もう少し話すことあると思うけど、年賀状のことしか話していない
修三「しかし思い出すな、年賀状の時期になると」
陽介「ああ、あの話ね」
「ふっふっふ、高校の冬休み、兄貴と家で年賀状を作っていたんだけど、モッコモッコマーカーを使うことを兄貴が思いついてねえ」
修三の兄はすぐ悪乗りする。
「見てないけど、あれは本当にひどいと思うよ」
モッコモッコマーカーとはマジックのような、チューブに入った絵の具のようなものである。塗って温めると盛り上がって立体的になる。母が面白がって買ってきた。最初はTシャツに使ったりしていた。
「あれで絵を描いて、ストーブで温めたら焦げてしまってね。結局半分くらい燃え落ちてしまったな」
「はっはっは」
「ああ、俺も兄貴も大笑いだったよ。差出人も、筋肉ス○ルとか書いてね。本当、よくあれで届いたと思うよ。下半分が燃え落ちて、裏面がなんだかカラフルで盛り上がってゴワゴワして、差出人が昔の漫画の主人公で」
「うちの親はいたずらだと思って捨てたけどね」
「あっはっはっはっは、あれは本当に面白かったな。君に届かなくて残念だよ。それで確か次の年はあぶり出しに挑戦したんだよ」
あぶり出しとは、みかん汁で文字を書き、当初透明だが温めると色が出る表現技法である。
「はは、それも焦げたんだっけ?」
「ああ、試しに作ったのを家のストーブで温めたら、これもやり過ぎてしまってね」
「はっはっは、火遊びは駄目だよ」
「君には裏面が真っ白なものを送ったんだけど」
「たしか、来たけど既に焦げていたよ」
「あれ、そうだっけ?はっはっは」
「まったく、昔からカス野郎だったな」
「まあ、最近は来たら返すだけだけど、登山の写真で良さそうなのを印刷して切り貼りして返しているよ」
「個性的で君らしいな」
「今年の冬休みはどうするの」
「今年は仕事が多くてあまり休めそうにないなあ」
「こちらも29と2日に仕事が入っていてね。3日間しかないなら帰省する気も起きないしなあ。山行こうかと思っているよ。帰省するのは少しずらすかな」
「俺は帰るけど、幸本も帰るって言ってたから向こうで会うかな」
「てっちゃんは?てっちゃんとも会うんでしょ?」
「半年くらい会ってないからなあ。会わないんじゃないの」
「でも家はすぐ裏だから、あれだな。交差点でごっつんこ。再会編のスタートだよ。『陽ちゃん!』『てっちゃん!』『今までどこにいたんだ!会いたかったぞ!』『うおおおおおおお!好きだー!』『ダダッダッダッダッダッガシ!(駆け寄って抱き着く擬音)』」
「あっはっはっは、死ねばいいのに」