欠片27.『己の意志』
欠片27.『己の意志』です!
【アストラとのサーチとの鍛錬より南東327km】
(進行1098km 残り1632km)
3人は小さな村に立ち寄っていた。
『小さな村だね〜』
『今晩、寝泊まり出来るかもしれないし』
『少し立ち寄ってみようか〜』
「そうだな。」
ユリニトの提案にアストラが賛成した後、すぐにサーチが質問した。
「な、なぁ、まだ村って存在してたのか?」
『ん?どういうことだい〜?』
「いや、機屑物のせいで人類は要塞に隠れ住んでるはずだろ?」
一瞬の間を置くユリニトは、サーチに確認をとり始めた。
『………』
『あ〜〜サーチくんは、今まで外の世界には出たことなかったんだよね?』
「うん」
『ん〜……』
サーチの返答に言葉を詰まらせたユリニトはアストラの方を向いた。
『……えっと〜…。』
「………。」
するとアストラは頷き、それを確認したユリニトは話を続ける。
『この世界の人類は、全員が要塞に隠れ住んでるわけじゃないんだよ』
『ルインルーナ王国の国王によって、大要塞ならび各要塞の統治が行われてね。』
『一定の奉納金を納めなければ、暮らすことができないんだ。』
『まあ、ボクみたいな商人は別だけどね〜ハハ』
『商人って仕事が好きでやってるし♩』
おちゃらけたような表情から、真面目な表情へと直ぐに切り替えて話を続けるユリニト。
『けど、それが出来ない人達は……いまだにこの世界の外に住んでいて、安全は確保されていないんだよ。』
「なっ……それじゃあ」
『うん……でも、地上に壁を作って築いている要塞も存在してて、その壁が壊されないって保証もないから、一概には安全とは言えないし』
(鉄屑要塞みたいな感じか)
『それに、三ヶ月以上前の大災害みたいなことがあったからね〜必ずしも要塞に住むことが正しいとは言い難くなったけどね。あはは。』
(………。)
『あと、小さな村には新聞も届かないから、ルインルーナ王国が無くなったって知らせも届いてないんじゃないかな〜』
「そう、だったのか……。」
ユリニトの話を聞いたサーチは何かを考え、俯きながら呟き始めた。
「オレは恵まれてたのかな…」
・・・・・・・
「生まれた時にはもう両親はいなかったんだ。」
「気づいたらツベチカのおやっさんのとこにいてさ……」
「オレの親はツベチカのおやっさんだ。」
「本当の両親は顔さえしらない。」
「おやっさんはオレのこと守ってくれてたんだよな。」
「……。」
黙って聞いていたアストラが答えた。
「そうだな。」
「オマエは仇をとるんだろ?」
「うん。」
「……だが、今はオマエが守れなかったものだけを見ていても仕方ない。」
「憎しみも深くなりすぎると自分を見失うことになるぞ。」
(そう…あの日のワタシのように。)
「これからはオマエが守りたいものを守ればいい。」
「復讐でも構わんが、最終的に決めるのはサーチ」
「オマエ自身だ。」
「……。」
「…うん。」
その様子を見てユリニトは、小声でアストラに話しかけた。
『今はもう少しだけ、考える時間も必要そうですね〜アストラさん♩』
「キサマは黙っていろ」
"ギロッ"!!
と、睨みつけるアストラ。
『ヒィッ!すみませんね〜アハハッ……』
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【小さな村 リトル村】
サーチの表情はまだ晴れていなかったが、3人は村の村長に会いに行くために村を歩いていた。
すると、家の外で作業をしていたおばさんが話しかけてきた。
「あら〜こんな村に立ち寄るなんて、旅のお方?」
『ええ、そんなところです。この村の村長さんはいらっしゃいますか?』
『今晩、寝泊まりする所を探してまして……お話しがしたいのです』
と、ユリニトが話しかけた。
「そうだったのねぇ〜、大変だったでしょう。ここから三軒目に見えるお家が村長の家よ〜」
「この辺りは危険だけど、ゆっくりしてってねぇ〜」
『どうも、ご親切にありがとうございます』
と、笑顔で答えるユリニト。
「ユリニトってさ、いつもはホニャ〜って感じの喋り方なのに、あんな話し方も出来るんだな」
『失礼ですね〜サーチくん。ボクはこれでも商人ですから♩言葉は大切な商売道具なんですよ?』
「おお〜!なんか良いこと言ってるぞ!」
『これでも腕利の商人ですからね!アハハッ♩』
「それ自分で言うのかよッ…!」
と、ずっこけるサーチであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
─裏メモ。─
鉄大猩久屑の由来。
鉄 アイアン
ゴリラ 大猩猩は日本語でゴリラという意味です。大猩々とも書きます。
そこを少しいじってつけました。




