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いつかこの場所で  作者: 微温湯
5/7

歌声


その眼はどことなくあいつに似ている。

一言も発さない。しかし、一筋の光に照らされた少女の存在感は、普通のそれと違った。

まるで、「私はここにいる。 」と主張しているかのように。


ボーッと見つめていると、少女はギターに手をかけ、歌い始めた。


松任谷由実の「翳り行く部屋」


少女の歌声と、さらさら揺れる栗色の髪。アコースティックギターの音が、歌の情景を掻き立てる。

酒も入ってだんだんと泣きそうになる。


「ありがとうございました。」

少女は力強い歌声とは裏腹に、か細い声で言った。その一言に、立ち上がって手を叩いた。


「めっちゃ気に入ってるじゃないですか!」


白メガネの男の声をよそに、俺は無意識のうちに、ステージにいる少女に声を掛けていた。


「君、凄いね。」

少女は、恥ずかしそうに微笑んでいる。

「君、才能あると思う。ここじゃなく、もっと大きいステージで歌うべきだ。」


さっきまで、アコースティックギターと拍手の音で包まれていた店内が、静まり返っていくのが分かった。



「少しの間だけで良い。mimishipe の、メンバーとして、加入してください。お願いします。」


唐突だと、自分でも分かっている。俺は急に怖くなって、視線を誰にも合わせるまいと、床に頭を擦り付けた。

惨めだ。いつもそうだ。

それでも土下座するしかなかったんだ。



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