欠片240.『鈴』
欠片240.『鈴』です!
※本作の「」と間にある───の種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
〔〕のセリフ=行動に合わせて、過去のセリフを照らし合わせている場面で使用
【】=漫画で例えると『四角い囲みのナレーション語り』や『用語説明』
・・=強調
" "=強調、効果音など
─1本=漫画で例えると『場面転換』や『幕間』
➖─➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
─2本=漫画で例えると『時の流れ』
洞窟の入り口に着いたサーチは、鞘から抜いた刀を握っていた。
真っ直ぐに伸びた刀身に伸びるピンク色の線が太陽の光に反射する。
『魔掘屑箱』から取り出した『発光苔』を壁に投げつけた。
すると、壁に張り付いた『発光苔』が翡翠色に発光する。
そして、洞窟内が明るく照らされた瞬間。
30匹は超える『浣屑熊』がサーチへと襲いかかった。
「なっ!やべっ─!」
(魔力放出)
ブワッ!
体を薄く纏うように魔力放出するサーチ。
その魔力は刀も覆っており。サーチの白い魔力を吸い取っていた。
(制御はまだ出来ねぇけど。やるしかねぇな。)
➖───────────────────────
「能力?」
「破片ノ武器にも能力があるの?」
『普通は無いよ。』
『でも、その刀は特別でね。』
『生きてるんだ。』
「生きてる!?」
『ん〜。なんていうか、生きてはないんだけど。生きてるんだよね……。』
「どういうこと?」
『その刀には、使用者の魂が込められてるんだよ。』
『それも、かなりのじゃじゃ馬でね。アハハ。』
『使う者を気に入らなければ、力を貸してくれないんだよ。』
『だから、最初は苦労すると思うけど。頑張ってね。』
ヘイパは笑いながらそう言うと、ヘラヘラした顔をしていた。
「えぇ……。あ、あとさ!この鈴はなんでついてるの?」
『ああ。それはね──』
────────────────────────➖
「フゥ─……。」
(魔力を吸わせて解放することができる。じゃじゃ馬。か。)
「言うこと聞いてくれよな。」
「咲け──」
「『カンザクラ』」
"ブワァッ"〜〜!!!
サーチが詠唱を唱えた瞬間。
一瞬にしてピンク色をした花びらの形に変化した魔力が、サーチの周りにいる『浣屑熊』を包み込んでいく。
辺りを見渡して驚く浣屑熊達は逃げ場もなく、花びらの渦の中に閉じ込められていた。
しかし、すぐに魔力が空気中に離散し。
浣屑熊を囲っていた魔力の花びらは、消えて無くなってしまった。
「……クソッ!だめか!」
囲っていた魔力が消えた瞬間。
浣屑熊達は一斉にサーチの方を向いた。
「……かかってきやがれ!ぜんぶ叩っ斬ってやる!!」
刀を構えるサーチは、魔力を地表に巡らせた。
(数は二十七か。常に位置を把握しなきゃ。)
スゥッ─。
瞼を閉じたサーチは、真正面に刀を両手で持ち構える。
➖───────────────────────
「あ、あとさ!この鈴はなんでついてるの?」
『ああ。それはね。』
『前に、この刀を使っていた人が付けたんだよ。』
「変なヤツなんだな〜!鈴なんか付けたら、場所がバレちゃうじゃん!」
『ふふ。変なやつか。そうだね。変わり者ではあったかな。』
『彼女に尋ねてみたことがあるんだ。どうして鈴をつけるんだい?ってね。』
「なんて答えたの?」
『………。』
『この鈴は。確かに今は、私の弱点となるだろう。けれど、今の私には必要なことだ。』
『まだお前には分からないだろう。その時が来れば、お前も同じことをするさ。』
『って、言われたよ。』
「その後、ヘーパさんはホントに鈴をつけたの?」
『うん。意味を理解してね。』
『この話を聞いて、サーチくん。まだ知りたいかい?』
「いいや!オレも探してみるよ!」
「その方が、きっと。」
「もっと強くなれるだろ!!ヘヘへっ!」
『うんうん。』
サーチを見るヘイパの顔は笑顔で頷いていた。
────────────────────────➖
【彷宵徨要塞 公爵部屋】
ヘイパは椅子に座り、その前にある机の上にはヴィーナスが腰をかけていた。
ヘイパは物思いに耽るように、桜花との記憶を思い出していた。
『………。』
《サーチくんにはああ言ったけど。実際は、ボクは教えてもらってたんだけどね。》
➖───────────────────────
チリン──。チリン─。
鈴を鳴らしてヘイパの前を歩く、ピンク色の色彩が入った着物を着た女性が歩く。
『桜花さん。何で鈴を付けているんですか?』
ヘイパの質問に、透き通った声で桜花は答える。
「何故か。だと?」
「以前にも誰かに聞かれたことがある。」
「そんなにも気になるか?」
『ええ。だって、自身の居場所がバレてしまうじゃないですか。』
「この鈴は。確かに"今は"、私の弱点となるだろう。けれど、今の私には必要なことだ。」
「まだお前には分からないだろう。その時が来れば、お前も同じことをするさ」
『?』
─────────────────────────
戦場にて、ヘイパと桜花は多くの魔族と戦っていた。
『くそ!数が多い!これじゃあ捌ききれないよ!』
『桜花さん!どうすれば──』
ヘイパが桜花を見ると、桜花は目を瞑り、静かに深い呼吸をしていた。
「スウゥゥゥ──。ヘイパ」
そして、勢いよく目を開くと、周囲から襲いくる魔物達に斬りかかりながらヘイパに話しかけていた。
シュン──ズバッ!!
「以前問うたな。何故私が鈴を付けるのかと。」
キン──。ズバッ!ズババッ──!!
『え?』
《この状況で、なんでそんな話を……》
「理由は二つある。」
シュ──!シュババッ!!
「一つ。自身の位置を知らせる事で、敵の油断を誘う。」
チリンっ────。
鈴の音が聞こえる場所に襲いかかる魔物だったが、その場所にはすでに誰もおらず、背後には刀を構える桜花が立っていた。
《いつの間に……!ボクも見失ってた…。》
「視覚ではなく、聴覚を頼りに居場所を把握して動いた場合。その音を利用するのは簡単だ。」
ズバンッ──!!ピュッ!
──チャキ。
刀についた血を飛ばし。鞘へと収める桜花は、ヘイパの方を見る。
ヘイパが桜花を見つめて立っていたその時。
シュ──!!
───キンッ。
桜花はヘイパの背後にいた魔物を切り裂いていた。
"ドシャァァァァ"──バタッ。
倒れる魔物を背に、少しだけ振り返りながら桜花は答える。
「二つ目は。己の感覚を研ぎ澄す為だ。」
「私は、周りの敵を正確に見極めることが苦手だ。」
《これで……?ボクなんて…足元にも及ばな……》
「だから、己が自然と成る為に。己に弱点を課すことにしたのだ。」
『弱点を課す……?』
「そうだ。」
「───鈴の音を鳴らさずに刀を抜くことだ。」
『!!』
《そうだ!桜花さんは、あの時以外は……一切鈴の音を鳴らしてなかった!》
《それだけじゃない!移動する時も音を鳴らさずに……!》
ヘイパは、桜花が相手に対して油断を誘った場面を思い返していた。
『鈴の音を鳴らさないほどの……体幹と精密さ。』
「一定の力。一定の所作。自然と一体化すると言うことは──」
「すなわち。己の意思で"集中状態"へと入ることが出来る。ということだ。」
「ヘイパ。雑念は捨て去れ。いいか。」
「刀は己だ。その身一振り。一振り全てに"己"を込めろ。」
────────────────────────➖
『………ふふ。』
《懐かしいな。あの頃は桜花さんに……みんな怒られたっけ。》
『?』
『どうしたぁ〜?ニヤニヤしやがって。』
『いつもキモいけど。今日は一段とキメーぞ〜。』
『あはは。昔のことを思い出してね。』
ヴィーナスの言葉に、ヘイパはニコニコしながら答えていた。
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[今回の一言♩]
烏龍茶ミルクティー美味い!
ほうじ茶ラテとか。ゴン茶ラテとか。そう言う系統好き。




