十円玉
登場人物
mimishipe : アイドルグループ
ミオ: mimishipeの中心的存在。連絡が取れない。
スーツ男(大道) : mimishipe のプロデューサー。
白メガネ(山本) : 坂谷と飲んでる人。カリン推し。
十円玉(坂谷) : 山本のツレ。上田の仲間。
ママ : スナック馨 のママ。
紗都 : スナック馨で弾き語ってる少女。
上田 : 居酒屋上田の大将。
綺麗なフォームだ。この男、今まで何回も土下座してきてるな。いや、そんなことはどうでもいい。
隣にいるママも、山本も、呆気にとられたのか声を発さない。
「おい、お前立てよ。」
俺はいてもたってもいられず、スーツの男の腕を掴んだ。
「す、すみません。」男がゆっくりと立ち上がる。紗都が不安気な顔を覗かせているのを、俺は見逃さなかった。
「おい、お前紗都が怖がってんだろ!ふざけんなよ!」
苛つきを隠せず、俺は噛み付くように言葉を吐き出す。
男は、誰にも視線を合わせないまま、ごにょごにょ何か言い始めた。
「本当すみません。僕、実はあるアイドルグループを育成していて………ごたごたでメンバーが欠けちゃって………この娘なら、いける気がしたんですけど………そんな訳ないですよね。ごめんなさい。あの、気にしないでください。今日はもう帰ります。」
「おい待て!」
そう言って、勝手に去ろうとしたスーツの男の胸ぐらを無意識に掴んでしまっていた。
「お前もう二度とその面見せんな。紗都になんかしたら俺が許さねえから。」
男の体が小刻みに震えているのを感じるのと
上田が店に入ってくるのは同時だった。
「え、坂、お前…なにしてんの?」
上田のその一言に、俺は手を振りほどく。
「大丈夫ですか?」上田が駆け寄ったとき、男はボソッと言った。
「俺、もう帰るので、紗都ちゃんの返事………返事だけ聞かせてもらえませんか?」
紗都は、歌い始める前と、同じ目つきでこちらをじっと見つめていた。
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