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遠き空に思いを馳せてⅠ

 私は時々学校の屋上へ行く。人が来ないので静かだし、屋上からは町が見渡せるので景色。も良い。そんなわけでこの場所は私にとって結構お気に入りだったりする。

 今日の放課後もまた、ちょっと時間が空いたので本を持って屋上へ行くと、しかしそこにはいつもと違う光景――そう、人がいたのだ。今まで私は屋上で人に出会うことはなかった。だけど今日は先客がいた。私は少し気まずさを感じ、話しかけるべきか躊躇ためらったけれど、彼は私に全く気づいてないようで1人空を見上げていた。金色の巻き毛をした彼が空を見る姿は何故か「星の王子さま」を彷彿させた。

――これが私とそらくんの初めての出会いだ。


***


 私は、それからも屋上で度々、宙くんと会うことがあり、私が最初に彼に話しかけたのをきっかけに次第に仲良くなっていった。なんでも彼は最近この学校に転校してきたそうで、まだクラスに馴染めていないようだった。彼のことを情報通(自称)である友達の友美ともみに話してみると

星宮ほしみや宙でしょ。結構な不思議ちゃんでちょっとクラスで浮いているってことは聞いたことがあるけど、まさか鈴乃音すずのねと繋がりがあったなんてね」

「まあ、確かに人と違った雰囲気はあるけどね。でも話してみたら結構楽しいよ」

 宙くんはオカルト趣味があるのか、私にはよく宇宙人の話をしてくれた。正直、私はそういったジャンルには明るくないので、話の内容が時々わからなくなったりするのだけれど、そういった話をしている彼の様子はとても生き生きしていて、聞いている私もつられて楽しい気分になった。

「そうなんだ、意外……ってまあ、私は星宮と直接あったことないんだけどね……」

 すると友美は突然黙りだして、何やら考え始めた。

「うーん……あっ、思い出した!」

「えっ、な、何を……」

 私は友美がいきなり声をあげたので少し驚いてしまった。リアクションが大きいなあ。

「いや、何で私、星宮のことを知ってたのかなって考えて」

「何でってそりゃあ、転校生が来たってことでその情報が友美の耳に……とかじゃない?」

「ううん、だいたい私、あいつがけどいつ頃転校して来たとかは知らないし、それに転校生ってことも後に知ったんだし」

「それじゃあ何で……」

「そう、だから思い出したんだけど、星宮ってあいつの新しい彼氏だったんだよ」

 ……え、彼氏? 私は友美から思いがけない返事がきて、一瞬頭が真っ白になった。

 宙くんが誰かの彼氏……つまり宙くんには――

 私は確認するようにゆっくり、言葉を噛み締めるように聞いた。

「ねえ、友美……宙くんって彼女がいたの?」

「ああ、そうだよ。あれ、聞いてなかったの?」

「……それで、その相手って……」

「そうそう、そいつが学校の中で有名人だから、その彼氏ってことで私、星宮を知ったんだよ」

「だからその彼女って……」

 私は自分の心臓の鼓動が早くなっているのに気づいた。

「ああ、煌天来麗華こうてんらいれいか。鈴乃音も名前聞いたことない?」

「コウテンライ、レイカ……」

 しばらく私はその名前を、頭の中で反復した。

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