欠片300.『始まりの 木 』
欠片300.『始まりの き 』
【オリジン101年──アース・オルテ 0歳】
【その日 惑星オリジンにて
──双子のエルフが誕生した】
【兄の名は アース・テオル
妹の名は アース・オルテと名付けられた】
【そして "精霊の加護"を受けたのは
兄──テオルだけだった】
【妹──オルテは】
【エルフ族にとって 厄災をもたらす存在として】
【民の皆から恐れられた】
【しかし 両親は諦めきれなかった】
【幸せを願って 賢者と名乗る男性のエルフ】
【ミトスに相談を持ちかけた】
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月が隠れる森の中───
フードコートを被った夫婦のエルフは、白い大きな布を抱え、フードコートを被った男性のエルフと会話をしていた。
『お願いします。お礼ならなんでもします!』
『お願いしますッ!この子に……魔力を…!』
『……いいですよ。』
『その代わり、少しの間この子をお借りしても?』
暗闇でに舞う木の葉っぱで顔が見えない男性のエルフは優しい声色で答える。
『本当ですか!ありがとうございます!』
『ああ、賢者様。どうか、娘をどうか……
よろしくお願いします……。』
エルフの夫婦は喜ぶと、周囲の天候は悪化し
雷が鳴り響くほどの大雨へと変わっていった。
───ザァァァァ──……
──ゴロゴロ──ゴロロ……!
────"ピシャァァァン"!!!
『ええ。お任せ下さい。』
雷の光によって、ミトスのフードの隙間から見えた口元は、ほんの少しだけ笑みを浮かべていた。
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【オリジン107年──アース・オルテ 6歳】
【後の──南側に位置する梣秦皮】
『な……』
『なんじゃ、"ソレ"はぁぁ〜〜〜!!!』
集落の広場に響く叫び声に、周囲のエルフ達も動揺し、ざわめきかえっていた。
『えっ?』
『卑しい……膨大な魔力…。
あぁ……悍ましい………』
『"ソレ"を里に持ち込むでないッ!!』
『あの……ソレって……
村長…。まさか………』
『ヒィやぁっ!!く、こっちに来るなッ!』
『"この子"は私たちの子ですよ。
ほら、オルテも魔力を……!』
『加護を受けれたんですよぉぉ!!』
小さな少女の手を握り、エルフ族の族長の元へ迫り来る夫婦の目元は大きな隈が出来ており、その顔は疲弊していた。
『ひぃぃ……化け……物…』
『ヒィィィヤァァァァアア〜〜〜!!!』
叫び出すエルフの族長は、慌てて周りのエルフに指示を出していた。
『こ、"ころせ"ぇっ!!あのバケモノを!!』
──ザワザワ
『え、殺せって……』
『でも、村長のご命令だぞ。』
『あんな幼い子を…殺す?』
『でも、村長はバケモノだって…』
───ザワザワ
───ドサッ。
尻餅をつく族長は、しわがれた細い腕を震わせながら伸ばすと、オルテを見つめながら人差し指を差していた。
『お主ら……分かっておるのか…!?』
『その"バケモノ"を………育てるというのか…!』
『バケ…モノ?』
──バッ。
『何を言って……そんなモノどこに…』
──クルッ。
一瞬だけ振り返るオルテの父親は、すぐに振り向き直すと笑みをこぼしていた。
『そうだ!聞いて下さい!私達の娘は……
やっと…家に帰れるんですよ…?ほら…』
『宴の準備でもしなくちゃ……
村長も!皆さんも、さぁ!』
『オルテの、めでたい日じゃないですか!!』
──ボソッ。
『………殺さなければ…』
《だ…ダメじゃぁ…コヤツ。
一体何があったというのじゃ…》
《この魔力"量"……これは…生かしておいたら──》
《絶対に──いかん!!!》
『な、なんとしても殺すのじゃぁぁ!!』
『皆の者!よいか……
邪魔をするなら、二人も殺して構わん…。』
『これは……村の為じゃ。
皆大切な場所を!家族を守る為に──』
『あの娘を殺せぇぇぇえええ〜〜〜!!!!!』
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燃える家々と木々の鎮圧にかかるエルフと、武器を構えるエルフが何かを探し回る中──
少女は怪我をしながらテーブルの下に隠れていた。
『……ハァ……ハァ。』
《なんで…みんなわたしを……》
《こわいよ。ママ。パパ。》
───バッ!
煙で黒く汚れた白かったテーブルクロスが捲り上がると、鮮やかな緑色の長い髪をした少年が顔を覗かせる。
その姿はオルテそっくりで、顔立ちも似ていた。
『……ここにいたのか
逃げよう。オルテ。』
『あなたが……テオル、おにい…ちゃん?』
『うん。そうだよ。』
『ようやく会えたのに……
こんなことになるなんて。』
『でも、ぶじで良かった。』
震えながら涙をこぼすオルテに、テオルは手を差し伸べていた。
『わたし……こわいよ。』
『パパとママも……』
『かあさんととうさんはきっと大丈夫。』
『ボクが後から探すよ。だから──』
──ザッ、ザッ。
『しっ。誰か来る。
いまはここからはなれよう。』
『うん。』
人が近づく気配に気付いたテオルはオルテを連れ、家の裏口から逃げ出していた。
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森の中を走る2人は大人のエルフによって追いかけられていた。
『──ハァ……ハァ。
あと少しで森の反対側だ!』
『がんばるんだオルテ!』
『……はぁ…おにいちゃん…』
『もう、あしが……』
──ガッ!!
『……あっ!』
───ドサァァ
『あぅっ…』
木の根につまづいて転けるオルテは膝を擦りむいており、足の裏は赤くなっていた。
『……ぅぅ。いたいよぉ。』
『もう、あるけない…』
その時、後方から複数の声が聞こえてきていた。
『いたか?』
『いや、お前はあっちを探せ!』
『見つけ次第殺すんだ!』
『──!!』
『マズイ…!もう追っ手が』
声に気付いたテオルは、近くにあった大きな木の幹に空いた空間にオルテを運ぶと、草木を集めて覆うように隠し始めた。
『いいかい?オルテ』
『おにいちゃんが時間をかせぐから。
しばらくのあいだ、ここに居るんだ。』
『いや〜あ。ひとりにしないでっ。』
『また、くらいおへやみたいに……
……ひとりはいや…。』
『つめたくて、あの声が…ひぃぅ…!
きこえるたびに…うぅぅ……。』
震えながら泣き続けるオルテに、テオルは手を握ると優しい声で呟いた。
『………。』
───ギュッ。
『大丈夫だ!にいちゃんがなんとかしてやる!』
『ほら、にいちゃんの顔をみて。』
『へへへっ!にぃ〜〜!』
満面の笑みを見せるテオルに、オルテは泣き止んでいた。
『大丈夫。なにもこわくないよ!』
『つよく生きて、生きのびるんだ。』
『そしたら、いつかしあわせがやってくる!』
『……しあ…わせ?』
『そうさ!』
『いっぱい遊んで』
『いっぱい笑って』
『大きな木のテーブルを囲んで……』
『家族みんなでご飯を食べるんだ!』
『だから、にいちゃんがオルテをまもってやる!』
『みんなを説得してくるから
ここで、まっててくれるか?』
『……うん。わかったぁ!』
そして、覚悟を決めた表情に変わったテオルは、その場から立ち去っていった。
────ポツ。
──ポツ──ポツ。
ザァァァァ─────────………
雨が降り始め、木の幹の中に隠れるオルテは、意識が薄れゆく中でかすかに声を聞いていた。
『……やくそく…だよ。』
"ザァァァァ"─────
『……たぞォッ!あそこだー!』
『……も長い!緑色だ!』
──────"ザァァァァ"──────
『……ツを……せェ!!』
─────"ザァァァァ"………
『みんなで……いっ…しょに…』
──ドサッ。
【数日後──】
【エルフの集落にて
三体分の遺体が吊るされた】
【災いをもたらす少女は死んだ】
【──と エルフの里の民は安堵し】
【森に隠れる少女は──】
【ひとりになった】
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【2週間後】
──ザッ、ササッ。
『……ぅ……ぁぅ……』
照りさす日差しの下、木の幹から横たわるボロボロで痩せこけた少女の元に、1匹の小さなリスが現れていた。
───ポトッ。
────ザッ、サササッ、ポト──ポト。
『……ぅぁ……ヒュー……』
《なん…だろう……》
《おにいちゃん……パパ……ママ……》
《……どこにいっちゃったの?》
──ピチャ。──ポトポト。
『……──!』
少女が目を開くと、目の前には小さなリスが葉っぱに乗せた水滴を口元へ運ぶ姿が見えていた。
『……あなたは……』
少女が目線を動かすと、顔の周りには小さな木の実がたくさん置かれてあった。
──シュビッ!タタタタッ!
少し離れた木の枝を登っていくそのリスは、真っ赤で白い斑点があるキノコを食べながら少女を見つめていた。
『………。』
グギュルゥゥゥ〜〜〜〜〜
『…………』
《おなか……すいてる…》
『……はむ…。』
オルテは目の前の木の実を見つめると、腕を震わせながら伸ばして掴んで口に入れた。
『……おい…しい。』
──ポロ。
『……ふぅっ…はむ。』
──ポロ。ポロポロ。
『ふぐっ……ぅぅ。はむっ。…はぁ…。』
──ポロ。ポロ。
『おい…しい……よぉ……うぅぅ…。』
『………。』
鼻水を流しながら泣く少女に、木の枝の上から眺める小さなリスは一晩中そこに居続けていた。
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【3日後】
オルテはかろうじて動けるようになっており、毎日木の幹の中から、小さなリスに向かって話しかけるようになっていた。
『ねぇねぇ。あなた、なまえはあるの?』
『キュキュッ?』
……ポリポリ。……ポリポリ、ポリ。
オルテの声に首を傾げるリスは、相変わらずキノコを食べていた。
『そのキノコ、おいしい?』
オルテの問いかけに、リスはキノコを遠ざけるように抱えると、睨みつけるように威嚇をしていた。
『キュキュ──!!!』
『…ぷふ。あははっ…!』
『とられたくないくらいすきなんだね。』
『とらないからだいじょうぶだよ』
『キュキュゥ〜!』
安堵したかのように笑顔になったリスを見て、オルテは名前を付けていた。
『──ラタトクス』
『キュゥ?』
『あなたのなまえ』
『あのへやにいたとき……
きいたことがあるんだ。』
『そのどうぶつは、まえばがおっきくてね。
どんなものにも穴をあけられるんだよ?』
『まえばだけだけど、おなじだもん。ふふっ。』
『どうかな…?』
『…………』
『キュ〜〜〜!!キュキュッ!』
──バシ!バシ!
喜ぶ小さなリスはオルテの頭の上へと登ると、満面の笑みで頭を叩いていた。
『へへへ。よろんでもらえたみたい』
『わたしはオルテ。よろしくね』
『ラタトクス!』
『キュキュ〜〜!!』
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──ザザ、ザザ……
『…ッ……』
《まだ…あしのうらが…》
数日後、足を引き摺りながらようやく歩けるようになってきたオルテは、森の中を彷徨っていた。
そして、草むらで木の実を探していると、ボロボロのジョウロを見つけていた。
──ガサガサ……ガササ
『ん…?』
『なんだろう…これ。』
それは、ボロボロにメッキが剥がれて、錆びついたジョウロだった。
『ラタトクスならしってるかな?』
───"ゾァッ"───
『……』
その時、森を抜けた光が広がる場所の方を見つめるオルテは、そのジョウロを持ち帰ることはせず、ひらけた場所へと辿り着くと──
ただ一点。
大地の真ん中に生えている
"小さな木の芽"
を見つけていた。
そして、その木の芽のそばに近づいていくオルテ。
──ザリ……ザリリ……
『………!』
オルテが目を見開きながら目にしたのは、今にも枯れてしまいそうな──茶色く変化し始めた小さな芽だった。
しゃがみ込んで膝に手を乗せながら木の芽を見つめるオルテは呟く。
『……きみも、ひとりなの…?』
辺りを見渡すオルテは、直径30メートルほどの円形の大地を見渡していた。
その範囲に存在する植物は全て枯れており、ただその芽だけが姿を残していた。
『……どうしよう…』
必死に考えるオルテは、先ほど見つけたジョウロのことを思い出す。
『おみず……あげなきゃ。』
『でも、どうやって…』
『あっ!』
立ち上がったオルテは、足を引きずりながらジョウロがあった場所へと向かっていった。
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『あった…!』
『……でも……おみず』
草むらに置いてあったボロボロのジョウロを手に取ったオルテが困っていると、ラタトクスが姿を現していた。
『キュキュゥ!』
『ラタトクスっ!』
『きょうははやいね。なにかあったの?』
『キュキュ。キュウッ〜!』
オルテの持つジョウロを指差すラタトクス。
『ジョウロがどうかしたの?』
ラタトクスは四足歩行になると、顔だけ振り返ってオルテを見つめていた。
『もしかして……』
『おみずのあるところがわかるの?』
『キュウ〜!』
ラタトクスが走り出すと、オルテもゆっくりとその後をついて行った。
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夕暮れになる頃──
オルテはヘトヘトになりながらも大きな湖面を眺めていた。
『──きれい』
オルテの瞳に映っていたのは、オレンジ色の夕焼けの光が、波打つ水面の上でホシクズのように眩しく散らばる湖面の姿だった。
───ポト。───ポトポト。
『キュキュ!』
──バッ!!
オルテが感動している後ろで、ラタトクスが木の枝の上から木の実を地面へと落としていた。
音に気付いたオルテが振り返ると、ラタトクスはオルテの胸元に向かって飛び移った。
──バフ!!
『わわっ!』
『あぶないじゃん!もぅ〜。』
『キュキュッ!』
『ラタトクス……ありがとう!』
笑顔で顔を上げるラタトクスを見て、夕日に照らされるオルテの笑顔は美しく輝いていた。
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辺りが暗くなり、オルテとラタトクスは森の中に入ると、細長く縦に平べったい木の根と根の間に座ると休んでいた。
『きょうは、ここでやすもう。』
『キュウ〜。』
『あした……おみずをとどけてあげなきゃね。』
『…………。』
うずくまるように眠りにつくオルテの側で、ラタトクスはオルテの顔を見つめた後に眠りについた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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[今回の一言♩]
300話の内容を1万字でもう少し先まで書こうと思ったんですけ
全然足りなかったので、三、四分の一くらいにしました。




