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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第二・五章─王国跡地編〜交錯する勢力達〜─
235/266

欠片233.『油』


欠片(ピース)233.『油』です!



台屑所要塞(キッチンフォートレス) 森の中】



森の入り口付近に馬車を木に固定した後、サーチ達は食欲がそそられる香りに導かれながら道を進んで行った。


「いつも干し肉やキノコばっかりだったからな〜」

「まあ、たまに魚も食べてたけどさ。」


『まともな味付けが出来ないからね〜』

農楽園要塞(アグリカルフォートレス)で取れるお豆から作った。ショーユ?って調味料があるんだけど。』


『ヘーパさんが持ってきた時に、それを焼いたお魚にかけて食べた時は……もぅ〜ほっぺたがおっこちるとこだったもん!!』



「へぇ〜!」

「オレはシオってやつしか知らないから、こんな良い香りがするのはワクワクするなー!」



『そう言えば、サーチ。アンタもそのショーユ、食べたことあるわよ?』


「えっ?いつ食べたっけ?」

「そもそも。ショーユって、どんなやつなんだ?」


『ショーユはね。黒い色をした液体なの!味は〜、そうねぇ。』

『塩辛い感じかな?でも、ほんのり甘みもあるの!』


黒屑燥(こくせつそう)もろこしと尾屑群牛(びせつぐんぎゅう)炒飯(チャーハン)にも、そのショーユが使われてたのよ』


「そうなのか!?」

「それで、あんなにも美味かったのか……」



"グギュルゥゥゥ"〜〜。


サーチが思い出に浸っているとお腹が鳴った。


「はぁ……。ハラへったな〜。」

「考えるだけでもハラがへるな〜。」


『ふふ。エネルギーを消費してますからね。』

『しっかり食べさせて頂きましょう。』


笑顔でサーチを見るサンに、サーチは『魔掘屑箱(マクセツバコ)』を探り出した。

そして、小さな財布を取り出すと中身を確認する。


「…げっ。シリカがねぇ…!!」

「コレじゃメシも買えない。」



肩を落として『ズゥ〜ン』とガッカリするサーチに、アストラが声をかける。


「安心しろ。通貨(シリカ)ならある。」

「当面は困らないほどにな。」



その様子を見ながら、フロデューテは何とも言えない気持ちで苦笑いしていた。


《ハハ……確かに。地屑龍(アースドラゴン)の換金分があるものね。》



「……!!」

「……じ、師匠(じじょぉ)〜〜〜う!!!」


そして、サーチは涙を流して喜んでいた。



─────────────────────────



台屑所要塞(キッチンフォートレス) 森の中】



地面に石で囲われた箇所が何箇所もあり、その一つ一つの上には大小様々な大きさの調理器具が置かれてあった。

その中の大きな鍋やフライパンには、色とりどりで美味しそうな食材が入れられたスープや焼き物、揚げ物も存在していた。



『──クンクンッ。』


『ん?』


エプロンをしたウサギの獣人が何かに反応する。

それに対して、キツネの獣人が質問していた。


『どした?』



『なんか匂わない?また冒険者かしら?』



『クンクンッ──』


『確かに。四人か。』

『クミンたちとは違う匂いだ。』


『一人は獣人の匂いだ。嗅いだこともない匂い。』

『他はヒト族かな。』


『誰だろう?』


キツネの獣人が疑問に思う中、ウサギの獣人が大きな鍋を混ぜながら答える。


『一応警戒はしとこうね。』


『ああ。クミンたちも居ないから。』

『直前になったら隠れて様子をみよう。』


『うん。』



その後も、ウサギとキツネの獣人は調理を行っていた。



─────────────────────────



台屑所要塞(キッチンフォートレス) 森の中の川辺(かわべ)



森の中を傾斜に沿って流れる小川(おがわ)のそばに、ヒト族の男性とニワトリの獣人が木や草むらの陰に身を潜めて小川の方を見つめていた。



『いるぜ。コッ──うぐぅ…!!』



『バッ!』と、後ろにいるニワトリの獣人の口に、手をかざして声が漏れないようにする男性は静かな声で呟いていた。


「バレちまうだろ。やめろ。」



『ン──モゴゴ…ゴ…!!ンゴっ!!』


慌てふためくニワトリの獣人に気づいて手をのける男性。


『…ハァッ!ハァ……クソ。危うく死ぬ所だったぜェ。』

『にしても、どうするんだ?コッ─…。』


『ググッ』っと翼で自分の口を押さえるニワトリの獣人。



「どうするかねぇ〜。」


少し悩んだ末に男性は続けて話した。



「クミンさん達がいねぇから……どうすることもできねぇか。チィ。」

「場所は分かったんだ。一旦戻るぞ。」



『仕方ねェか……コケェ。』


険しい顔で歯を噛み締める男性。

今度は小さな声で鳴くニワトリの獣人。



「何としてでも、早めに回収するぞ。」



そう言葉を残して、草陰にあった人影はなくなっていた。



─────────────────────────



【サーチサイド】



サーチ達は小川の近くで一休みしており、サーチは川の中に裸足で使っていた。

水深は深くなく、足の膝に少し届かない程だった。



「いや〜!川の水も綺麗で……」


「─って!!あぁ〜!!?」

「何だよコレ〜!!」


サーチの大きな声に、陸地にいる一同が振り向いていた。


『え?なになにー?』

『どうされましたか?』

「?」


「こ、コレを見てくれよ!!」


集まった一同は、サーチが指差す方を見つめていた。



『え?なんで?』

「………。」

『これは……。』


一同の視線の先には、川の真ん中辺りを虹色をした水が流れてきていた。



「なんで虹色なんだ!?」



『サーチ殿。これは──』



『"油"です。』



「あぶらって、あの油!?」

「なんでそんなもんが流れてくるんだよ」


サーチがその油が入った水を掬い取ると、眺めたり、匂ったりしていた。

その様子を見ながらフロデューテが反応し、アストラも動き出そうとしていた。



『それは分からないけど。』

『上流で何があったのかも…。』


「様子を見に行った方が良さそうだな。」

「荷物をまとめたらすぐに出るぞ。」


そうして、川から上がったサーチは身支度を済まし、4人は川の上流方面に向かう道を進み出した。



─────────────────────────



台屑所要塞(キッチンフォートレス) 森の中の広場】



川辺から戻ったヒト族の男とニワトリの獣人は、料理がたくさん置かれてある広場にやってきていた。

2人の帰宅に気づいたウサギとキツネの獣人は、2人に話しかけていた。



『おかえりなさい。』


ウサギの獣人が心配そうな顔をする中、キツネの獣人が質問する。


『どうだった?』



『コケェ〜〜!!どうもこうもねェよォ!』

『何匹もワラワラといやがって、ホントムカつくぜェ!!』


『そうか。やっぱりまた居るんだね。』

()ちそうなの?』



キツネの獣人の言葉に悩むヒト族の男性。


「正直分からねぇな。」

「もう数日は経ってるハズだからな。」


「クミンさん達が帰ってくるまで……待つしかねぇが……クソッ!」


『でも、クミンたちが帰るまでは一週間くらいはかかるでしょ。』


「多分な。」

「オレ達だけでなんとかするしかねぇか。」


悩むヒト族の男性に、普段はおとなしい口調のウサギの獣人が強く反対した。



『ダメだよ!!』

『ワタシたちが戦っても一方的にやられちゃうよ!何かあった時のリスクがありすぎる!』


『それなら!諦めた方がいい!!』


普段は怒鳴らないウサギの獣人に、3人は何とも言えない表情になっていた。



「キャロット…。」

「……。」


『……。』


『コケェ…。』



その時、広場につながる道の方から、声が聞こえてきていた。



『コケェ?なんだ?』

「誰か来るぞ。冒険者か?」


『そうだった!コクックとシャフが帰ってきたら言おうと思ってたんだ』

『この場所に向かってくる人達が四人いるっぽくて、一人は獣人だから。クミン達とは違うっぽいんだよね。』


『どうする?』



『コケェ〜〜!!早く言いやがれよッ!イナリ!!』


「様子を見るにしても、時間もねぇ。」

「別に、メシを食うんなら構わねぇよ。話だけでもな。」


「ただ、盗賊の可能性もある。」

「一応、魔屑道具(ませつどうぐ)は持っとけよ。」


『『うん。』』

『コケェ!』



─────────────────────────



【サーチサイド】


サーチ達が道に沿って歩き進めていると、次第に左右の森が見えなくなっていった。

そして、森道を抜けると、そこには大きな鍋から小さな鍋、多種多様な調理器具が火にかけられてあった。


さらに、その奥には大きな小屋が一軒建てられてあった。



「おお〜!!なんだここー!」

「いっぱい鍋が置いてあるぞー!」


「うまそうな匂いもする〜!」


サーチがはしゃぐ中、アストラは建物の奥を見つめていた。



「出てこい。何者かは知らんが、そこに居るのは分かっている。」


「え?誰かいるの!?どこだ?」


周りを見渡しても、周囲からは鍋が煮える音しか聞こえてこない。

しばらく沈黙が続いた後に、建物の奥から男性の声が聞こえた。



「何者かだと?こっちのセリフだ。」

「アンタら、何しにここへ来やがった。」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


[今回の一言♩]

シャドバやりたい欲を必死に抑える日々。


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