欠片231.『存在』
欠片231.『存在』です!
サーチが辺りを見渡すと、フロデューテの姿が見当たらないことに気づいた。
「そういえば、フロデューテは?」
『フロデューテ殿なら、あちらの滝の近くの岩場におられますよ。』
サンが見る方向からは、水の流れる音が微かに聞こえてきていた。
そして、サーチが森の中を見ていると、アストラが声をかけた。
「魔力を感じる修行中だ。」
「それってどうやるの?」
「オマエはもう出来ているだろう?」
「オレってさ!」
「黒髪の女の子と戦いで魔力が見えるようになったときに、自然と分かるようになったから」
「魔力を感じる練習があるって知らなかったんだよ!」
「そういうことか。」
「そうだな。まずは──」
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【フロデューテサイド】
滝の音が聞こえる中、フロデューテは近くの岩場の上で胡座をかいていた。
そして、目を瞑ったまま両手のひらを上にして、膝の上に乗せた。
一方、同じ頃。
アストラは、サーチに魔力を感じる練習方を教えていた。
《集中。余計な雑念はダメだ。》
「魔力を感じ取る為には、自然と一体化する必要がある。」
「ん?どういうこと?」
「自然と一体化って、意味がわかんねぇ……。」
「魔力を感じ取るには、極限の集中状態に居なければならない。」
「つまり、『自然と一体になれ』と言うのは。雑念を全て消し去り、自身の気配が消えるまでを意味する。」
「考えちゃダメってことか?」
チュン─チュン──。
水を飲みに来た小鳥が、フロデューテのそばに近寄る。
フロデューテは微動だにせず、周りの時だけが過ぎているようだった。
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【サーチサイド】
「そうだ。」
「だが、考える必要もある。」
「ハァ!?」
「し、師匠……さっきから言ってることがおかしくないか?」
「いや。ワタシは至ってマトモだ。」
「集中している時、ヒトは考えていないようで考えている。」
「魔力と言うのは、一度でもその存在を知覚出来ていれば、感じ取るの時間はそうかからない。」
「オマエも。」
「魔力を知覚した時──"集中状態"だったんじゃないのか?」
焚き火の炎を見つめるサーチの瞳には、オレンジ色の光が照らされていた。
「あ──」
サーチは、人口屍人のレイとの戦闘を思い出していた。
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オレンジ色の魔力を纏いながら、サーチの左目には銃のスコープに表示されるミルドットの線が映し出されていた。
『さっきよりも明確に見える……。』
『しかも、なんだ……これ。動きだけじゃない…?』
『種族…屍人……不老…?』
(それに、なんだあのモヤ……。)
キィィイン。
『魔力……の塊?……か。』
(どうすればいいか、手に取るように分かる)
(なにをしたらいいのかも)
(なんだ、この感覚。……不思議な感覚だ。)
・・・・
【無意識のうちに発していたその言葉により】
【サーチの内に秘められた能力が】
【覚醒する】
『“観察"』
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「そうだ。あの時──周りの音が聞こえなかった。」
「でも、確かに目の前の敵に対してどうすればいいのかを考えてた気がする。」
「頭も体も……」
「ただ、勝手に動いてた。」
サーチを見守っていたアストラは、再び話しかける。
「それが"集中状態"だ。」
「フロー……。」
両手の平を見つめるサーチは、耳だけをアストラに向けていた。
「その"知覚"が体に残ることで、魔力という存在を感覚的に感じ取ることができる第一歩と言えるだろう。」
「なるほどな〜!」
「あれ?これってもしかして……。」
サーチは『ブツブツ』と小声で呟くと、「オレもちょっと修行してくるー!」と言いながら森の中へ入って行った。
『どうしたんでしょうか?サーチ殿は。』
サンが尋ねる中、アストラは目を瞑り微笑んでいた。
「フン。大丈夫だろう。」
「子供の成長とは早いモノだな。」
『?』
『アストラ殿の幼少期は、どんなご様子だったんですか?』
「ワタシは──」
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「アストラッ!オマエは我がルナスター家の希望なんだ!!」
「その程度では天星になれないぞ!もっと鍛錬をしろッ!!」
「いいな?オマエは……オレの代わりに……グッ……ゥウ……クソォッ!!」
"ドガシャァン"!!
周囲にある道具を蹴りつけるアストラの父親。
「……ハァ……ハァ…。まぁいい。」
「また、後で召使に様子を見に来させる。」
「昼までに出来なければ今日はメシ抜きだ」
「分かったな!!!」
大きな声に驚くアストラは、小さな声で返事をしていた。
「………!!」
「……はい。お父さま。」
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(冷たい訓練場の床。膝をつくワタシを見下ろす、父の冷たい目。)
(必死に訓練や鍛錬に励んだ。全ては、父のた──)
『──殿?』
『アストラ殿!』
『大丈夫ですか?』
サンの大きな声にアストラは『ハッ!』と驚き、すぐに答えた。
「な、なんでもない。少し考え事をしていた。」
『そうでしたか。良かった。』
『コレでも飲んで、お二人の帰りを待ちましょう。』
サンはアストラの元へ歩いていくと、ハチミツ入りの白湯が入ったコップを手渡した
「ありがとう。」
『いいえ。』
木を背もたれにして休むアストラは、再び考え込んでいた。
(嫌な記憶は消えないモノだな……)
(ツベチカさん。セーブス。貴方達に会いたいよ。)
(ワタシ一人に……。)
「フゥ──。」
(でも、まだ死ぬわけにはいかない。ワタシが出来ることの全てを──彼に教えるまでは。)
アストラは静かに、飲み物を口に入れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
寒すぎて体が限界突破しそう。
メガシンカしちゃうかもなぁ。




