00 ロリコン、リタイアする。
初投稿です。
書き溜めがあまりないので投稿間隔は長いと思います。
拙い文章ではありますが、読んで頂けると幸いです。
有岡真咲、25歳。独身だ。
元中学校教員。今はフリーランスを自称している。…つまり無職。
彼女いない歴=年齢で、当然童貞。
僕はひょんなことから職を失い、自殺を図った。
きっかけは、本当に些細なことだった。
スマホの壁紙を、生徒に見られたのだ。
☆☆☆
俺はある公立中学校で教員として働く、ごく普通の、ごく一般的な社会人だった。
ある時、尿意に耐えかねた俺は、職員室の自分の机の上にスマホを置いたままで用を足しに行ってしまった。
俺が席を外している間に、女子生徒が俺を探すために職員室を訪れた。
その時だ。スマホの通知が鳴り、ロック画面が表示されてしまった。
5.8インチの大きな液晶に、幼い女の子が描かれた可愛らしい絵がでかでかと表示される。
表示された時間は、1秒に満たなかっただろう。
しかし、女子生徒は、俺のロック画面を見てしまった。
俺が席に戻ると、女子生徒はゴミを見るような目で俺を見てくる。
状況をつかめずにいる俺に向かって、生徒がボソリと、こう呟いたのだ。
「ロリコン教師」
その言葉で、職員室中が凍った。
直感的に、ロック画面を見られたのだとわかった。
俺は焦った。
変な噂を流されては、俺はもう教師でいられない。
なんとか弁解しなくては。
「あ…あのな、西川。これは…」
焦りが加速する。
うまく言葉が出ない。
「…もういいです。有岡先生」
そう言って、女子生徒は職員室を後にした。
最悪だ、と思った。
俺は周りを見回した。
同僚たちは、一斉に俺に刺すような視線を浴びせてきた。
貴様は教育者にふさわしくない人間だ。
今すぐに学校から出て行け。
そんな言葉が聞こえてきそうな、冷たい、冷たい目だった。
事情を知る同僚は、俺に哀れみの視線を向けたが、すぐにパソコンに目を移した。
誰も俺を庇ってはくれなかった。
誰も、俺の話を聞こうとはしなかった。
中学生というものは、往々にして噂話が大好きだ。
次の日には、学校中に噂が広がっていた。
黒板には俺に対する罵詈雑言が書き連ねられた。
授業時間は誰一人として俺の話に耳を傾けなくなった。
保護者にも噂は広がり、ついに教育委員会に苦情を申し立てるものも現れた。
事態を重く見た教育委員会は、俺を呼び出した。
事情聴取と言う名目で行われた魔女裁判。敢え無く俺は懲戒免職。
公務員の痴態を嬉々として報道するマスコミは俺のことを朝から晩まで取り上げた。
名前、職場はネットのみならず公共の電波でも流され、芸能人が俺をネタにして笑いを取る。
週刊誌や新聞はある事ない事を無茶苦茶に書き立て、住所や電話番号はネットに晒される。
一日中鳴り止まないイタズラ電話。悪質なピンポンダッシュ。
謂れもない罪で世間から白い目で見られ、おちおち外も出歩けない。
そんな生活が一週間ほど続いただろうか。
とうとう俺は耐えられなくなった。
職を失い、社会的にも死亡が確定した。これ以上ないスーパーハードモードだった。
憔悴しきっていた俺は、死を選ぶほかなかった。
俺は、自宅の一室で首を吊った。
結んだロープを首に引っ掛け、台から飛び降りる。
ただそれだけで楽になれる。
そう思ったのだ。
飛び降りた瞬間、今までの記憶が走馬灯のごとく再生された。
結局片思いに終わった初恋の人のこと。
高校で出会った何物にも替え難い最高の友人たちのこと。
大学でお世話になった先輩方のこと。
新任の年に初めて持ったクラスの生徒たちのこと。
育ててくれた両親のこと。
俺は悔しかった。
どうして俺がこんな目に。
どうして俺が苦しまなきゃならない。
こんな社会、狂ってやがる。
みんな、ごめん。
俺は、もう生きてられない。
今までありがとう。
痛みも苦しみもなかった。
俺の意識は、すぐに、完全に飛んだ。
生徒に「ロリコン教師」と言われてしまった有岡くんですが、彼は本当の意味での「ロリコン」ではありません。
彼は「可愛い子が頑張っている姿を見るのが大好き」なだけで、その対象は幼女でも男子高校生でも良いです。
彼のロック画面の女の子も、彼にとっては「身長が小さいというハンディを抱えながらも夢に向かって真摯に頑張る子」という認識で、たまたまロリっ子だった、という設定です。
さて、調子に乗って解説を加えましたが、実は完全に見切り発車です…。
失踪しないよう気をつけます。