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核シェルターに入りたければ合い言葉を言え
日本には公共の核シェルターが無い。
あるかも知れないがそれは多分、与党の政治家や上級市民の為の物。
一般市民の為の公共の核シェルターは存在しない。
それを憂慮したある成り上がりの金持ちが、資産を投じて全国に公共の核シェルターを建設することにした。
「此の核シェルターには日本人なら誰でも入れる。
だが、日本に来て我が物顔で伸し歩き日本人を食い物にするC国人は入れたく無い、だから合い言葉を作った。
その合い言葉を言えない奴は、核シェルターに避難する事は出来ないようにする」
核シェルターを自分の資産を投じて全国に次々と建設している金持ちは、そう宣言する。
今、東京副都心に最初に完成した新宿第1核シェルターのオープンセレモニーが行われようとしていた。
核シェルターの前に集まった、核シェルターを建築している建設関係者や報道関係者それに招待された大勢の人たちに、合い言葉が書かれた印刷物が配布される。
テープカットが行われ、金持ちの男が核シェルターの扉の脇に設置されているマイクに合い言葉を囁やくと扉が開いた。
金持ちの男に続いて彼の家族や同郷の者たちが次々と、合い言葉をマイクに囁やき核シェルターに入って行く。
だが、核シェルターに入れたのはそこまでだった。
彼らのあとに続いて入ろうとした建設関係者や報道関係者は全て、マイクに合い言葉を囁いた途端にマイクの上に設置されているスピーカーから罵声を浴びる。
『合い言葉が違う! お前! C国人だろ! 核シェルターに避難したければ自分の国に帰ってそこのシェルターに避難しろ!』
金持ちは東北のド田舎出身でメチャクチャに訛っているズーズー弁、だから配布された印刷物に書かれている合い言葉を普通の日本人が読んでも、受け付けてもらえないのであった。




