周りから最強と言われたおじさん、子どもを拾いまくる〜いい加減にしなさい〜
短編…1話完結です。ノリで書きました。続きはないです
「おーよちよち、こっちにおいで〜〜」
目の前にいるのは小さな女の子の子どもが3人。顔の似た子たち。
(三つ子か…?)
栄養失調からか、痩せ細っている身体に泥だけで破れた服。洗えば艶やかに光りそうな白、黒、灰色の髪色。
「……三つ子にしては髪の色がバラバラだな…」
怯える目の色は全く同じ形同じ目の色。
そう、怯えている。
柊夜朔45歳。牛乳を飲み続けて45年、気づけば身長は190センチになるほどがたいが良くなり、黒い服を着ることが多いからか周囲に熊と言われている。
だからだろうな、今日来た街では、道ゆく人たちからは若干避けられているのは。
「…そうだよなぁ怖いよなぁ」
そんな私は今橋の下で縮こまるひよこたちを眺めているわけだ。
来るわけないか。こんな大きい人間。しかも男。誘拐だと思われてるのかな。
「私は怖い人じゃないよ〜」
怪しさが増した。
どうしよう、何言っても無駄かもしれない。
とりあえず同じサイズになれるように子どもたちの前にしゃがみ込み、一定の距離から話しかけることとする。
右手でちょいちょい、と呼ぶように動かしてみたり変顔をしてみたりするが効果無し。
「…でも見つけちゃったしなぁ…」
嫁には怒られると分かっていても、それでもこの子達を放って置けない。まあ日が暮れてもいっか。
近寄ると3人の子どもたちは後ずさる。真ん中にいる灰色の子の目の意思は強く、後ろにいる二人に危害を加えるなら殺すというような殺意を感じる。
──まだ、生きたいと思う意志がある。
「おじさんと一緒に住まないかな?」
できるだけ優しく声をかける。殺気は決して足音も消す。
気配を消すことは仕事で散々やっている。慣れたものだ。
さて、どうしたものかな。
おぉ、すごいなこの子。
目の前に私がいたとしても、警戒が緩むのが常。何故なら私が気配を消すから、目の前にいると認識されなくなる。
後ろにいる二人の子がキョロキョロしているのがその証拠だ。
しかし、灰色の子だけは私と目が合っている。
──才能がある。暗殺者としての、才能。
ぞくりと、背筋が震える。何てこった、楽しいな。これだから拾ってしまうんだ。
灰色の子に向かって気配を消すのをやめて、目を合わせる。
「──私は君たちを育ててみたくなった」
「………?」
発声の仕方もわからない。と。
いや、教え甲斐がある。
自己紹介が先かな、と手を差し伸べて、挨拶をするために笑いかける。
「…私の名前は柊夜朔、夜朔さんと呼んでほしい」
「……」
ムッとした顔をしたこの子達の後ろに動く気配と殺気。
灰色の子どもはいち早く気付き振り向いた。
ああ、やはり才能がある。
けれど、ここは──
「大人の仕事だよ」
3人を軽く抱き抱える。嫌がられて暴れられて爪を立てられても構わないとすら思っていたのに、驚き過ぎて固まるひよこ達。
(あらかわいい)
殺気を飛ばしてきたやつから距離を置きつつ、気配を消す。
橋の近くの草むらに子ども達を隠せば、のこのこと出てくるバカども。
「どこだ!!?あのガキ共!!殺してやる!」
「殺すな、売るんだよ!」
ナイフを片手に出てきたバカとバカ。
物騒なもんを子どもの前に見せるとは…。
「君たち、あまりそういうのは振り回さないようにね」
「うわ!!?いつの間に…っ」
「何なんだおっさん!お前がガキ共隠したのか!」
何か喚いている男達はナイフを私に突きつける。
わざわざ気配を出してあげたんだから、バカな行動はやめた方がいいのに、素人だなぁ。
「そんなもの出して振り回してたら、」
とん。
軽やかに歩く。気配を消したり、出したりしながら男達の腹のあたりまでしゃがみ込む。
「は、あれどこに…」
「──ほら、こうして懐に入られる」
190の男から繰り出されるアッパーとは、どんなものなのだろうなぁ。
そんな気持ちのまま、男の顎をとりあえず強く殴っておいた。
ドッ…という鈍く重たい音ともに男が真上に吹き飛び、トンネルに突き刺さる。死んでるかもしれない。
まあ、いいさ。
「さて次」
「…ひっ、ひぃ!!!」
「うわぁあぁ!!」
目の前で仲間が突き刺さったのをみて、取り乱した男はナイフを振り回した。
素人が持っちゃダメなんだよナイフなんて、危ないんだから全く。
振り回したナイフが腕に刺さる。
「おや」
ぷつ、と切れる音。
「おっとっと…」
袖の中からハラハラと包帯がちぎれてしまう。と同時に、身体から蛍光色の液体が流れ落ちる。
「ば、ばけものぉ!」
「失礼だな、人間だよ」
「神様が腹に社を構えてるタイプの人間だ」
とりあえず目の前の男にも一発入れて殴っておく。
吹き飛んで同じように刺さった男を見送り、草むらで怯えていたひよこたちがいるか見ると、キラキラした眼差しが三つ、コチラをみていた。
「…あれ、そんな目で見られるとは…予想外かも」
ガバッと抱きついてきた3人を難なく抱き上げる。
「うーん、まぁいいか…」
──政府に戻り、子ども達を小児科に連れて行くために政府の廊下を歩いていく。行き交う政府の人たちからの視線が痛い。
ふと前を向くと和服を着た男が、歩いてるの見つける。
別の部署にいる友人──赤歳幻治郎が仕事を終えてきたのか、書類を片手に、廊下で出くわす。
「…また拾ってきたのか」
「かわいいでしょ」
「ほどほどにしてやれよ、小雪さん困ってたぞ」
だよなぁ、わかってる。わかってるんだけどねぇ。
「…包帯切れたのか」
「お、よくわかったね」
「液体が漏れてるよ」
振り返ると廊下に点々と落ちる蛍光色。
「一応それお前の血なんだから気にしろよ、ほら腕出して」
「ごめん、いつもありがとう」
「どういたしまして」
和服の袖から包帯が出てくる。
「いつも持ち歩いてんの?」
「たまたまだよ」
さらさらと筆で包帯に何かを書いた後、俺の腕にクルクルと回して行く。次第に治る液体に、不思議な感覚になる。
そうしてちゃんとした腕の形になるのだから、この男の能力はいつ見てもすごい。
「それじゃあ、小雪さんによろしく伝えといてくれ」
「了解」
幻治郎と別れて、小児科に入ると嫁がいた。
「…また拾ってきたがやね…」
「………つい」
怒る嫁を目の前にした時、いやー、実はぁ…なんて言えるわけもなく、謝るしかなかった。
「すみませんでした」
「…ほんっとに、いい加減にせんと怒るきね」
「でも小雪さん許してくれる…」
「許すけどぉ!私よりも、ほら!見て、職員が困っとるが!」
「もぉ!最強なのは能力だけにしてください大尉~!!!!!!!!」
「そうですよ、見てください大尉、あの子達の顔…!あなたが拾った子達のあの顔…!」
職員達の悲鳴を聞きつつも、奥を見るとまた拾っとるわ…という顔をした数名の子ども達。もはや諦めの顔。
分かってるね、さすが私の子達。
ぺしん、と小雪さんに叩かれる。
「いだっ」
「…これでチャラね、抱っこしたままそこに座って!」
拾った子どもが、私から離れないのも学習済みの嫁はそのまま診察をする。
「怖くないからねぇ、そうそう。大丈夫、怖いと思ったらおじさんの腕をつねりな」
「そうだよーおじさん最強だからつねっても痛くないから」
灰色の子は、やはり強い。まっすぐと小雪さんを見ている。
覚悟を決めている顔をしているのが見てわかる。それは小雪さんも分かったのか、灰色の子を見た後、私を見て仕方ないなぁと笑った。
「お口開けれる?」
ぱか、と開けた口の中を見て、うんうん、と頷いた小雪さんはそうして私を見る。
「…喉、誰かに焼かれとるね」
「…そう」
「つい最近かなこれは。炎症と火傷がひどい。よく生きとったね」
「…そっか」
「──血だらけで帰ってくるがはやめてね」
「…ふふ」
まぁ、もちろん殺すよね。
ちょうどよかったー、暗殺依頼受けてた人だった、いやー小児愛好家でしかも奴隷にしてたとかそんなの政府としては黙ってられないんだよね。
月明かり、殺した男の血を踏んで立ち上がる。周りにいた子ども達の怯えように、この男の仕業を察する。
本当に男の子から女の子まで子供になりきる前の子達しかいない。
うーん殺してよかったなぁ。
「よし!みんな政府が保護するからうちに来なさい!」
唖然とした小雪さんと、そのほか職員の皆さん。
子供を連れて行きたいから手伝ってと頼んだら来てくれた幻治郎とともにそんな皆さんの前に立つ。
「ごめん、拾ってきちゃった」
10数人の子ども達を後ろに控えさせつつ、小雪さんを見ると、プルプルと震えた後普段は出さないような声で叫ばれた。
「いい加減にしなさいって、言ったがは覚えとらんのか、あほ!!!!」
その日滅多に聞けない大声でちょっとほっこりしていたら横にいた幻治郎に強めに背中を叩かれた。
「ごもっともだぞよく聞いとけよバカ」
「反省の色なし!!幻治郎さん殴ってええきね!‼︎」
「まさか嫁さんから許可を得るとは…よし、一発行っとくか」
「いかないいかない」
「あと!」
ビシッと指を刺され、殴られそうな私に向かって小雪さんが怒った顔をする。
「三つ子ちゃんの名前は灰色の子が、朝ちゃんで、白い子が昼ちゃんで、黒い子が夜ちゃんって名前にしたきね、三つ子ちゃんと意思疎通とりながらやったらその名前がいいって言われたから!いい?!」
「はい」
「今日家に入るの禁止!!」
「え!なんで…」
「血だらけで帰ってきたらいかんってことも言ったのにそのまんま帰ってきたから!」
「あ」
「あーあ」
子ども達だけ招き入れて俺と幻治郎が廊下に立たされる。幻治郎は数分俺を見た後軽く肩を叩いた。
「…まあ、程々にしときなよ、あほ」
「うう…」
じゃあね。と言って立ち去る幻治郎の背中を見送りながら悲しい気持ちになる。今日のご飯どうしよう……。
そうは思うのに、やはり私は拾うことをやめられないんだと思う。
なんて言ってもこうやって拾っては育てて、20数年、小雪さんに怒られながら反省せずにやり続けているのだから。
廊下に立たされるのも仕方ないことだったのである。
「小雪さん〜、ごめんなさーい!」
「許しません!」
おしまい




