ウンディーネの囁き
それは、とある熱い午後の出来事だった。
夏休みなのにもったいない、という考えがまったくなくて、私はただエアコンが効いてる部屋に閉じこもって、昼寝をしていた。
二つ上の姉も、自分の部屋で昼寝をしているはず。四つ上の兄は、書斎でパソコンを使っていた。
リンリンリン。リンリンリン。
と、リビングの電話が鳴り始めた。
私は寝ぼけたまま、部屋から出て、電話に出た。
うん。うん。と、答えたと覚えていた。
会話が終わったあと、私は部屋に戻り、二度寝をした。
「そういえば、午後に電話が来ただろう?誰から?」
と、兄さんはご飯を食べながら問う。
しかしながら、私はまったく覚えていなかった。
電話に出たことや、窓の外の景色も、鮮やかに覚えているのに、肝心な内容が思い出せなかった。
ただ、懐かしい気がした。
いや、懐かしいというより、安心感、かな。
あれは、誰の声だろう。
私より少し年上の、男性の声だった気がする。
電話のことはすぐに忘れられ、再び日常生活に戻った。
でも、確かに、それ以来か。
寝つきが悪くなった。
よく寝坊するし、なんなら昼寝ところが、授業中もしょっちゅう寝ている私ながら、眠れなくなった。
寝ようとすると、胸騒ぎが収まらなくなってしまう。
アニメではよく、暖かいミルクを飲めば眠れる、みたいなシーンがあるので、私もそれを真似してみた。
確かに効いたが、両親に、牛乳高いから我慢して、と言われちゃった。
真夜中に一人で、ぼーと天井を見つめていた。
そしたら、ぽつんぽつんと、小さな雨粒が川に落ちたみたいなの音がした。
下着、手洗いだからね。絞っても、結構水残るし、よくあることだ。
でも、なんだか音の根源が違う。ベランダというより、お風呂からのような気がする。
気付いたら、私は扉の前に立っていた。
真っ暗な部屋の中で、足から伝わる触感。どうやら部屋中が水まみれになったらしい。
そして扉の向こう側、お風呂から、また聞こえた。
ぽつん、ぽつんと。
こんな日々が続いていた。
どんだけ鈍感な私でも、さすがに気付いた。普通じゃないと。
心霊現象かな?だとしたら、お化けさんは私に何を伝えたかったんだろう。
驚かす感じでもないし、導く気配もまったくない。
と、考えながら受験勉強をしていた。
そしたら、夢を見た。
人は一生、何度も夢見るし、夢の種類もきっと多種多様。
二度寝すれば続きが見えるかも、と思ったことも少なからず1回2回くらいあるんだろう。
でも、同じ夢だったら?
そう、私はそのとき、過去に一度見た夢を見たんだ。
一人でラーメン屋を経営している男性のこと。
注文以外の繋がりなんて全然ないし、そもそも夢の中でしか会ったことがないから、仕方ない。
と思ったが、気付いたら、夢の中のお店も水まみれになった。
私はただ立ち尽くすんで、彼に問いかけた。
行かないの、と。
彼は、かなり動揺した顔で、私を見つめていた。
「いいの?」
「うん」
安心させたかったか、私は微笑んでうなずいた。
どうして私に許可をもらおうとしたのか、その理由を知らないまま。
私は彼から目を逸らさないまま、目を覚めた。
もちろん、部屋は水まみれになっていたなかった。何一つ変わらなかった。
いや、変わったか。うん、変わった。
だって、彼と会話したその夢を見たあと、部屋が水なみれになったり、水が落ちている音を聞こえたり、そんな夢二度と見なかったから。
うちは、私の高校入学をきっかけに、別のアパートに引っ越した。
そして数年後に、雑談で、昔住んでいたその家の話をしていたら、
「あそこ、やばくない?」
と、姉さんがさらっと言った。
「何が?」
「気付かなかったの?そこに住んでいる間、みんな寝つき悪くなったよ。君も、牛乳とかを飲まないとダメになったじゃない?」
私はまったく気付かなかった。
私だけじゃないんだ。
「不気味だからさ、本当はすぐにでも引っ越そうと思ったんだけど、一時改善されたことがあるから、仕方なく君の卒業を待っていたんだ」
「そうか…知らなかった」
「入試に集中させたいかもね。でもさ、改善されてから引っ越すまでの間、いつも眠くなると思わなかった?」
言われてみれば、の感じで思い出したが、実際はもっと厳しい状況だったのはず。
そう、水まみれの夢を見なくなって以降、よく眠れるようになれた。
しかし、眠る時間がどんどん延ばして、目が覚めてもあまり元気がなかった。
家族全員疲れているなーと、そのときの私はそう思った。
なるほど。だからか。
だから私に許可を求めたか。
結局、なんらかの理由でみんなが眠くなって、それを修正するために、彼が手を出したが、度が過ぎて、みんな寝つきが悪くなった。
という考察を、検証しようともできないまま、今に至った。
最近忙しくなって、寝つきがまた悪くなったことで、この話を思い出した。
そういえば、初めて彼がいる夢を見たとき、私そのアパートではなく、実家に住んでいたはず。
彼は今でも、私を見ているのかな。
こんにちは、こんばんは。雨上がりです。
あまり怖い話ではありませんが、実話混ぜりでお届けしました。
ホラー小説、あまり見たことがなくて、書くのも今回が初めてなので、大目に見てくれると嬉しいです。
ちなみに、最初は貴船神社を背景にしたかったのですが、貴船神社大好きなので、ホラーを書いても全然怖くなれませんでした笑。
これからもよろしくお願いします!