Dream4話「悔やむ事と悔やまれない事」
歩き始め数分。前の時とは比較的余裕がある分、今の状況には口にせずとも驚くばかりだ。ついつい「これ触れるのかな?」とやっと色鮮やかになり始めた生え始めの草に手で触れたりする。
「ふふっ…不思議ですか?」
「ああ、そうだな……」
自然と本音が漏れ、ハッと我に返ると「い、意外とな」と無理矢理一言付け足した。
チラ、と相手の表情を見ると「遅いですよ」と言わんばかりに笑っている所を見ると手遅れだったと肌身に感じた。しかも可愛いからそれ以上言えない。悔しい。
静寂さえ変に感じた俺は別の話を切り出した。
「にしても歩いてみればこう言うのもあるんだな。前ん時は『無!』って感じだったのに」
「前…?前も来た事あるんですか?」
「あ?あぁ、うん。実はなーーー」
どうやら俺の夢でありながら彼女はこの事を知らなかった様だ。俺はあの日起きた事を友人に話す様に彼女にちゃんと伝えた。
「ーーーそこで身体が、こう、後ろ?に倒れて、背中が意識が飛びそうなぐらい痛くなって、で、次に目を開けた時はさっきいた所と同じ場所って訳だ」
ちゃんと伝えたけどちゃんと伝わったか不安になる。ここで俺は伝え方が異様に下手な事を自爆と言う形で思い知らされた。
「ふむふむ……なるほど良く分かりました。やはり主様は説明も上手いですね!」
お前は俺を美化しすぎだ。
「それで、その時あなたはどこに?誰かと会いましたか?雰囲気とかは…」
「え…?えっと、あーさっきと同じ場所だったかな、あとさっき灰?みたいなのになった奴もいた。でもその時はその真っ白な場所が延々と続いてた……気がする。それにあいつもパンチ一発でやられるぐらい弱くなかったし……それぐらいか」
それを聞いた彼女は少し黙々とすると、やがて誰に向けての仕草か小さく頷くと俺にこう告げる。
「…少し違う方法で来たから、と言う事ですね」
「え?来る事に方法とかあるのか?」
「…まだ村まで離れてますし、歩きながら説明しましょう」
彼女は自分が言う方法による違いを話し始めた。
「主様はここに来る時、意図的に意識を落とそうと思いましたよね?」
「え?えぇ〜…っと、来れる事は知らなかったけど、寝ようとはしたから、多分そうだな」
「それが方法の1つなんです……そうですね、寝たら夢を見る、一般的な方法とあまり変わらないと会釈していただければ」
……この時点でついていけなくなっている俺に構わず話は続く。
「そしてさっき言って下さった方法ですが……本人の意図に関わらず意識が落ちる形ですね。これだと夢が完璧に作れずに不完全なまま入ってしまう、ようです」
「……じゃああの不可思議は…」
「不完全ですから、その影響でしょうね」
はぁ……呆れ声ではない、感心の篭った溜め息を漏らす。改めてこの子は良い子だと認識した。この子(ヘソ出し)と出会った俺は恵まれているな。
「最悪夢から出られないケースもありますし……いやぁ良かったですね主様!」
「あぁ良かった…ぇぇええ!?」
そしてこの子は発言のタイミングが良くも悪くも絶妙だった。