ソロル家
今回はカダベルとモルテの過去があかされます。
最後まで読んでいただけばと思います。
これはアーサー達が転生する100年ほど昔の話。
森の町アルボルに1つの魔術の名家があった。その名家の名をソロル。
主に死者の魂を人形へ固着させ会話を可能にさせる降霊術を使う、戦闘とは程遠い魔術の名家であった。
ある日この名家に双子が生まれた。姉の名をカダベル、妹の名をモルテ二人は仲良く育っていった。
そして、お互いに婿を迎え次の当主を決める時が来たのだった。この時二人は17歳になったばかりだった。
実力の拮抗していた二人はお互いが当主にふさわしい、だから二人で一人として欲しいと父に願った。
父はそれでもいいと思っていた。しかし、当時当主をしていた母はそれを許さなかった。
ソロルの家は何の因果かわからないが姉妹しか生まれず、常に姉妹で優れた方1人に当主を継がせていた。
しかし、カダベルとモルテは本当に実力に差が無かった。故に母は姉妹に残酷な試練を与えてしまう。
「死霊術を使った殺し合いをしなさい。生き残った方に当主の座を継がせます。」
姉妹は反対した。姉妹で殺しあうのは間違っていると、しかし母はやらないのであれば私が片方を殺すと考えを改めなかった。
それがソロルの家を壊滅へと追い込んだ。
姉妹は殺し合いを始めた。そして妹のモルテは姉に当主を継いで欲しい、その一心で最後の一瞬手を抜いた。
姉のカダベルは自身が妹の命を奪ってしまったことを悔いた。しかしその後悔がさらなる悲劇を呼ぶ。
ソロルの家の魔術では発動中に後悔や自責の念にとらわれた場合、力が暴走しコントロールが効かなくなるという物だった。カダベルは術を解く前に後悔をしてしまった。自分が手を抜けばよかったと。
カダベルの意識はすぐに塗りつぶされる。
コロセ!
コロセコロセコロセ!
カダベルは腹部への鈍い痛みで目覚める、モルテはゾンビになっており、カダベルの腹を食べていたのだ。
「おはよう、姉さん。ゾンビの体もいいものね。ほら見て、アルボルから炎が上がってるわ。あれ姉さんがやったのよ」
カダベルは痛む腹を気にせず首を動かしアルボルを見る。
カダベルにはもう耐えられなかった。
「モルテ、私を殺して…そして私を食べて」
すでに自分で何を言っているのかわからない。
そして十数年が経過したある日、白骨化したカダベルの体が動き出す。
ずっとそばに居たのか、ゾンビとなったモルテが降霊術で呼び出したのかわからない。
その半年後、魔王が世界を征服した。2人は魔王の魔力を得て生前の力が使えるようになった。
この時からだ。この森が死の森、ガダーヴェレヴァルトと呼ばれるようになったのは。
森には死の魔力が常に満ち、ただの人間が踏み入ればたちまち死に絶える。たとえ死ななかったとしてもソロルの家の者の魂に取りつかれネクロマンサーとなってしまう。そうやって何年、何十年もこの森は続いてきた。
そして、今私たちはあの4人に解放された。感謝しないとね…
おぞましい2つの叫び声が森全体に響いた。その後辺りにいたゾンビとスケルトンは土へと返る。
「ありがとう、4人の勇者たち。」
カダベルと呼ばれていた者の声が聞こえる。それに続いてモルテと呼ばれていた者の声も聞こえてくる。
「私たちを後悔の呪縛から解いてくれてありがとう。」
4人はカダベルとモルテを弔うように墓標を建て、その場を後にした。
次回のななてんは、いよいよガダーヴェレヴァルトの主ヴィヴィアンが登場します。
次回も読んで頂ければ幸いです。