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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第二・五章─王国跡地編〜交錯する勢力達〜─
230/266

欠片228.『石と相性』


欠片(ピース)228.『(いし)と相性』です!



【翌日】



「サーチ。魔力を使って技を出す時に、意識していることはなんだ?」


アストラの質問にサーチとフロデューテは正座をしながら聞いていた。



「えっと……あれ?」

(そういえば、出力のことは考えたことはあったけど。実際にした時ってあったっけ?)

(いつも死にそうだったから、本気でやってたし…。)



「どうした?」


「いや、いつも全力で魔力を出してたかも。戦う相手がみんな強かったから……制御して弱くするなんて、そんな事してる場合じゃなかったし」


「まあ、いきなりコントロール出来る方がおかしいからな。」

「だが、弱くする。と言うのは違う。」



「?」

『どういうこと?』


サーチが首を傾げる中、フロデューテが質問する。



「出力が"少ない"から、威力が"弱く"なる。この認識がそもそも違う。」



「えっ?そうなの!?」

『でも!昨日、魔力が多いほど技の威力は高くなるって聞いたのに……!』



「確かに、威力が高くなるのは事実だ。」

「だが、少ない魔力量でも、"魔力を込める箇所を限定すれば"──威力は格段に跳ね上がる。」



「『魔力を込める箇所??」』


今度は二人ともが首を傾げていた。



「そうだ。」



スタッ──スタッ。パキッ──。


木の近くに歩いていくアストラ。

そして、木の枝を折るとサーチ達がいる場所に戻り、地面に絵を描き始めた。



ガッ、ガガッ──……ガリリ。



「……なんだこれ。」

『何かしら…?』


その絵を見た2人は、あまりにも下手な絵に反応に困っていた。


「?」

「なんだとはなんだ。」


「ワタシと。ワタシの武器だが。」



「えぇ!?コレがッ──!?」


《あ。》


『………。』

《うーん。コレは反応しちゃダメな気がする。》



「こんなの、どっからどう見ても… 寄生人(プラン)ッ───」


「ッハ……!」

(まずいっ!!)


横目で汗をかきながら口を閉じたままのフロデューテに対して、自身の失言に気付いたサーチだったが。

すでに遅かった。



コキ……ポキ、パキッ──。



「えっ〜と……。師匠。これは、その……!」



『ゴゴゴゴゴッ〜〜』とメラメラ炎が舞い上がるようにアストラの背後に幻影を見たサーチは、仏のような顔をして泣いていた。



─────────────────────────



「ぶぇ、ぼえで、ごれがどうじだっでんだ?びぼう」

(で、それで、これがどうしたってんだ?師匠)


顔がパンパンに腫れたサーチが、正座をしたまま質問していた。



「いいか。ワタシが持つ『龍屑(リュウセツ)(ポア)』は少し特殊でな。通常の破片ノ武器(ウェード)よりも"魔力が馴染みやすい性質"を持っている。」



『馴染みやすいって?』



「武器に魔力を通す時、使用者の魔力を込める。その際に相性が存在する」



「『うんうん。」』


すっかり顔が元通りになったサーチとフロデューテは、聞き入るように姿勢を前へと伸ばし、話を聞いていた。



「基本的に三つ。」



「一つ目は、使用者が武器を扱っていく内に、使用者の魔力に慣れていくパターン。」

「そして、二つ目は武器が使用者を選ぶパターンだ。」



「武器が選ぶ?」



「そうだ。これは、魔力を持つモノの場合だが。」

「基本的に破片ノ武器(ウェード)を武具屋で購入する際に、その武器に微量の魔力を入れるんだ。」


「そして、武器に込めた魔力が外へ放出されなければ相性は良いとされる。」

「だが、魔力が放出された場合。武器そのものは使用できるが、その者が魔力を込めたところで力を最大限に発揮できない。」


「これが、武器が使用者を選ぶパターンだ。」



「へぇ〜〜!使えるのは使えるってことか!」


「ああ。」



「ん?」


「でも、オレは造った武器を使ったり、ヴィーナスのねぇちゃんが造った破片ノ武器ウェードを使ってるけど」

「なんで魔力をこめて使えてるんだ?」



破片ノ銃剣(ベネシオッド)はオマエが造ったんだろう?」


「うん。あ、おやっさんにも手伝ってもらったけど」



「造り手の想いが伝わったんだろう。」

(おそらく。元々持っていた魔力が、無意識のうちに当てられていたんだろうな。)



「そして、使っていくうちに魔力が発現し、次第に馴染んでいったおかげで問題なく使用できていたのかもしれん。」

「新しい武器に関してはヴィーナスが仕立てたモノと言ったな。」


「なら。武器を造る前に、素材に魔力を込めろと言われなかったか?」



「あっ!!いわれたと思う!」


「その時はよく分かんなかったけど、破片(クズ)や鉄に魔力をこめたんだった!」



「それが三つ目だ。」


「初めから使用者の魔力を素材に込めることで、使用者専用の武器を初めから造る方法だ。」

「ヴィーナスはその方法で、オマエが初めから扱えるように造り上げたんだろう。」



「なるほどな〜〜!」

「おやっさんも魔力がねぇから、教えてくれなかったんじゃなくて分かんなかったのか!」



納得するサーチをよそに、フロデューテがアストラに質問する。



『ねぇねぇ、初めに言ってた。アストラの持つ武器が馴染みやすいってのは、どういうこと?』



「ワタシの武器は特殊だと言ったな。その三つの相性とは例外に、武器の使用者が引き継がれてきた武器なんだ。」



「え、でも──」


『それって、魔力が違うから最大限に使えないんじゃ?』



「ああ。普通の武器ならな。」

「『龍屑(リュウセツ)(ポア)』は継承者が次の継承者に託す事で、その武器に認められるようなった時。初めて本来の性能を扱えるようになるんだ。」



「なんか、破片ノ武器(ウェード)って。」

「意思があるみたいだな。」



「………」

「ただ、ほとんどが今話した三つの相性で、性能を最大限に発揮することが出来る。」

「だから、自分に合った武器選びが大事になってくるんだ。」



「『おお〜!!』」



「まあ、オマエ達はもう。それぞれ破片ノ武器を持っているから当分は必要ないだろう。」



「『おぉ〜……。』」



新しい武器という言葉に興奮する2人だったが、アストラの言葉に現実へと戻されていた。

そして、アストラは手に持つ木の枝を動かした。


トンっ─トン。


アストラは、木の枝を地面に書いた『武器の先端が丸く囲まれている絵』を差して話を続けた。



「そして、"ココ"だ。」



「先ほど言った──」



➖───────────────────────



「出力が"少ない"から、威力が"弱く"なる。この認識がそもそも違う。」



「えっ?そうなの!?」

『でも、昨日。魔力が多いほど技の威力は高くなるって聞いたのに……!』


「確かに、威力は高くなるのは事実だ。」

「だが、少ない魔力量でも、"魔力を込める箇所を限定すれば"──威力は格段に跳ね上がる。」



「『魔力を込める箇所??」』


今度は二人ともが首を傾げていた。



────────────────────────➖



「魔力を込める箇所を限定することで、少ない魔力量でも威力を底上げすることが出来る。」

「武器との相性によって、武器の性能を最大限に発揮することが出来るとも言ったな。」


「つまり、相性が良ければ、少ない魔力でも工夫次第で強力な力を発揮する事が可能なんだ。」



木の枝を構えるアストラを見上げる2人は、再び「『おぉ〜!』」と、声を出していた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


[今回の一言♩]

喉の調子がイマイチ……。


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