欠片212.『銀白鳥を討て─①① 〜それぞれの想いと覚悟』
欠片212.『銀白鳥を討て─①① 〜それぞれの想いと覚悟』です!
【サーチサイド VS鳳凰屑神鳥】
アストラが消えてしまった後、一同が動揺する中、銀白鳥は何事もなかったかのように襲いかかる。
三又が光り出し上空に飛び上がると、口を開き大気中の水分を集め出していた。
『アストラが……消えた?ウソ……。』
「おいッ!!!どこにやったんだオマエェェ!!!」
魔弾を銀白鳥に撃ち込むも、十分に魔力を溜められていない魔弾の威力では、装甲に傷をつけることさえ出来ていなかった。
《サーチくんが冷静じゃないな……。無理もない。ボク自身何が起きてるのか分からなかった。》
《正直、彼女の心配もしたいけど……戦力的に彼女がいない現状をどうするか考えないと。》
《ボクの力だけでヤツを倒せるのか?》
『やるしかない……。』
ヘイパは振り返り、後方にいるサンに話しかけた。
『サンさん。頼みがあるんだ。』
『?』
『この状況、かなりまずいですね。一度、撤退しますか?』
『撤退するにしても、囮役が必要だ。』
『確かに……では。私が──』
『いや。』
『可能性があるかどうかは分からないけど、ここからはボク一人でやるよ。』
『!!』
『それではヘイパ殿が……。』
『………覚悟は出来てる。』
『二人を連れて下がってくれないかな。』
『しかし………。』
『頼む。』
『………。御意。』
『その覚悟。しかと受け取りました。』
『二人を避難させた後に必ず戻って来ます。ご武運を。』
コクッ─。
『………。』
覚悟の決まった眼差しに、サンも決断した。
そして、サンの言葉に頷いたヘイパは、再び銀白鳥の方を見上げていた。
同時にサンは飛び上がり、勢いよくサーチとフロデューテを両足で掴み飛び去った。
バサッ──ヒュッ─!!
ガバッ──!!
「なっ!?」『えっ!?』
『我々は一度撤退します。』
「オイッ─!!何すんだサンッ!!オレはアイツに!!それにまだ──」
『待ってよ!!サンさん!まだヘーパさんが!!』
『………。』
「『──!!』」
(師匠……!!)
《ヘーパさん……!!》
苦しそうな顔をするサンを見て、二人はそれ以上声が出せずに、涙を浮かべていた。
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『悪いけど、ここからはボクが相手になるよ。』
『彷宵徨要塞公爵。ヘイパ・トイスト。』
『ボクの命に変えてでも、オマエを倒すッ──!!!』
シュゥゥゥゥ───。
大きな水の玉が出来た銀白鳥は、ヘイパに向けて放たれていた。
そして、すぐに口から炎を吐き出していた。
『避けれない……!』
《切るしかない。》
スパンッ───!!
"バシャァァァッ"───!!!
辺り一面が水浸しになった瞬間、水球に隠れて見えていなかった炎が大量の水に触れた。
《マズイ!!これはッ───》
"ドパァァァァン"──!!!
高温の物質が冷たい水に触れることにより、一気に蒸発することで水の体積が何倍にも膨れ上がる。
それにより発生する水蒸気には大きな圧力と衝撃が発生する。
つまり、広範囲の水蒸気爆発へと変わるのだ。
立ち込める白い煙の中、銀白鳥はゆっくりと地上に降り立っていた。
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その場を離れたサーチ達は爆発音ととてつもなく高い白い煙が上がるのを見ていた。
「何だよ今の!!なぁ、サン!やっぱりオレ達をさっきの場所まで戻してくれ!」
『………。』
『お願いッ!まだあそこにはヘーパさんがいるんだよ!?』
『……出来ません。』
「何でだよッ─!!」
「アストラも!ヘイパさんもまだ……!!」
『子供を守るのが、大人の責任だからです!!』
『私には力が及ばなかった。だから、ヘイパ殿が代わりに。』
その言葉に少しは冷静になったサーチは、真剣な目でサンを見て話し出した。
「守るもんに優先順位なんてあるかよ。」
「オレはもう………守れなくて後悔すんのはイヤなんだ。」
「ここで逃げたら、オレは一生後悔すると思う。」
「それに、師匠なら逃げもしないし、守ったハズだ。」
『それはアストラ殿だからッ──』
「少しでも守れる可能性があるんなら、見捨てる選択肢はねぇよ!!」
「ここに来る前に話したじゃん!ヴィーナスの姉ちゃんが言ってた言葉を忘れたのかよッ!!」
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『この戦いは彷宵徨要塞に住む全員の命を懸けた戦いだッ!!』
『このまま侵食が進めば、ここでは住めなくなっちまう。』
『全員で勝つぞォッ!!!』
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「バッタの時とおんなじだ。フロデューテも、ヘーパさんも、師匠も。そして、サン!オマエも、今は共に戦う仲間だろ!?」
「全員で帰るッ!!!」
「誰一人、死なずに帰るのがみんなの戦いなんじゃねぇのかよッ!!!」
『………。』
「サンッ─!!」
『………。』
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『頼む。』
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《すみません。ヘイパ殿。あなたの覚悟より、私は彼の言葉を信じてみたくなりました。》
『分かりました。ヘイパ殿の所に戻りましょう。』
「サン──ッ!!」
サンの言葉に笑顔になるサーチ。
再びサンはサーチとフロデューテを連れて戦場へと羽ばたき始めた。
─────────────────────────
シュゥゥゥゥゥゥ………。
立ち込める水蒸気爆発の煙が晴れた場所に、ヘイパが刀を地面に刺し、かすり傷を負いながら立っていた。
『……ハァ………ハァ…。』
《使わされちゃったな。本当はもう少し取っておきたかったんだけど。》
ボボッ──……ボッ──……
ヘイパの体の所々からピンク色の炎が纏っていた。
『赤鬼・炎狐……。』
《間に合わせなければ、身を守れていなかったかな。………負荷がかかるから早めに終わらせないと。》
──チャキッ。
『いくよ。』
刀を鞘に収めたヘイパは、足を斜め前後に開き、抜刀の構えに入ると、身体中からピンク色の炎が激しく燃え上がっていた。
『赤鬼・抜刀────』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
薬飲んでなんとかなんとか。
頭の中で浮かぶので、忘れないうちに書きます。
あと、本当はサブタイ書かないで行こうと思ったんですけど。
結構長めに続くので、サブタイつけました。
過去の『銀白鳥を討て』シリーズのエピソードにも、サブタイ差し込むかも知れません。




