☆ プ ロ ロ ー グ ☆
おっきなお屋敷のおっきなお部屋のおっきなベッドの上にいるちっちゃなちっちゃな少年の名は、ノア。
病弱な彼はいつもベッドの上でひとりぼっち。
お母様とお父様と執事さん、メイドさんたち。たくさんいるはずなのに彼はいつもひとりぼっち。
かわいそうな君。
自分の部屋しか見たことのない君にとっておきの世界を。
僕の名はミカエル。
かわいそうな君の最初で最後の友達になろう。
僕は羽根を伸ばし、星のきらめく夜空から舞い降りた...。
☆...☆
「おやすみなさい、ノア坊っちゃま。」
「おやすみなさい」
ギィっと音をたてて大きくて白い扉が閉まる。
ぼくはいつになったらあの扉の向こう側に行けるのかな。
「いつまで、ぼくはここにいればいいの」
「今日までさ!」
「!?」
ぼく以外いるはずのない部屋でぼくじゃない声がする。
「...だ、だぁれ?」
「僕かい?僕の名前はミカエル!君の友達になりに来たんだ!」
「と、ともだち...?」
声の主は名乗ったものの姿は見えない。どこにいるんだろう。もしかして夢なのかもしれない...。
「そう!君の最初で最後の友達!」
「さいしょで、さいごの、ともだち...」
「そうだよ!君の友達!だから遊ぼう!まずはかくれんぼかな?」
「へ...?」
「僕が今どこにいるか探して!」
いきなりのことでノアはとても戸惑った。見えてもいない声の主をどうやって探すのだろう。あたりを見回してみても何も無い。いつもと同じ景色だ。
「わからないよ...」
「じゃあヒントをあげよう!」
その声が聞こえたと同時にぼくの頬に何かが触れた。
「もしかして、ぼくの、目の前に、いる?」
「...」
返事がない。もしかして、間違ったのかな。
「ミカエル...?」
名前を呼んだ途端目の前がサァっと明るくなって、星屑がキラキラと舞い始めた。何が起きたのかわからない。
「せいかーい、ミカエルだよ」
目の前に現れたものすごい美少年はにっこり笑ってこちらを見ている。
「君は、なにものなの?」
「僕?僕は、君の王子様だよ!」
「へぇ...?」
「嘘!でも君を迎えに来たのはほーんと」
「おむかえ...?」
「そう!とっておきの世界に連れて行ってあげるから!」
目の前の美少年は輝かしい笑顔でぼくに手を差し伸べた。
「行こう、君の知らない世界へ、そして君しか知らない世界へ」