欠片239.『明日ありと思う心の仇桜。夜半に嵐の吹かぬものかは。』
欠片239.『明日ありと思う心の仇桜。夜半に嵐の吹かぬものかは。』です!
【台屑所要塞 森の奥地】
【サーチサイド】
アストラが『浣屑熊』巣穴を見つけてから数十分後。
サーチも巣穴を見つけていた。
(あそこだな。)
ゴソゴソ……カチッ。
巣穴に入る前に、サーチは『魔掘屑箱』から細長いモノを取り出していた。
両手に持つサーチはソレを見つめて口角を上げていた。
(ヘーパさんからもらった。コイツを試させてもらうぜ。)
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【彷宵徨要塞 公爵部屋】
鳳凰屑神鳥との戦いから数日後。
サーチはヘイパに呼ばれて公爵部屋へとやってきていた。
『やあ〜〜出発前でバタバタしてる所悪いね。』
「いいよ!それより、どうしたんだ?」
「フロデューテもヴィーナスのねぇちゃんもいねぇじゃんか」
辺りをキョロキョロと見渡すサーチに、ヘイパは机の上にあるモノを置いた。
『今日はサーチくんに用があるんだ』
ガチャ──。
「これって……。」
『うん』
笑顔で答えるヘイパの前に置かれていたのは細長い刀身をした『破片ノ武器』だった。
「カタナってやつじゃんー!!」
「なんでこれを?」
『サーチくんにプレゼントしようと思ってね!』
「うそ!?ホントにいいのかー!」
『うん。』
『この先、キミはもっともっと強くなるだろう。』
『でも、それはキミと戦う相手もそうかもしれない。』
ヘイパの言葉に、サーチは真剣な目で真っ直ぐに見つめながら聞いていた。
「………。」
『でも。その時が、いつ来るのかなんて分からないからね。コレは、それを補う為の"力"だよ。』
『星屑とは違い、ただの破片ノ武器だけど。』
『ある友人から貰った刀なんだ。』
「そんな破片ノ武器をもらっていいのか!?」
『………。』
《桜花さん。貴女の想いも。彼に託そうと思うよ。》
《サーチくん。フロデューテちゃんを守ってあげてね。》
『サーチくん。こんな言葉を知ってるかい?』
『明日ありと思う心の仇桜。夜半に嵐の吹かぬものかは。とね。』
「聞いたことねぇ…」
「どういう意味なんだ?」
『ボクの故郷にはね。『桜』と呼ばれるピンク色をしたとても美しい花があってね。』
『その花びらは、少し強い風が吹いただけでも散ってしまうんだ。』
『だから、明日も桜が見られるだろう。と、思っていても……夜中に突然嵐が来て、花びらが散ってしまうように。人生は、予測不能な出来事がいつ起きても不思議ではない。ってことを表している言葉なんだ。』
「そしたらさ、また別の桜を見に行けばいいじゃん!!へへっ!」
サーチの突拍子もない言葉にヘイパは目に涙を浮かべ、指で拭き取ると盛大に笑い出した。
『……くはぁっ〜!ハハハ!確かにね。その通りだ!』
『ボクはね。その言葉の裏にはきっと。』
『「今」を大切に生きることの大切さを問う言葉だと思ってた。』
『だけど、新しい花びらを見届けるのも──』
《このままボクが持っていても。いつの日か、この刀は枯れてしまう。》
『悪くないかもね!』
『それに、道具は使われる為に存在している。使われないのは可哀想だからね。』
「ヘーパさんが使わないの?」
『………。ボクにはもう。この刀を抜くことが出来ないからね。』
「?」
『だから──』
ヘイパは刀を手に取り、サーチがいる対面に歩いていく。
そして、サーチの手にしっかりと刀を手渡した。
『この先……キミの力と成り。誰かを守る為の一部として。』
『サーチくん。キミに使って欲しいんだ。』
『頼めるかな?』
ヘイパは『ニコリ』と笑った。
その笑顔を見て、サーチは刀を両手でしっかりと握り笑顔で答えた。
「うん!!」
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「ヘーパさんにもらったこの刀。」
(使い方は教えてもらったけど……時間もなかったし。馴染ませとかないと。)
カチャ─。
ピンク色の編み模様が入った鞘に手をかけるサーチは、刀を鞘から引き抜いた。
スゥゥゥゥ──。
引き抜かれた刀身には、一直線に2本の線が入っており、ピンク色の色彩が入っていた。
「何度見てもキレイな刃だなぁ〜。機巧技師の腕前も相当だけど。」
(この刀を使ってた人の手入れがスゲェ。汚れも、刃こぼれ一つもない。でも……)
(めちゃくちゃ大切に使われていたのは分かる。)
「そんな刀をオレに。」
洞窟を見つめるサーチは刀を握り、真面目な顔で歩き出した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
昨日は更新できずにすみません!




