憧れ
掲載日:2026/05/21
かつて僕は強さについて、激しい憧れがあった。
それは、漫画やフィクションのせいもあるが、強いことを良しとする、昔の風潮のせいでもあった。
『強くなりたい』
そう一人でそう願っていた。
その為に何をしたらいいのか、当時の僕はなんにもわかっていなかった。
「お兄ちゃん、また泣いているの?」そう妹が言う。
僕は、なんにも言いたくない。妹はときどき意地悪で、僕のことを笑っていた。
誰も僕のことを認めてくれない。
それは当然のことだった。
僕は一人では何一つ成し遂げられなかった。
ある日僕はいつも通りに本屋で本を探していた。
そこの棚に空手の本があった。僕はそれを読んで、空手をやることに決めた。
「きみ、まだまだだね。」そう先輩の空手家がいう。
僕は黙る。男は言い訳なんてしてはいけない。そう師匠に習った。
男は黙って、仕事をするだけだ。
そうして時が流れていった。
僕は18年後に、世界一速い突きを手に入れた。
それが僕の自慢だが、稽古の相手は誰もできなくなった。
これからまだまだ強くなる。
『見ていて下さいね』そう想い僕は、仕事をする
見ていてね、と言いたい。




