誰か王様になりませんか?
“このネタ、温めますか?”という短編集においていた作品です。
ジャンル変更にともない、短編として投稿することにしました。
「ああ、アリシア! お前はなんと可愛らしいのじゃ!!」
愛する王妃を亡くした国王は、遅くにできた子であることもてつだい、一人娘であるアリシアを目に入れても痛くないほど溺愛していた。
「お父様……本当にそう思っているのなら、侍医に診てもらった方がいいわ。……眼か頭を」
玉座に座る父に抱き締められたアリシアは深い溜め息を隠すことなく、辛辣に言い放つ。
アリシアは今年で16歳。親に“可愛い、可愛い”と抱き締められて喜ぶ歳ではなかった。
「そのつれないところも妃によく似ておる。ほんにお前は可愛いのう」
眉尻を下げてデレデレする父に、アリシアは頭を抑え、特大の溜め息を吐いた。……国王の威厳などあったものではない。
「“も”じゃなくて“は”でしょ。……私はお母様に全然似てないんだから」
アリシアはあまり覚えていないが、彼女の母はそれはそれは美しい女性だったらしい。なんでも、国一番と謳われるほどの美貌で、有名な画家がこぞって母を描こうとしたとか。
「お父様、私が周りからなんて呼ばれているか知っているの?」
アリシアは母親と全く似ていない。きっと、月とスッポンの方がまだ類似点があるだろう。
「月の女神が生んだガマガエル、よ」
アリシアは国一番……いや、大陸一と謳われる―――醜女だった。
◇◇◇
王宮の廊下。綺麗に磨き上げられた床は足を下ろす度に硬質な音を響かせる。
国王の執務室から自室へと戻る途中、見覚えのある青年を見掛けたアリシアは立ち止まって彼に声を掛けた。
「……ちょっと」
「……っ、ア、アリシア殿下!? す、すすす、すみませんっ!!!」
アリシアの記憶が正しければ伯爵家の三男であるはずの青年は、礼儀もなにもなく脱兎の如く彼女の前から走り去って行く。
だんだんと小さくなる背中に頭が痛くなった。アリシアは彼の兄が経営している領地について聞きたいことがあっただけなのだが、何か勘違いされたようだ。……勘違いといっても、ここ最近はよくあることなのだが。
「姫、先程の方に何か?」
アリシアが黙ったまま突っ立っていると、後ろに付き従っていた彼女の護衛である近衛騎士・ダグラスにそう問い掛けられた。
“聞きたいことがある”と言えば、ダグラスがすぐさま先程の彼を連れて来るだろうが、そこまでして聞きたい話でもない。
「……いえ、何もないわ。気にしないでちょうだい」
静かに首を振るアリシアに、“そうですか”と応えたダグラスの瞳は、なぜか同情に満ちているように感じた。
国王・ヴォルカノンが国へと“とある触れ”を出してから、1か月が経った。
現在、アリシアを悩ませている――父としては娘を思ってのことなのだろうが、むしろ苦境に立たせている――のはソレである。
『我が一人娘、アリシアの婿となる者を次代の国王とする』
この国では、現国王によって次代の国王が指名される。原則として、王族の血を引いている必要があるが、この国は古い国なので伯爵以上の家柄の貴族ならばどんなに薄くとも王族の血が混じっているはずだ。
余程のことがない限り国王は自分の息子を次代にと望むが、現国王の娘であるアリシアは王女。禁じられている訳ではないものの、この国に女王が立った例はない。
だから現国王である父に、自分を次代の国王にと売り込みにくる貴族は絶えなかった。……ほんの1か月前までは。
「どいつもこいつも、そんなに私と結婚したくないっていうのっ!?」
アリシアの広い自室に本日幾度目かとなる彼女の怒鳴り声が木霊した。
◇◇◇
重厚な書庫の扉を開くと、普段は嗅ぐことのないやや埃っぽい匂いが鼻に付く。
目的の人物を探し、アリシアが奥へと進むと、ちょうど書庫の一番奥の窓際に彼はいた。
「マイス、ちょっと相談があるのだけど……今、良いかしら?」
アリシアが声を掛けた青年・マイスは、宰相の息子で彼女の幼馴染である。
マイスは男にしては細いものの、怜悧な美貌の持ち主で、アリシアのもう一人の幼馴染と城内の女性の人気を二分している。
「………………」
アリシアの声に反応したマイスが本から顔を上げると、後ろで一つに束ねている黒髪が僅かに揺れた。鴉の濡れ羽色とでも言うのだろうか、彼の美しい黒髪はアリシアの鈍い金髪と違い、窓から射し込む陽の光を浴びて輝いている。……アリシアは彼のせいで男の長髪が嫌いになった。
「………………。……構いませんが」
被害妄想かもしれないが“無視したいけど、そういう訳にはいかないよな”くらいの間があった気がする。目立たない程度に溜め息も吐いていたような……。
「それで、私に何の用ですか?」
マイスは読んでいた本を閉じ、アリシアに向き直った。
バタリと音を立てて閉じた本を手放さないところを見ると、本腰を入れて彼女の話を聞く気はないようだ。
「次代の国王の件なのだけど」
「…………っ」
アリシアが話を切り出すと、マイスの本を持つ手に力が入った。しかし、すぐにマイスはそれを取り繕うように言葉を返してくる。
「まだ決まらないそうですね。私も次期宰相として憂慮すべき事態だと思っています」
どうやらマイスは本題に入って欲しくないらしい。だが、アリシアも遠回しな牽制に怯んではいられないため、なりふり構わず、ずばり本題に入る。
「憂慮すべき事態……ね。それを聞いて安心したわ」
そう言って、アリシアがにっこりと微笑むと、若干マイスが青ざめた。……その反応は、彼が大嫌いなナメクジを見たときの反応に似ている。
「マイスは昔から頭が良かったわよね。私はやっぱりあなたみたいな人が国王になるべきだと思うの。だから、私と結婚してくれない?」
“別に恋愛とかじゃないから! 王の素質の問題だから!”ということを強調しつつ、軽い口調で提案した。軽く言ったのは、“答えはハイかYESだ”という雰囲気で聞くと100パーセント逃げられるからだ。……何度も色んな相手に逃げられれば、いい加減学習もする。
「国王という地位にさして興味がありませんので、お断りします」
――お前、さっき“憂慮すべき事態だ”とか言ってただろうが! 私情で断るってどういう了見だ!!……という言葉は呑み込んだ。
◇◇◇
アリシアは普段足を踏み入れることのない場所、騎士の詰め所へと来ていた。通りがかりの騎士に聞いた話では、目的の人物は鍛錬所にいるらしい。
「お、姫さんじゃん! こんなとこに来るなんて珍しいな。今日はどうしたんだ?」
キョロキョロと辺りを見回していると、向こうから声を掛けてきた。
「久しぶりね、ラグナ」
ラグナはアリシアとマイスの幼馴染で、将軍の五人いる息子の一人である。長男だからか、もう一人の幼馴染と比べると面倒見が良く、人当たりも良い。同僚や部下にも慕われているそうだ。
「ちょっと話があるんだけど……」
それとなく“場所を移したい”という空気を出すと、それが伝わったのか、ラグナが軽く頷く。
「じゃあ、とりあえず談話室にでも行こうぜ。今の時間帯なら誰もいないはずだから」
普段は下級騎士達が雑談に使っているという談話室に入ると、ラグナから椅子を勧められる。令嬢ならばまず座らないであろう、古びて汚れた椅子だったが、アリシアはそういうことにあまり頓着しない性質のため、躊躇いなく腰掛けた。
「それで、話なんだけど」
「あ、ちょっと待ってくれ。今、茶でも淹れる」
そう言って、机を挟んだ向かい側に座ったラグナは腰を浮かせる。
アリシアが王女だといっても、二人は幼馴染だ。いつもはラグナがここまで気を遣うことはない。……大方、アリシアの話に予想がついているが、聞きたくないのだろう。
“このヘタレが”と思いつつ、アリシアはラグナの動きを制す。
「結構よ。すぐに済むから」
アリシアの提案に、彼が頷けば良い話だ。頷きさえすれば、彼女の全権力を持って、2週間ほどで全て終わらせてみせる。
「……そ、そっか」
ラグナは立ち上がり掛けた中途半端な体勢でしばらく視線を彷徨わせていたが、やがて観念したようにどかりと椅子に腰を下ろした。
「姫さんの話ってのは……結婚のことか?」
聞きたくなさそうにしていたのに自分から話を切り出してきたラグナに、アリシアは驚いて目を見開く。……早くも、もう自棄なのだろうか。だとしたら、自棄ついでにアリシアがこれから言うことにこのまま頷いて欲しい。
「そうよ。ラグナって恋人たくさんいるわよね? そのせいで何回か婚約破棄されてるでしょ? でも、私なら側室を何人とっても何も言わないわ。……どう? 私と結婚しない?」
しかし、そう上手くはいかないようだ。
「あ~、俺と姫さんは合わねえと思うぞ? 姫さんの夫つったら、国王になるんだし、マイスとかのが良いんじゃねえ?」
――もう断られたんだよ! つか、何さり気に他人に押し付けてんだ!! ……という言葉は呑み込んだ。
◇◇◇
比較的アリシアの容姿を見慣れている幼馴染二人でも無理だったとなると、以降の人選が悩ましい。
アリシアと似たような容姿の貴族男性がいたなら、権力に物を言わせて結婚を了承させたかもしれないが、生憎そんな人外生物は彼女だけだった。いたとしても歳が歳なので、もうとうに結婚している。……彼らが結婚できてアリシアが結婚できない理由は一体なんなのか、ぜひとも教えて欲しい。
「そっか~、アリシアも大変だよねぇ」
数少ないアリシアの友人の一人である公爵令嬢・ラムリアは、そう言ってしみじみと頷いた。
ラムリアは王都から離れた公爵領で暮らしているが、アリシアが心配だったらしく、数週間前から王都に来ている。優しい女友達を見ていると、不甲斐ない男共への嫌悪感が増す気がするから不思議だ。
「ええ、もう他に打つ手がなくて。この際、没落気味の伯爵家辺りから一人攫ってくるべき?」
没落気味の貴族にはいくつか心当たりがある。長男は無理でも、三男四男がいる家なら金さえ積めば喜んで差し出しそうだ。
アリシアは良い考えだと思ったが、ラムリアはそうではなかったようで、困ったように首を傾げた。
「う~ん……それは最終手段で良いんじゃない? 私としては、やっぱりアリシアのこと分かってくれる男性と幸せになって欲しいなぁ」
「ラムリアっ!! ……ありがとう、そう言ってもらえるだけで嬉しいわ」
友人思いの言葉に、思わず感極まって抱きついてしまう。
抱きついた格好のまま“それに比べてあの幼馴染共は……”ともう何度目か分からない愚痴をこぼすと、ラムリアがよしよしと頭を撫でてくれた。
「あっ、じゃあ、私のお兄様なんてどう?」
「ラムリアのお兄様ってまだ独身だったかしら?」
「上のお兄様はもう結婚してらっしゃるけど、下のお兄様はまだよ」
ラムリアの下の兄というと、公爵家次男のレストのことだろう。アリシアより一つだけ歳が低いラムリアの一つ上なので、確かアリシアと同い年だったはず。
「そうはいっても公爵家でしょう? 婚約者がいるんじゃないの?」
「大丈夫よ。この間、婚約破棄したばかりだから」
最近は婚約破棄が流行っているのだろうか。
「向こうの女性が男癖の悪い方で、申し訳ないけれど、こちらから破棄させてもらったの」
アリシアの微妙な顔に気付いたのか、ラムリアが苦笑しつつ、そう付け加えた。しかし、童顔でふんわりした雰囲気のラムリアの口から“男癖の悪い”と聞くと、それはそれで微妙な気分になる。
「でも、ラムリアのお兄様に私を押し付けるのはちょっと……」
「何言ってるの! ……お兄様とアリシアが結婚したら、私達、義理の姉妹よ? 素敵じゃない!!」
「………………え、そこ?」
「まあ、お兄様だって本当に嫌だったら断ると思うから、とりあえず会ってみたら? 」
“今日は邸にいると思うし”と微笑むラムリアに促され、アリシアは彼女の兄・レストの私室へと向かった。
レストの私室へ案内される途中、ラムリアから教えてもらった情報によると、彼は流されやすく情に弱いらしい。“同情をひいた後で押して押して押しまくれ”と言われたので、アリシアは彼女の言葉に従い、その通りにしたのだが……。
「えっ、いや……ご冗談ですよね? あははは」
レストは目を泳がせ、誤魔化すように乾いた笑いをもらす。……涙ながらに結婚してくれと2時間語った相手にこの反応はどうなのか。
「本気です」
「………………」
「本気です」
黙ったままのレストに、アリシアが同じ言葉を二度繰り返すと、彼は笑みを引っ込めて何か決意したように彼女を見つめた。
真剣なその瞳に、もしかしたらもしかするかもしれないと、心を高鳴らせる。
「僕は好きな人がいるので……申し訳ありませんが」
――嘘吐くなぁーっ!!! なんだその“今考えました”って感じの断り文句は!! ……という言葉は呑み込んだ。
◇◇◇
自室の机に向かい、アリシアは溜め息をこぼす。
目の前に積み重なった、彼女が各地へ送った手紙の返事にはどれも“お断り”の文字が並んでいた。
「……やっぱり、お金で買うしかないのかしら」
年頃の息子がいる貧乏貴族を頭の中でピックアップしていると、控えめなノックの音が室内に響く。
このノックの仕方からするとダグラスだろう。護衛という立場を意識してか、あまり自分の存在を主張しない彼らしい叩き方だ。
「どうぞ」
そう答えつつ、アリシアは乱雑に広げた手紙を丁寧にたたみ、引き出しの中に仕舞う。破りさりたい衝動はグッと堪えた。
「失礼します、姫。ロゼッタ様がいらっしゃいましたが、どうなさいますか?」
「叔母様が?」
ダグラスが告げた意外な人物の来訪に、アリシアは僅かに目を瞠る。彼女の記憶違いでなければ、今日は何の約束もしていなかったはずだ。
「はい、キール様をお連れのようです」
ロゼッタは侯爵家に降嫁された現国王の妹で、アリシアにとっては叔母に当たる。侯爵家の四男であるキールはその息子だ。
「……応接室にお通しして」
「畏まりました」
ふと思い立ち、一礼してこの場を去ろうとするダグラスを引き止めた。
アリシアが名前を呼ぶと、ダグラスはピタリと立ち止まり、振り返る。
「どうかなさいましたか?」
「あー……えっと、ダグラスって、確か伯爵家出身よね?」
「はい、兄が伯爵位をいただいております」
「身分的には何の問題もないわよね?」
「…………?」
意味を測りかねたのか、ダグラスは眉根を寄せた。
「ダグラス。次代の国王になる気はない?」
アリシアがやや自棄っぱちにそう告げると、ダグラスは一瞬呆けたように固まった後、呆れたように溜め息を吐く。職務に忠実な彼が感情を見せるのは珍しい。……それほどアリシアの発言が想定外だったのかもしれない。
「姫、私をいくつだとお思いですか」
「……ごめんなさい」
ダグラスは御歳47歳。アリシアより父との方が遥かに歳が近かった。
ダグラスと別れてしばらくしてから、応接室に向かう。
あまり待たせることになるとロゼッタが怒るだろう。彼女はアリシアの容姿を気にしない、気のいい人物ではあるのだが、なにぶん短気だった。
「久しぶり、アリシア!」
応接室に入った途端、豊満な身体つきの女性に抱きつかれる。アリシアは後ろに倒れそうになりながらも踏ん張って、彼女……ロゼッタの背に手を回した。
「まあ、大きくなって……! 私によく顔を見せてちょうだい」
ロゼッタとは半年前にパーティで会ったはずだし、そんな短期間でアリシアが成長するわけがないが、反論すれば“あなたはまたそんなこと言って!”と叱られることが目に見えているので何も言わない。
「こんな顔で良ければいくらでも。でも叔母様、少し苦しいわ」
きつく抱き締めてくるロゼッタに苦笑しつつも、やんわりと抗議する。……このままだと締め落とされかねない。
「あら、ごめんなさい。私としたことが、あなたに会えて少し興奮してしまったわ」
「ふふっ、叔母様ったら相変わらずね。……そう言えば、キール君も来ているんでしょう? ご挨拶させてもらえないのかしら?」
「王女殿下に先に挨拶させるなんて、とんでもないわ。ほら、キール。アリシアにご挨拶は?」
ロゼッタの後ろにキールを抱えて控えていた乳母が数歩前に出た。アリシアがロゼッタと共にキールの顔を覗き込むと、彼は先程の会話が理解できていたかのように笑う。
「ばぶー」
アリシアの従弟であるキールは1歳の赤ん坊だ。親馬鹿気味の彼の両親に言わせると、百年に一人の神童らしいが、実際のところどうなのかアリシアには分からない。
ただ、顔立ちがロゼッタに似ている気がするので、将来はさぞ美形になるだろう。残念なのは、アリシアが美形嫌いだということだけだ。
「キール君は可愛いわねぇ。大きくなったら私と結婚する? 王様になれるわよ~?」
おどけたように問い掛けると、ロゼッタと乳母がくすくすと笑った。キールの何を言われたのか分からないというようなキョトンとした顔には赤ん坊特有の可愛らしさがあり、癒される。
しかし、アリシアの“まだ赤ん坊だし、何も分かっていないのだろうな”という考えに反して、キールはゆるゆると首を横に振った。
「……ばぁぶー」
――赤ん坊の頃からこの態度、あなたきっと大物になるわよ……という言葉は呑み込んだ。
◇◇◇
アリシアは結婚相手が決まらぬまま、遊びに来てくれたラムリア相手にくだを巻いていた。
父が触れを出してからそろそろ2か月。もうアリシアが振られていない男性がいないレベルになってしまっている。
「ねぇ、もういっそのことアリシアが国王になっちゃえば?」
唐突に、ラムリアがそう言った。
「私が? でも前例がないし……」
「私は応援するよ? こういうこと言いたくないけど、アリシアがどれだけ頑張っても結婚相手は決まらないと思うし……」
ラムリアは本当にアリシアのことを案じているのだろう。彼女の眼には気遣わしげな色が見て取れる……が、しかし。
アリシアの醜い容姿が呪いによるものだと、彼女の魔法使いの友人によって分かるのは、その3日後で。
娘に悪い虫を付けたくなかった父親が呪いの原因だと知るのは、そのさらに2時間後で。
呪いのことをすっかり忘れていた父親を殴って、呪いを解くのが、その翌日で。
呪いを解いたアリシアが母親に劣らぬ美貌の持ち主だと王都中に広まるのは、さらに2日後で。
変わり身の早い男達と、山のような結婚の申し入れに頭を痛めるのは、その1週間後で。
求婚してきたマイスとラグナとレストに、アリシアが「もうお前らなんて知るか!!!」という言葉を呑み込まずに叫んでしまうのは、そのさらに1時間後だったりする。
これらは全て、この後半月足らずに起こることである。
「女王か~、もうそれでも良いかもしれないわね」
―――だが、このときのアリシアはまだ何も知らない。
実はキャラの名前で遊んでました。今回のキャラ名は全て、作者が好きな某シリーズもののゲームから取っています。分かった人はお友達。
《簡易人物紹介》
ヒロイン:アリシア
国王の一人娘で、父親に溺愛されている。国一番の美女と謳われた王妃の血を引いているとは思えないほど醜い容姿をしているため、性格は若干捻くれ気味。口が悪い。
呪いが解けてからは、逆に求婚者が絶えなくなる。最近ちょっぴり人間不信。
宰相の息子:マイス
アリシアの幼馴染その1。ナメクジが嫌いだが、実はカエルも苦手。虫も無理。……頭は良いが残念なヤツ。
将軍の息子:ラグナ
アリシアの幼馴染その2。脳筋ヘタレ。きっとデキ婚する。
公爵家の次男:レスト
ラムリアの兄。キャラが薄い。たぶんあの後、妹に殴られた。
護衛騎士:ダグラス
主人公付きの近衛騎士。47歳。真面目で堅物。仕事一筋だからか未だ独身。
従弟:キール
降嫁した叔母の息子。NOと言える1歳児。大物になる予感。
国王:ヴォルカノン
アリシアの父。娘を溺愛しているが、愛が空回り気味。
公爵令嬢:ラムリア
アリシアの数少ない友人。アリシアのことをとても大切に思っている、友達思いの良い子。
侯爵夫人:ロゼッタ
アリシアの父方の叔母。感情表現豊かな人。メリハリのある美人さん。