ヒーロー参上!魚乃は俺が守る!!
なんか危険な香りがするんですが。
俺はその先の古賀の言葉を聞かなかった。
気がついたら汗だくで廊下を走っていた。
待ってろ魚乃!今助けるからな!
※魚乃は生徒指導室に呼ばれただけです。
俺が絶対助ける!!
※魚乃は生徒指導室に呼ばれただけです。
そんな正義感とヒーローみたいな気持ちに引きずられて走っていると、倉庫の鍵を返しに来たカズマとぶつかる。
「いてっ…?おい、新田!」
「姫のピンチだ!行くぞカズマ隊員!」
「はぁ!?つーかひっぱんなっ…このっ…馬鹿力…くっ」
もうスーパーマンなのか戦隊モノのヒーローなのかよくわかんないけどカズマを引きずって行く。火事場の馬鹿力って、馬鹿にできねぇんだな。
説明もなしにずるずると引きずって行くうちに、生徒指導室に到着した。
「ここだ…!中に奴がいる…!」
「誰だよ」
カズマの冷たいツッコミにも負けずそっとドアに近づく。
ごくり。
「勇んで来たには肝が小さいな隊長。」
俺はそっとドア口に耳をつけていた。
「うるさいぞ下級兵」
「へいへい。」
口答えする奴は隊員から下級兵に格下げだ。
生徒指導室からはボソボソと二人の話し声が聞こえてくる。
一体何をしているのか…
「…なぁ、俺帰っていい?」
カズマがめんどくさそうに頭を掻いているが今はそれに構っている暇はない。
「よく聞こえないな…」
「そりゃドア越しに耳つけてたらな」
下級兵より下はないぞカズマくんよ。
…だ…このままじゃ…未来…魚乃は……や…
だめだわからん。
俺はぐいぐいと限界まで扉にくっつく。
「あ、そういえば、」
カズマが思い出したように手を叩く。
あ、奴隷はどうだろう。でもマジで怒られそうだな。
「その扉最近新しくしたとかで横じゃなくて縦に開くらしいぞ。」
「え?」
それは初耳。
俺の体は次の瞬間、宙に浮いていた。
スローモーションになる世界で生徒指導室で話し込んでいた二人の驚く顔がゆっくり視界に入る。
遅れてどさりという音が耳に入った。
「…新田…お前何してんだ…?」
ごめんなさい。