第一話:プロローグ:2011年3月某所
本作が、これからタイムリープする予定のある方の一助となれば幸いです。
「――で、あのバカ息子は今何を? 」
暗い執務室。デスクの上の旧型PCには、オカルト板のあるスレッドの文字が淡く光っている。
男――自衛隊の士官服を纏った――の低い声に、受話器の向こうで女性が息を吐いた。
『部屋に籠ってずっと書き込みをしています。AIがどうとか、少子化がどうとか……まぁ好き勝手書き散らしていますよ。壮一さんの話ではアクセスログと魚拓の解析から、すでに一部のネットユーザーや公安、調査室の一部が動き始めているそうです。父さん、あのバカをどうします? 確保しますか? 』
「馬鹿モン。今身柄を拘束して書き込みを止めれば、あいつの言う前震が当たった瞬間ネット世論は『国家による隠蔽工作だ』と爆発する。下手に動かん方がいい。予知が外れたら……バカが一人その責任を果たすことになるだけだ」
男は眉間を押さえ、ディスプレイに映る未来人を名乗る固定ハンドルネームを睨みつけた。
『じゃあ、このまま泳がせるんですか? 』
「ああ。あいつには泥を被ってもらう。世間の嘲笑を集めさせ、その代わり最悪の未来への防波堤としての意識を日本中に植え付けさせるんだ。……それと幸恵、喜一郎さんにも連絡を取れ。壮一から既に連絡がいってるかもしれんが……3月11日本番、そしてその後の逃走劇の準備を水面下で始める」
『あのバカを信じるんですか? 逃走劇? 』
「信じられるもんかよ。だがあいつの目は真剣だった。お前も感じただろう? あいつの予言が的中すれば、日本中が大変な事になる。あいつ自身もな。予言者であるあいつを狙うマスコミ、陰謀論者、そして数多の国家機関から、あのポンコツを俺たちが全力で拉致し、匿う。――いいか、親族総出で日本のケツを拭き、あいつのケツも拭くぞ」
タイムリープ予定の方は宜しければ是非本作最後までお付き合い頂いてからタイムリープして下さい。




