の香りがする名前だ。


川口(いつき)さんといったところなのだろうか。




男爵には俺と同じ歳の娘さんがいるらしい。気になる。


…えっちなことは考えていない。本当だ。



☆☆☆



圧倒的に暇を持て余している。



やることといえば4つだけだ。



泣く。


寝る。


おっぱいを飲む。


聞き耳をたてる。



暇つぶしに昼寝ってどんだけいいご身分なんだって感じがするが、他にやることがないのだから仕方がない。


これは拷問になりうる。確実に。


☆☆☆


この世界には、5歳になるまでは家の中から出してはいけない、という暗黒の…もとい暗黙のルールが存在する。


5歳になった子どもはまず、占いによって可能性を示される。らしい。


それまでは外に出ちゃいけない。



クソみてえな慣習だ。ぶっ壊してやる。



…と思っていた時期が私にもありました。




ミクちゃん、もといチエリア母さんの話では、「家の外には野獣的なつよいのがいっぱいいるから、可能性を示されるまでは家からは出せないのにゃ」ということらしい。


心の健康と安全を天秤に載せなきゃいけないなんて、と嘆きつつ、日々を空虚に過ごしていた。


☆☆☆


気づくと俺も5歳になっていた。


明日が占いの日。


村の子供たちが役場に一堂に会して、それぞれの可能性を占われる訳だ。


明日は今生の俺のはじめての外出になる。

前世から通算で5年ぶりの外出。


結論から言うと、今日まで家からは一歩たりとも出られなかったのだ。



理由は…野獣こわいから。


仕方ないね。



そんなわけで、明日の外出が、楽しみで仕方ありません。


ベビーベッドはとっくに卒業し、今はキングサイズのベッドで、家族3人で川の字になって寝ている。


ショタっ子生活にも慣れ、少しずつ日々を楽しめるようになってきた俺は、一人称を「ぼく」に改め、アリオ少年を演じることに意識を集中させていた。




外出前夜。


この世界の幼い子供たちにとって、外出ほど魅力的な行動はない。


外出に浮かれてベッドの上で飛び跳ねる俺を、ロビンソン父さんが諌める。


「アリオ。楽しみなのはよくわかる。でもな、怪我をしては元も子もないぞ。それに、明日は早いんだぞ?もう寝たほうがいい」


「うん。父さん。ぼくにはどんな可能性があるのかな」


「そうだな、アリオ。お前ならなんだってできるぞ。若いってことはそういうことなんだ」


父さんはそういうと、俺の頭をポンポンと叩いてくれた。


助けてほしい時に助けてくれる先生。


彼のような人間が、教育者に相応しい人間なのだろう。


「父さんもな。母親以外の女の子に会えると思ったら寝付けなかった。でも、今寝なければ明日、女の子たちにかっこ悪いところを見せてしまうと思ったんだ。そしたらすっと眠れた」


…理想の教育者って、どんななんでしょう。


俺は、はやる気持ちを抑え、眠りについた。

この村には教会がありません。

領主のイツキさんは、宗教をあまりよく思っていないためです。


他地方では5歳の可能性審査は基本的に教会で行われ、実質的にはそれが大いにその後の進路に影響します。

宗教を信じる人々にとっては、教会の言葉はすなわち神の言葉だからです。


イツキさんの審査はただのアドバイスで、今後のことは個々人の意思に委ねられています。

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