欠片238.『駆除対象』
欠片238.『駆除対象』です!
※スナップ
手首を柔軟に使い、肘よりも体幹に近い部分の筋肉を連動させて、腕のエネルギーを手先まで伝える動き
不敵な笑みを浮かべるメリウス・マーキュリの姿を後ろから見つめる楽士は、メリウスに尋ねていた。
『どうかされましたか?マザー。』
『フ……フフッ。』
『いやね…。ちょうど今。』
『ぶつかったみたい。ククッ……クフフッ。』
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【彷宵徨要塞から西に142Km 龍骨山の跡地】
『けっこうとーいーね〜。』
魔王直下 七大魔族
一柱の一人 暴食の悪魔[ラトニー(6666)]
[種族:大魔族]
『ワープは決められてるから。仕方ない。』
魔王直下 七大魔族
一柱の一人 憤怒の悪魔[ラース(666)]
[種族:大魔族]
魔界から旅立ったラースとラトニーが荒野を歩いていた。
すると、目の前に大きな切り立った崖と谷が現れた。
そのまま歩き続け、谷へ差し掛かろうとした時。
崖の上から、突然『ドッカーン!!』『バッカーン!!』と、2人に向けて実体化した大きな文字が降り注いだ。
"ドゴォォォン"───!!!
パラパラ──……。
砂煙が晴れた荒野には、ラースとラトニーが何事もなく立っていた。
『…ケホっ。ケホ。………ラースねぇ。だいじょうぶ?』
『うん。へいき。』
『なんだろうコレ〜?』
と、ラトニーは地面に突き刺さった文字を見つめていた。
『さあ。』
『でも、ボク達にケンカを売るのは──』
『死が確実。』
二人が見上げる先には、ラースやラトニー達と同じくらいの背丈をした──
白い傘を差した黒髪の少女と白黒ハーフのパーカーを着た少年が崖上に座っていた。
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【とある屋敷】
メリウスは楽士に命令して、テーブルの上に映像モニターを表示させていた。
『傘影と白黒が衝突したわ。フフッ。』
『やはり、計算通りでしたか。』
《しかし……私には報告がないとは。彼らにもまたインプットを施す必要がありそうですね。》
『ええ。』
楽士が映像を見ながら考える中。メリウスに質問する。
『あの二人。勝てそうですか?』
その質問に、当たり前のように答えるメリウス。
『勝ってもらわないと困るけど?』
『じゃないと、アナタ達の意味が無いじゃない。』
『失礼致しました。その通りでございます。』
『それに、インプットはしてあるわ。後は、知らない手に……どれだけ対応できるか。よ。』
『ですね。』
『映像は記録されてます。』
『ありがとう。』
『もう行っていいよ。』
『ハッ。失礼致します。』
コツ──カツ─。
楽士はその場を後にして、屋敷の廊下を歩いていった。
《能力の相性で言えば、まず負けることはないだろう。》
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【龍骨山の跡地】
【ラース&ラトニーVS 傘影&白黒】
──ヒュゥゥゥゥ……"ドスゥン"!!
崖の上から飛び降りる白黒と、ゆらゆらと白い傘にぶら下がって降りてくる傘影。
ヒラ──ヒラ───ストッ。
『ねぇ、キミたちだぁれ〜?』
ラトニーの質問に2人は無言だった。
『………』
[対象を捕捉。速やかに処分する。]
昔物語 メンバー[白黒(4696)]
[種族:〇〇]
『………』
[何通りもの戦闘パターンをシュミレーション完了。これより、対象の駆除に移行する。]
昔物語 メンバー[傘影(31)]
[種族:〇〇]
『喋らないってひどい〜!!もぉ〜!』
『いきなり攻撃してきてむしなんてひどいね!』
『ボクはいいけどっ。ラースねぇを怒らせたらこわいんだかねっ!ふんっ!』
『ボクは怖くない。』
『でも。アナタ達は、死。』
『だから──死んで。』
バッ──!!
と、赤い手袋をした右手を前に構えるラース。
その手の平の前から、赤黒い魔力の光線が発射された。
"ドギュン"──!!
バッ──!
その瞬間、対面にいる傘影が白い傘を前に向けた。
『『反天』。』
キュィン──。
と、傘に当たった光線は、ラースの元に跳ね返った。
自身の放った速度よりも、さらに速い速度で跳ね返ってきた光線の光によってラースの顔が照らされる。
『──!!』
"ドガァァン"!!……パラパラ…。
再び砂煙が舞う中。ラースの目の前には、ラトニーが大きな口をモグモグしながら立っていた。
『……んむぅ……んぐっ。んぐ。ぷぁ〜!』
『んん〜ラースねぇの魔力は、相変わらずおいし〜〜〜!!ふふふっ!』
満面の笑みで両手を頬に当てながら喜ぶラトニー。
そして、すぐさま頬を膨らましながら顔が赤くなるラトニーは、傘影と白黒に話しかけた。
『ラースねぇに攻撃したからには、ボクっ。もぉ〜怒ったからねっ!』
『おまえたち!ぜったいゆるさないぞっ〜!』
両者が睨み合う中、本格的に攻防が始まろうとしていた。
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【同時刻 台屑所要塞 森の中】
【サーチサイド】
森の中で『浣屑熊』の追跡を行っていた。
「……見失わねぇようにしないと」
サーチは走りながら体の外に魔力を放出し始めていた。
(まだ、完全には無理だけど。)
『ススススッ』と、魔力を細い線のようにして、『浣屑熊』の体に巻きつけていた。
その線は所々太く、荒々しい線をしていた。
しかし、『浣屑熊』には魔力の紐は見えておらず、捕まえる目的ではなかったサーチは、そのまま放出し続けながら追跡していた。
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【アストラサイド】
サーチと同様に『浣屑熊』を追うアストラは木の枝を渡っていた。
アストラにとっては、見失う速度でもない為。魔力も放出せずにそのまま追いかけていた。
トッ──タンッ。タン。
(日没までは余裕だが。早めに終わらせるか。)
追いかけていたアストラは、逃げていく『浣屑熊』が森の奥にある洞窟に逃げていくのを確認した。
(あそこか)
──タン。スッ──。
木の枝から降りたアストラは、木々で覆われた薄暗い洞窟の中へと降りていく。
『魔掘屑箱』から『発光苔』を取り出すと、入り口の壁に貼り付けた。
すると、洞窟の奥に赤い2つの光が現れると、その数は何倍にも増え。闇の中は、瞬く間に赤い光で埋め尽くされていた。
「悪いが。害を為すオマエ達を、放っておくわけにはいかない。」
『龍屑・孔』を顔の前に構えると、手首をスナップさせた。※
カチャ──
"ビュンビュン"──"シュビュビュ"!!
「全員。駆除対象だ。」




