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第2話 カルロスのパーティー

最初のパーティーは、三人組だった。


リーダーのカルロスは剣士で、二十二歳だった。肩幅が広く、声が大きく、よく笑った。おかしいことがあると、まず鼻から息を吐いた。それから声が出た。照れているときは後頭部を掻いた。剣の柄に小さな傷があった。


「子どもの頃、初めて買ってもらった剣なんだ。捨てられなくて」


「そうですか」


「笑うか?」


「笑いません」


カルロスは少し間を置いてから、鼻から息を吐いた。それから笑った。


「お前はそういうやつだな」


「そういうやつ、ですか」


「うん。そういうやつ」


何を指しているのかはっきりしなかった。カルロスも説明しなかった。ただ、悪い意味ではないような言い方だった。


好きな食べ物は硬いパンだった。


「歯ごたえがあった方が食った気がする」


「柔らかいパンは好きじゃないですか」


「嫌いじゃない。でも食った気がしない」


そう言って、宿の夕飯に出た固いパンを二枚取った。満足そうだった。



もう二人は、ゴットとシーナだった。


ゴットは二十四歳の斧使いで、体が大きく、口数が少なかった。食べるときは黙って食べた。戦うときは黙って戦った。特に感情を表に出さなかったが、カルロスが妙なことを言うと、少し眉が動いた。それだけだった。


シーナは十九歳の魔法使いで、詠唱が早かった。よく本を読んでいた。宿に戻るとすぐ本を開いた。読みながら何かを書き留めた。何を書いているのかは、他の誰も知らなかった。


マモルは荷物持ちと地図係として雇われた。


「戦えないのは分かってる。でも道を覚えてくれると助かるんだ」とカルロスは言った。「俺、方向音痴で」


「鼻から息を吐いたあと笑う人間が方向音痴なのか、と思いました」


「それ、どういう意味だ?」


「特に意味はないです」


カルロスが鼻から息を吐いて、笑った。



戦闘が始まると、マモルは後ろに下がった。


全部を見ていた。全部を、覚えていた。


カルロスの剣の軌道。右から入るときの踏み込みの角度。左に回り込むときの重心の移し方。二撃目の前に必ず一瞬顎が引く癖。全部、覚えた。


ゴットの斧の振り方。ためを作るときの肩の位置。横薙ぎのときと縦に振り下ろすときで、足の向きが変わる。


シーナの詠唱の速さ。集中しているときは口の動きが小さくなる。連続で詠唱するとき、二回目の前にほんの少しだけ間が入る。


使えなかった。


全部覚えた。使えなかった。後ろで縮こまって全部見ていて、全部頭に入っていて、それでも何もできなかった。


一度だけ、声を出しかけたことがあった。


カルロスが二体同時に相手をしていた。右の一体を押し込んでいる間に、左の一体が回り込もうとしていた。カルロスの視線は右に向いていた。気づいていなかった。


マモルは口を開いた。


「左——」


カルロスが自分で気づいた。左に半歩動いて、剣を流した。間に合った。


声は届かなかった。届く前に終わっていた。


「まあ、いてもいなくても同じか」


ゴットがある夜、酒を飲みながら言った。悪意はなかった。ただの感想だった。


マモルは頷いた。


「そうですね」


否定できなかった。



三日目の昼飯のとき、カルロスが言った。


「お前、メシ食うの遅いな」


「そうですか」


「気になってるわけじゃないけど、なんか」


「なんか、何ですか」


「ゆっくり食うよな、と思って」


「急いで食べる理由がないので」


カルロスは少し考えてから、鼻から息を吐いた。


「そういうやつだな、やっぱり」


また同じことを言った。マモルは今度も、何を指しているのか聞かなかった。


その夜、カルロスが後頭部を掻きながら言った。


「明日、Bランクのダンジョンに入ろうと思う」


「いつもより一段上です」


「分かってる」


「問題はありますか」


「あると言えばあるし、ないと言えばない」


「どちらですか」


「行けばわかる」


そう言って、硬いパンをもう一枚取った。満足そうだった。


翌朝、ダンジョンの入口の前でカルロスが振り返った。


「お前は後ろにいろ。声だけかけてくれればいい」


「声を、ですか」


「気づいたことがあったら言え。見てるだけより使いようがある」


マモルは少し間を置いた。


「試してみます」


カルロスが鼻から息を吐いて、中に入った。



Bランクのダンジョンは、Cランクより暗かった。


天井が高かった。足音が響いた。魔物の気配が違った。動きが速く、読みにくかった。


カルロスは慎重に動いた。ゴットが横を固めた。シーナが後方から詠唱した。


マモルは後ろで全部を見ていた。


通路の幅。天井の高さ。魔物の動きの癖。左の壁際に出るとき、必ず一瞬立ち止まってから動く。そういう細部が積み重なっていった。


カルロスが前方の一体と打ち合っていた。後方から別の一体が来た。


「後ろ、三歩」


声が出た。


カルロスが三歩下がった。魔物の爪が空を切った。カルロスが体勢を立て直して、剣を入れた。


振り返らなかった。ただ、少し肩が動いた。


戦闘が終わってから、カルロスが言った。


「さっきの、助かった」


「覚えていただけです」


「それでいい」


それだけだった。


マモルは何も言わなかった。頭の中で、さっきの場面を繰り返した。カルロスが三歩下がったこと。爪が空を切ったこと。


使えた。


初めて、使えた。


ただそれだけのことだったが、消えなかった。



二ヶ月目に、カルロスが右腕を切られた。


深くはなかった。ただ縫わなければならない傷だった。神官のいる詰め所で処置してもらって、包帯を巻いて、その夜はもう動けなかった。


「カルロス、大丈夫か」とゴットが聞いた。


「大丈夫だ」とカルロスが言った。


それだけだった。


マモルは宿の部屋の隅で、それを聞いていた。


翌朝。カルロスは一番早く起きてきた。右腕に包帯が巻いてあった。動かすと痛そうだった。食堂に座って、いつも通り硬いパンを取った。右腕で持った。


少し、顔が歪んだ。


それだけだった。


「痛くないですか」


「痛い」


「柔らかいパンにしたらどうですか」


カルロスは鼻から息を吐いた。それから笑った。


「食った気がしない」


包帯の上からゆっくり噛んでいた。痛そうだった。ただ、いつもと同じ顔で食べていた。満足そうだった。


三日後には包帯が外れた。七日後には全部、使えるようになった。カルロスはそれをあまり気にしていなかった。


マモルはその傷の治っていく過程を全部、覚えていた。


包帯の巻き方。縫い目の数。三日目の朝に少し色が変わったこと。七日目に動かしてみて、問題ないと確認したときの顔。


覚えた。使えなかった。ただ消えなかった。



四ヶ月が過ぎた。


マモルはカルロスのことをずいぶん覚えた。


笑い方だけじゃなかった。朝一番に起きてきたときの顔。眠そうで、少し不機嫌で、それでも仲間に声をかけることを忘れない。戦闘中に仲間が追い詰められたとき、自分が前に出る前に一瞬だけ状況を確認する目の動き。確認したら迷わなかった。


硬いパンへの執着は本物だった。柔らかいパンしか出ない宿に泊まったとき、少し黙って食べた。それだけで、珍しく黙っているのだと分かった。


剣の柄の傷は、よく見ると小さく「K」と刻んである。子どもの頃の自分がやったのだろう。聞かなかった。聞く必要もなかった。


ある夜、食堂でカルロスが言った。


「お前、最近うまくなったな」


「何がですか」


「声の出し方。戦闘中」


「覚えているだけです」


「それでいいんだよ」カルロスは硬いパンを一口噛んだ。「俺たちが動いて、お前が覚える。それでいい」


マモルは何も言わなかった。


「お前がいると助かってる。本当に」


後頭部を掻いた。照れているときの癖だった。


マモルはそれを、覚えた。



四ヶ月目に、カルロスが死んだ。


Bランクダンジョンの第五層だった。


新種の魔物だった。来た方向が読めなかった。マモルが気づいたとき、すでにカルロスが前に出ていた。


「走れ」


それだけ言った。声が大きかった。いつもより大きかった。


マモルは走った。ゴットが走った。シーナが走った。入口まで逃げ切って、振り返ると、カルロスはいなかった。


ゴットが一度だけ入口の方を見た。それだけだった。


シーナは本を持ったまま立っていた。


マモルは何も言えなかった。


声を出せばよかった。覚えていたはずだった。新種だったから読めなかった。読めなかったから間に合わなかった。


そういうことだった。


カルロスの剣の柄の傷を思った。「K」という文字。丸い、下手な字だった。

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