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満月の下の一目惚れ

 私の名前は鈴乃音すずのねアイ。高校2年生。

 恋だの何だのと周りの皆は青春を謳歌する中、頭もそれほど良くないし、かといって運動神経が良いわけでもない、クラスでもあまり目立たない私には春は未だに訪れない。というか気分的には氷河期真っ只中だった。

「はあ」

 そんなことを朝から考え、一人ため息をつくと、教室のドアから声がした。

「すずのねーっ、おっはよー!」

「と、友美ともみ……」

 彼女は坂上さかうえ友美。私の友達。でも性格は私の正反対で、元気で明るくいつもキラキラしていてる。彼女と一緒にいると楽しいし、私にとって大切な存在だ。

「ねえねえ昨日、野球部の山田にフラれたんだって?」

「ぐはっ」

 ただ、デリカシーのないところは直してほしいけどな……

「というか友美にはそのことまだ話していなかったと思うんだけど……」

「ふっふーん、私の情報網を舐めないでほしいな。鈴乃音のことなら、な~んでも知ってるよ」

 なんか怖いな。恐ろしき友美ネットワーク。

「まあ、それは冗談だけどね。ただ、ちゃんと学校に来ていてよかった。鈴乃音がフラれたショックで引きこもりとかになったらどうしようとか、割と心配してたんだから」

「それだったらもう少しデリケートに扱ってよ。まあ引きこもりになるほどではなかったけど、それでもそこそこショックは大きかったし。男子に告白してフラれるのは初めてだったから……」

「そっか、でも大丈夫だよ。鈴乃音は優しいし、見てくれも悪くないから、彼氏なんてその内できるって」

 その内ねえ。そんなことを言って今日まで月日が過ぎてしまったわけだし……。17年間彼氏なし。

「そうだ! 放課後駅前のクレープ屋さんに行かない? こういう時は、美味しいものいっぱい食べて忘れるのが一番! 私おごるからさ」

「と、友美……」

 こういう時の友美の明るさは何だか胸にくるものがある。やっぱり持つべきものは友だ。もし将来、友情と恋愛を天秤にかけることがあったならば、私は迷うことなく友情を選ぶだろう。


***


 というわけで、放課後は駅前のクレープ屋に行った。(お会計はもちろん自分で払った。さすがに友達に奢らせるのは気が引けた)約束はクレープ屋に行くだけだったのだけど結局その後、買い物やカラオケにも行ったりしたので、家へ帰る頃にはすっかり夜になり、空では星が光っていた。

「鈴乃音見て。きれいな満月」

 友美は空を指さした。

「本当だ」

 私は夜空を仰いだ。吸い込まれてしまいそうな、丸く大きな月だった。そして自分がいつの間にか、フラれたショックからすっかり立ち直っていることに気がついた。

「……今日はありがとう」

「ん、ああ。元気出た?」

「うん。もうすっかり」

「そっか、ならよかった。じゃあ、私はこっちだから」

「あ、うん。じゃあね」

「じゃ、また明日」

 友美と駅前の交差点で別れ、しばらく帰り道を歩いていると、道端にダンボールの箱が置いてあるのを見つけた。

 何だろうと思い、しゃがんで中身を確認してみると

「……犬か」

「へっ」

 突然後ろから声がし、びっくりして振り返った。すると私の後ろに長身のスラッとした若い男の人が立っていた。

「捨てられたのか。ひどいことをするな」

 そう言って彼は犬を箱の中から持ち上げた。

「あ、その犬どうする……」

「どうするって俺が飼うんだよ。なんだ悪いのか……ん、というかお前桜木高校の生徒か?」

「そうですけど……何で……」

「何でってお前の着ている制服、桜木高校のじゃねえか」

「あっ……」

 そういえば学校からそのまま駅前へ行ったんだった。何だか自分の出身校を知られるって恥ずかしいな。

「それにしても奇遇だな。俺も桜木高なんだ。こんな時間に同じ高校の人間と会うなんてな」

「え、ああそうなんですか!」

 もしかしたら知り合いかもと思ったけど、その顔立ちは私の記憶に全くなかった。

 しばらく彼は、無言で私の顔をじーっと見つめていた。

「うーん」

 と、彼は自分のあごに手を当てて、何か考え事をしながら今度は私の全身をジロジロと見た。

「な、なんでしょうか……」

「……お前名前はなんていうんだ?」

「鈴乃音アイですけど……あなたは?」

 一応礼儀としてこちらも名前を聞いてみた。

「ん、ああ。俺の名前は大神亮おおがみりょうだ」

 大神…………やっぱり聞いたことがない。

「それにしても、こんなにそそるられるのは初めてだな……」

 大神さんの眼光が真っ直ぐ私に向けられた。彼の言っていることはよくわからなかったけど、見つめられる恥ずかしさと、大神さんの鋭い目に対する怖さとがないまぜになって、頭の中をぐるぐる回った。

「あ、あの……」

「……ああ、つい見蕩れていた」

「なっ」 

 ミトレテタ……そんなこと生まれて初めて言われた。

「こんなことがあるなんてな。驚きだぜ」

 そう言って、大神さんは犬を抱きかかえた歩き出した。私は闇へ消えていく彼の背中をボーッと見ていた。何だか夢の様な心地がして、自分の頬をぎゅっとつねってみた。痛かった。


***


 翌日、すごい情報網をお持ちだという友美に、彼のことを聞いてみた。

「大神亮か……知ってるよ。隣のクラスの」

 同学年で、しかも隣のクラスの人だったのか。忘れているだけで、もしかしたら今まで1、2回は見かけたことがあったのかもしれない。

「大神くんってどんな人?」

「うーん、イケメンなんだけど人付き合い悪いし、いつも1人でいるから近寄りがたいって感じかなあ。え、もしかして今度は大神を狙っているの? 恋多き乙女は大変だねえ」

「いや、そんなんじゃないよ! ただ昨日帰り道で、その大神くんと偶然出会って」

「それでラブストーリーが始まったの? なんだか少女漫画みたい」

「いや、ラブストーリーとかそんなんじゃ……!」

「何の話をしてんだ?」

 この声は…………。

「おっ、噂をすれば早速……」

 と、にやにやしながら友美は言った。

「な、何で大神くんがここに!? 隣のクラスじゃないの」

「ああ、そうだぜ? 別に今は休み時間なんだし他の教室に入ったっていいだろ。なんか問題あんのか?」

 自分のクラス以外の教室には立入禁止という校則があるわけでもないので、大神くんの行動にはなんの違反性もなかった。

「それで……何の用事?」

「ああ、伝えたいことがあってな。明日の昼休み学校の屋上に来い。以上だ。じゃあな」

「いや、屋上って一体何で……」

 大神くんは私の質問に答えることなく、さっさと教室を出ていってしまった。屋上? 一体どういうこと?

「なんかすごい展開になったね」

 相変わらず友美はにやにやしている。

「……もしかして、楽しんでる?」

「ハハッ、バレた?」

 全く他人事だからって……。

「あいつ、鈴乃音のこと好きだと思うな」

 友美は突然爆弾発言をした。その爆弾は私にクリティカルヒットした。

「なっ、だって大神くんとは昨日始めて会ったんだよ。私のことも今まで知らなかったみたいだし」

「だからきっとその時に、鈴乃音に一目惚れしたんだよ」

「一目惚れ……」

 私は昨夜のことを思い出した。「ミトレテタ」という言葉が頭の中でフラッシュバックした。

「でも私なんか……」

「自信持ちなよ! 鈴乃音は自分が思っている以上に可愛いんだよ。大丈夫、私が保証する」

そう言って友美は私の肩をポンッと叩いた。本当にすごい展開になってきた。


***


正直、友美も一緒に付いて来てほしかったけど

「二人の邪魔をしちゃ悪いし。いいよ、事後報告で」と言われ断られてしまった。

やっぱり不安だな……わざわざ屋上に呼んだってことは、やっぱりなんか大事な話が――

「……告白とか?」

自分で言っておいて恥ずかしくなった。

屋上へ着くと、すでにそこには大神くんがいた。手には灰色のお弁当包みを持っていた。

「屋上は良いよなあ。人は全然来ないから静かだし」

「あ、あの〜大神くん。それでどうして私を屋上に……」

「昼ご飯は食べたか?」

ひ、昼ご飯? 何で急に……

「まだ食べてないけど……」

「それなら良かった。ほらこれ」

 大神くんは手に持っているお弁当包みを私に渡した。

「あの、これって……」

「お前の弁当だ」

「え、私の……?」

「だからお前のって言っただろ」

 私のために作ってきてくれたのか。まさか屋上に呼び出したのはお弁当を渡すために――

「開けていい?」

「ああ、もちろん」

 お弁当の中身は、ご飯が弁当箱ぎっしりに詰められ、その上に豚肉の生姜焼きが乗っけられていた。何というかザ・男子の弁当みたいな感じだった。

「食べてくれ。味付けとかこれでいいか気になるしな。これから毎日作るわけだし」

「……え、毎日?」

「そうだ。お前はこれから、毎日昼休みに屋上で俺の作った弁当を食べるんだ」

 どういうことだろう。私は大神くんの意図がさっぱりわからなかった。

「……もしかして嫌か?」

「え、嫌ってわけではないけど……。なんというか急にそんなことを言われたから戸惑ってるというか……」

「じゃあお願いだ。俺の作った弁当を食べてくれるだけでいいんだ」

 大神くんは手を合わせてお願いした。なんだか必死な姿が大神くんらしくなく、そのギャップに私の心は動かされた。それに、昼ご飯はほとんど購買で買って済ませていたので、お弁当を毎日用意してくれるというのは、正直金銭的な面での助けにもなった。

「まあ、そこまで頼まれたら……」

「よかった。それじゃあ早速食べてみてくれ」

「あ、うん」

大神くんに促され、私は生姜焼きを一口食べてみた。

「……美味しい」

 意外だった。盛り付けはちょっと雑だけど、それでも味に関しては、購買で買うお弁当と同じもしかしたらそれ以上に美味しいかもしれない。

 このクオリティーのお弁当を毎日しかもタダで食べられるというのは、案外というか結構良いかも……。

「そうか。それならよかった。じゃあ明日からも昼休み屋上でな」


***


「それから毎日一緒に昼ごはん食べてるの?」

友美は言った。気づくと、大神くんの作ったお弁当を食べるようになってから約一ヶ月が経っていた。

「そうだよ。それにしても大神くん料理上手でね、毎日お弁当完食してたら体重増えちゃって……」

「あら、幸せ太りってヤツ? なんか楽しそうでいいなあ」

「え、いや楽しそうってそんな……」

 でも実際に、大神くんと一緒にお昼ごはんを食べる時間は私にとって幸せな時間となっていた。会話はなく、私がお弁当を食べているのを大神くんがじっと見ているという、はたから見ればちょっと変だけど、彼の視線から私は何故か優しさを感じて、不思議と心が落ち着いた。

「まあ、普通は女の子の方が好きな子にお弁当を作ったりするんだけどね。なんか変わったやつだね大神って」

「……うん。それは確かに」

 その点は今でも疑問だった。どうして大神くんは私にお弁当を作ってきてくれるのだろう? 一度理由を聞いてみたことがあったけれど、大神くんには「お前には俺の作ったものを食べさせたいからだ」と言われ、結局ちゃんとした答えを得ることはできなかった。

「やっぱり、相手の心をつかむにはまずは胃袋からってことなのかなあ」

「な、相手の心って……」

 でも……何の興味もない相手に対してごはんを作ったりしてこないよね。それに――

「実はさ、今日の昼休み、いつもの様に一緒にごはんを食べていると、大神くんが私に大事な話があるって言ってね……」

「お、ついに! それで、なんて告白されたの?」

「いや、その場では内容を教えてくれなかったんだけど、大事なことだから夜の7時に学校の前に来てって言われて……」

「ふーん、なんか回りくどいことをするんだね。その場でビシっと言えばいいのに」

「……やっぱり行ったほうが良いのかな?」

 こういうことは私の人生で一度も無かったので、いろいろな経験が豊富そうな友美からアドバイスをもらおうと思った。

「うーん、鈴乃音が行きたければ行けばいいし、行きたくなかったら行かなきゃ良いんじゃない?」

 思ったよりもドライな答えが返ってきた。ただ考えてみれば、友美は結構プライベートなことを聞いてくる割には、あまり干渉はしてこないから、彼女らしいといえば彼女らしい返事かもしれない。

 私は大神くんのことを考えた。私を見つめる彼の優しい目が最初に頭に浮かんだ。

「…………そうだね。じゃあ私行くよ」

「お、そうか! 頑張ってね」

 そう言って友美はウインクした。何を頑張れば良いのかは、わからなかったけど

「うん、頑張る!」

 私にもついに、青い春が到来するのかと思ったらドキドキで胸が一杯になった。


***


 夜の七時、学校前。夜空にはきれいな満月が浮かんでいた。そういえば、大神くんと初めて会ったあの日も満月だった。

「……大神くん」

 彼は私に気がつき、片手を上げて「おう」と言った。月明かりに照らされた大神くんは、普段昼間に会うときとまた雰囲気が変わって見えた。

「よかった。ちゃんと来てくれたんだな」

「うん。それで……大事な話って」

 これから大神くんに告白されると思うと、段々と自分の顔が赤くなっていった。そしてそのことに気づくと、より一層顔が赤くなった。

「ああ実は俺、狼男なんだ」

 大神くんは私の目をまっすぐ見てはっきりと言った。私は初めて告白されたので最初は緊張でうまく言葉が出なかった。でも、たとえ拙い言葉であってもこの大神くんの思いに対して私も自分の思いを伝えたかった。昼休み、一緒にご飯を食べて感じた幸せを、そして大神くんへの――

「私も大神くんのことが…………って狼男!?」

 思っていた告白と違った。

「いや、冗談だよね。私をからかっているだけだよね」

「本当だ。まあ、狼の姿になれるのは今日みたいな満月の日だけだけどな」

「でも、そんな……」

「じゃあ、ちょっと見せてやるよ」

 大神くんは、上着を脱ぎ上半身裸になると、月を見上げながら「うぅぅぅぅ」と低く唸りだした。すると、身体がどんどん毛深くなり、口からは鋭い牙がにょきにょきと生え、鼻は高くなり、耳はつり上がり、あっという間に漫画とかでよく見るような狼男になった。

「すごい、本物だ……」

 でもこれで、大神くんがいつも1人でいる理由がわかった気がした。自分の正体がバレないように、出来るだけ人と関わらないようにしていたのだろう。だからこそ、こんな重大なことを私に伝えてくれたということは、大神くんは私のことを特別に思ってくれているからじゃないのだろうか。だったら私も大神くんに対して、きちんと自分の思いを伝えるべきだ――

「こんな大事なこと教えてくれてありがとう。でも私、たとえ……大神くんが狼男でもそんなの気にしないから! 大神くんは大神くんだから……。あのね、いつも一緒にお昼ごはん食べてる時、お話全然できなかったけど……でも私すっごく幸せを感じていたんだよ。大神くんが私を……」

「なあ、なんか勝手に話しているけどよ。別にお前をここに呼んだ一番の目的は、俺の正体が狼男だってことを伝えることじゃねえぞ」

「え、じゃあ他に何が」

「いや、お前を食べるためだよ」

「……食べる?」

 食べる、たべる、タベル……? しばらく私の頭の中で「食べる」という単語がぐるぐる回った。

「じょ、冗談だよね? それにわざわざ人間なんか食べなくたって……」

「まあ、俺もお前に会うまでは人間なんかただの有象無象で、別に食料としても意識することはなかったけどな。だから初めて出会ったときはとても驚いた。人間に対してこんなに食欲がそそられるのは初めてだったからな。そしてそのとき俺は、いつかこいつを食べようと決心したんだ。それに、これはお前にあった後色々と調べてわかったことだが、大神家の先祖には、結構人肉を食べているのが多かったんだ。だから、人間に対して食欲が湧くってのは別に狼人間としてはそれほど逸脱した行為じゃないみたいだな」

「……じゃあ、お昼ごはんを作ってきてくれたのは……」

「ああ、あれは言ってしまえば家畜の世話みたいなもんだよ。お前をもうちょっと太らせようと思って、ボリュームのある物食べさせてたんだけどあんまり変わらなかったな。まあ、今のままでも充分うまそうだぜ」

「そんな…………」

 ということは、大神くんは今まで私のことをただの餌としか見ていなかったということか……。ごはんを食べている私を見る大神くんの優しい目は、自分の家畜が肥えていくのが嬉しかっただけなのか……。

「じゃあ、私に対して恋愛感情とかは……」

「ハッハッハ、そんなものあるわけねえだろう。だいたい、お前だって牛や豚に恋愛感情抱かねえだろ?」

 大神くんは笑っていた。そう、モテない私の前に突然イケメンの男の子が現れてなんていうラブコメは存在していなかったのだ。あるのは狼男が出てくる安いB級ホラーだった。

「結局片思いだったんだね……」

 これから食べられる恐怖よりも今は、大神くんが私を餌としか見ていなかったという事実に対しての悲しみの感情のほうが大きかった。

「逃げるなんて無駄な抵抗はやめてくれよ。安心しろ。お前が痛みを感じる前に喰らい尽くしてやるよ」

 大神くんはゆっくりと私に近づいてきた。

 ああ――別にフラれてもいいよ。だけど、普通に恋をして普通にフラれたかった。こんなこと考えても意味はもうないけれど私、大神くんがたとえ狼男であっても――それでも私は大神くんを好きでいられたよ。きっと野球部の山田くんではここまでの気持ちにはなれなかったと思う。

「本当にどうして……」

 悲しみや怒りやいろいろな感情が混ざり合って込み上げてくる。

「ただ……普通に恋をしたかっただけなのにー!」

 私は空へ向かって叫んだ。すると、私の身体の中を何か電気のようなものがバチバチッと走り、私から衝撃波が発生した。衝撃波は大神くんを50メートルほど吹き飛ばした。

「ぐっ……何だ……こりゃあ」

 大神くんは仰向けになったまま顔をこっちに向けて目を丸くして言った。鳩が豆鉄砲を食ったようとはこういう顔を言うのだろうか。いや、鳩ではなく狼か。

 今度は私が大神くんに近づいていった。大神くんはフラフラとしながらも立ち上がり

「何をしたのかわからねえが、人間風情が大神一族に勝てると思ってんじゃねえぞ!」

 と吠えると、私に向かって突進してきた。その動きは余りに素早く人間の域を超えているように思ったけど、私は彼の攻撃をヒラリと左にかわすと、大神くんのあごを目掛けて、右拳を突き上げた。ゴツッと鈍い音が聞こえ、彼は上空へ吸い込まれる様に吹っ飛んでいった。

 夜の静けさが辺りを包んだ。

「……何でこんなことになったんだろう」

 私は夜空を見上げた。月の光が目に染みた。


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