欠片248.『ラタトクスの名の下に』
欠片248.『ラタトクスの名の下に』です!
【宴の森 会場の広場】
パトとフォックスに指示を出したギョクトは、森の中で魔力を放出していた。
《状況があかん!ヘル達が操られたんは予想外やッ。》
《それに。今は団長の許可がないぃ。『交信』もでけへん!早めに見つけな──》
『兎群ノ衆・脱走!!』
"ポッ"──"ポポ"。
──ポポポポポポンっ!!
ギョクトの周辺一体。半径25mを囲う円の中に、魔力の塊が一瞬にして現れた。
そして、ソレは形を変化させ始めると、ギョクトそっくりの姿へと変わっていった。
モコモコモコっ──。モココっ。
《なんもかんも、手遅れになるでぇ!》
『よし。アンタらも団長を探しぃ!』
『時間が惜しいんや!全力で見つけぇ!!ええなぁ!!』
バシュンッ──!!パシュシュシュシュシュ!!
全方向に散らばるギョクトの魔力で作られた分身達は、森の中を颯爽と駆け巡っていった。
《あのアホォ……》
《ほんま。》
空を見上げるギョクトは西側に向かって、森の中を駆けて行った。
《どこで何してんねん。》
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【南の山中 サーチ&ラタトクスサイド】
『こ……コレは…!!』
驚いた表情で声を詰まらせるラタトクスは、サーチが手に持つモノを見ていた。
ソレは、探していた幻のキノコ『木苺茸』だった。
『ホンマもんやんけぇぇぇ〜〜〜!!』
『にぎゃぁ〜はっはっはっは──!!』
『サーチはん!やりまんなぁ!』
"バシィ"!"バシィ"!!
サーチの背中をジャンプしながら叩くラタトクスに、サーチも喜んでいた。
「おっしゃあぁぁぁ〜〜〜!!コレでうまいキノコを食えるぜぇ〜〜!!」
『せやせや〜!ええかぁ?』
『このキノコはなぁ。料理したらそれはもぉ〜ウマいんやけど。』
『そのまま食べてもごっつうまいんやで!』
『どや?気にならんか?にぎひひひっ!』
「ま、まじか!」
「いいのか?食うぞ?」
『ええでぇ〜!あ、でもほんのちょびっとやで?オイラも食べたいんや〜!」
──シャクッ。
サーチが少しだけキノコをかじり、黙り込んだ後。
笑みを我慢しながら鼻の穴を大きく開けて興奮していた。
「うっめぇぇぇぇ〜〜!!!」
「なんだこれ!!最初はなんかピリッと来たけど、めちゃくちゃうまいぞ!」
『にぎゃっはっははは!せやろ!せやろ〜!』
『どれ、ワイも……』
──カリッ。
『んふぅぅぅ〜〜〜!!!コレコレコレ〜!!』
『この最初に来るパンチがたまらんねん!』
その時。近くの茂みから音が聞こえた。
すぐさまふたりは気付き、茂みの方を見つめる。
(なんだ?)
《なんや?絶対にあげへんぞ。》
──ガサガサ。ガサッ!!──ポンっ!
草の茂みから顔を覗かせたのは、1匹の白いウサギだった。
「ギョクト?」
『ギョクトやん!』
『どないしたんや?ん?ワレ分身か。』
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【ギョクト本体サイド】
森の中を走るギョクトの元に、サーチ達の元へと現れた分身から脳内に知らせが届いていた。
『──!!』
『見つけたんか!よーやったで!』
《よし。そのまま伝えなな。》
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【時は少し遡りサーチ&ラタトクスサイド】
『どないしたんや?ん?ワレ分身か。』
『……キュキュ──。ンッ。ンン。聞こえとるか団長。』
『おう。どないしたんや。分身まで使ーて。』
『大至急広場に戻ってくれへんか?』
『大変なことんなった。』
『?』
ラタトクスに話しかけるギョクトの説明足らずな言葉に、ラタトクスは困惑していた。
そして、隣にいたサーチは不思議そうに尋ねる。
「なぁ、なんでこのギョクト喋ってるんだ?」
『………。』
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【ギョクト本体サイド】
《あん?なんや。誰かおんのか?》
《誰や……。あのアホが、よそモンとおるなんて珍しい。》
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『ああ。せやったな。サーチはん。』
『コイツはウチの団の仲間や。』
『名前はギョクト。あ、コイツは分身やけどな。本体はどっか別のとこにおんねん。』
『んで、こっちはさっき同盟を組ませてもろた。サーチはんや!ごっつええやつやねん!』
『ギョクトも食うか?木苺茸ェ!』
ラタトクスの手に持つキノコを見た瞬間。
ギョクトは慌ててツッコミを入れた。
『ちょいまてぇ!オマエこれ……毒キノコやんけェ!!』
『まさか、ソイツに食わしたりしてへんよな?』
『ん?』
「へっ?」
「えぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜!!?」
「毒キノコぉぉぉ!?」
「ゲェッ!ペッ!ぺっぺー!」
サーチが頑張って吐き出そうとする中冷静に語るギョクト。
『ソレは『木苺茸』やろ?ニンゲンが食うモンは『木苺無茸』の方や。』
『見た目はまぁ多少にとぅ〜けんのぉ。』
『毒の致死率はほぼ百パーセントや。あんさん残念やったなぁ。なむあみ。なむあみ。』
「ま、まじかよ……オレ。こんなとこで死んじまうのか。」
「死因が毒キノコなんていやだぁ〜〜!!みんなにバレたとき……ぜってー呆れられるじゃんかよ〜!!」
サーチは妄想でアストラ、フロデューテ、サンの反応を想像していた。
【サーチの妄想】
「まさか。夢を叶える前に……毒キノコで死ぬとはな。」
「我が弟子として情けない。やはり、バカ弟子は一生バカ弟子のままだったか。」
『うそ……。死因が毒キノコなんて…。どんだけ情けない死に方なの。アタシは絶対こんな死に方したくない。』
『サーチ殿。まさか……キノコで死んでしまうなんて。男同士。この事は……墓場まで持って行きましょう。』
【終わり】
「………や、やべぇ…。」
「あぁぁぁ〜〜!!いやだぁぁ〜〜!!」
「オゲェェェ〜〜〜!!!出ろ!出ろー!」
のたうち回りながら叫ぶサーチを2匹は見つめていた。
『なんやアイツ。めっちゃ元気やん。』
『ホンマに食べさせたんか?』
『そ、そのハズなんやけどなぁ……。』
『──ってぇぇぇ〜!ちゃうちゃう!そんな場合とちゃうねんッ!!』
ふと思い出したように大きな声で叫ぶギョクトに、ラタトクスと涙を流しながら地面にへたりつくサーチは見つめる。
『そない慌ててどないしたんや?』
『どないしたもこうもない!すぐに大樹海に戻んで!』
『せやから……』
『何があったんか言えや!アホウサギィ!』
『……ッ。』
『樹中海要塞が魔族に襲撃された。』
『は?』
『そんなんいつもの事やろ?』
『今回はちゃうねん。幹部のアウスラストもおる。』
『そんなん他の師団がどうとでもな───』
『ヘル率いる掉獄。十三師団ナースロンド全軍が操られたんやッ!!!』
ラタトクスの言葉を遮り、ギョクトが伝えると。
ラタトクスの表情は真剣な表情になっていた。
『ソレ……ホンマなんか?』
『ウチらが"ウソを伝え"に来るかいなッ!!』
『パトやんから聞いた。確かや。』
『せやから、すぐに戻るで。』
『………。分かった。』
『ちょいまちぃ。』
必死に吐き出そうとして騒いでいサーチの元へ、ラタトクスは静かに歩いていった。
サーチはラタトクスに気付くと、涙目の顔を地面につけながら、顔を横にしたまま不思議そうに見つめていた。
『サーチはん。すまんけど……キノコ同盟はこれにて解散や。残りは好きにしてかまへん。』
『オイラ達は宴に参加出来んくなった。すまん。』
「なんかあったのか?」
『………。サーチはんは関係あらへんから。』
「………。」
「キノコ同盟は解散しねぇ。」
「オレが納得したら。その時終わりにするよ。」
「だから。それまで──オレたちは同盟のままだ!!」
『サーチはん……。』
『ほんまにすまん!』
「へへっ!いいって!」
「なんかあった時は言ってくれ!オレはいつでも力になるからさ!」
『ホンマおおきにやで!』
『すまんけど、オイラ達は先に帰らしてもらうわ。』
『ほななー!』
「おうー!またなー!」
そう告げるとラタトクスとギョクトは、サーチを森の中に残して去っていった。
─────────────────────────
サッ──サッ──サッ。
森の中を全速力で走るラタトクスとギョクトは話しながら広場へと向かっていた。
『ギョクト。各地に散らばったみんなを集める。』
『オイラ達は広場に戻り次第。オルテの元に戻るでェ!!』
『ふふっ。そらきたァ!』
『ウチらがおらな。他の師団が困るっちゅーもんやからな!!』
『全速力でいくでぇ〜!!』
『せや!この戦い。情報戦になるでぇ〜!』
そして、走りながらラタトクスの体に魔力が纏わりついていた。
ブワァァ〜〜。
その瞬間。ラタトクスが脳内で問いかける。
───キュピンン"ン"ン"………。
{{全員聞こえとるか?}}
─────────────────────────
各地に点在する。
根踏する馬達。第三師団フレーヴァングに所属する全獣人から古獣達が、脳内に伝わるラタトクスの声に反応する。
『『『──!!』』』
『団長!!』
『団長やんー!!』
『だんっちょっー!』
『どうされたんですか?』
『聞こえてます!』
─────────────────────────
『樹中海要塞が魔族の幹部に襲われた。』
『その幹部によって。掉獄・十三師団ナースロンド全軍が操られたんや!!』
{{──なッ!!}}
{{そんなまさか……!!}}
{{ウソだろ…。}}
{{それはマズイなぁ……。}}
『せやから。オイラ達の出番や!!』
『全員大樹海へ向かえ!』
『おそらく総力戦になる。』
『声を片っ端からかけてかまへん!オマエらが信頼しとる者も連れてきてぇええッ!』
『責任はオイラが取るッ!!!』
『それと───』
サッ──サッ──サッ。
『第三師団団長ラタトクスの名の下に。交信の許可を出すッ!!!』
『大樹海に着いた者からすぐにサポートに回るんや!ええなァッ!!』
大きな声で張り上げたラタトクスの声に、各地にいる全員が応答した。
{{{──リョーカイッ!!!}}}
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
関西弁の語尾のなまりが表現難しい。
現実では、語尾につく言葉じゃない言葉のイントネーション(息ではく『ぅ〜』とか『ぇ〜』とかのこと)が、上がったり、下がったり、伸ばしたりするし。
その中でも声のトーンが違うから表現出来ない。
⤴︎←セリフの後ろにこんなんつけれないし。
すまん。とかはす⤵︎ま⤴︎ん⤵︎。なんだよね。
連れてきてぇええッ!とかも。連れてきてええ!だとイメージと違う。
てぇ〜ってちょっとだけ関西なまりがあった方がソレっぽいし。そっから最後のトーンが力強く上がる感じ。
連れてきてぇ⤵︎ええ⤴︎!!って感じ。
関西弁はにわかだけど。
ドラマやアニメのセリフ聞いたりした事がある人なら分かると思う。
あとは、リアルで関西人の方とか。多分。(笑)
あくまでも僕はにわかだから。




