欠片202.『銀白鳥を討て─①』
欠片202.『銀白鳥を討て─①』
フロデューテとサーチの返答を聞き、口元が上がる鳳凰フィーニクスは答えた。
『ありがとう。』
『ワタシはそろそろ眠るとしよう。会えてよかった。』
《其方も良くやってくれた。》
フィーニクスはタリバーに翼を向けると、タリバーは炎に包まれて燃えてく。
そして、『ポワポワ』っとオレンジの丸い光の粒になって空は舞っていった。
『タリバー様!!』
『弔っただけだ。ワタシの炎に包まれたなら、天へといける。』
『さあ、これに乗って下に。』
3枚の大きな羽が3人の前に現れ、一同は羽に乗った。
すると、鳳凰が目を瞑ると一緒に、下へと降りて行った。
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スゥ──。ストッ。
羽が地面の近くまで降り立つと、3人は羽から降りた。
サーチとフロデューテが無言の中、アストラが言葉を切り出した。
「………。」
『……。』
「霧も晴れたな。」
「帰ろう。」
「うん。」
『ええ。』
そうして、3人は彷宵徨要塞へと帰還した。
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【彷宵徨要塞 会議室】
会議室には、公爵ヘイパ・トイストを始め、元公爵オールド、各大臣が揃っており、今回の件について話し終えた後だった。
『ご苦労じゃった。』
オールドの一言から、少しの間をあけて話し始めた。
『そうか。タリバー様が。』
『しかし、鳳凰様からは無事に恩恵を受けたようで安心したわい。』
『お姉ちゃんはまだ起きないの?』
フロデューテの質問に、ヘーパが答える。
『ヴィーナスはあれからうなされたりしているけど、目を覚さないんだ。今はデューンたちが観てくれてるよ。』
『そう…。』
『ヴィーナスの本意では無いとはいえ……ごめんね。フロデューテちゃん。キミを守っていたヴィーナスには、顔向けができないよ。』
『んーん。お姉ちゃんの過去を、フィーニクス様から聞いたの。』
『なんじゃと…!?では、オヌシ……』
『ええ。オールドおじちゃんも、お姉ちゃんと一緒に守ってくれてたんでしょ?……ありがとう。』
『ワシは……。そうか、全てを知ったのじゃな。』
『うん。』
『だから、今度はアタシがみんなを守るよ。』
『それに今回、フィーニクス様が言ってたお願い──』
『銀白鳥を討て。』
「なあ、その四神?なんだっけな、なんとかへいやのホウオウセツシンチョウだっけ?」
「それってどんなヤツなんだ?」
サーチが尋ねると、ヘーパが答えた。
『四神。と呼ばれる。今まで人類が勝てなかった機屑物のことだよ。』
『この世界に突然現れ、機屑物の頂きに立つとされる物達って言われててね。これまでに確認されている四体の機屑物がいるんだ。』
『まあ、確認と言っても歴史的な手記に残されているだけなんだけどね。実際に見たことがあるか分からないから、その実態は謎に包まれてるんだけど。』
『それでも、最近そのうちの一体が確認された。』
「マジかよ……」
「どんなヤツがいるんだ…?」
『手記や噂では──』
『吹雪の中を駆け抜ける赤い二つ残光……四神・血染・百雪花繚乱 の雪屑白虎。』
『自身の体を八つの龍へと散りばめた、四神・八ツ逆ノ星屑龍。』
『大地を踏み鳴らし、平地へと帰す。四神・大震災……象屑亀。』
『そして、ありとあらゆる草木を燃やし尽くし、生命を奪う。』
『………四神・更地平野ノ鳳凰屑神鳥。』
『その四種が確認されている……人類ですら敵わなかった機屑物だよ。』
その時、アストラがサーチに声をかけた。
「サーチ。オマエの仇であるデカい亀の機屑物がいただろう。」
「え?」
「うん。」
「ヤツはその内の一体だ。」
「……!!アイツが……!!」
(おやっさんやみんなを殺したあの機屑物が……四神の一体……。)
「その、鳳凰屑神鳥が相手ともなると、ヴィーナスが居ないままなのは戦力として厳しいとも言える。」
『鳳凰様はフロデューテちゃんと、キミ達に頼んだんだよね?』
「ああ。だが、今のままでは勝てる見込みは薄いかも知れないな。」
(月の満ち引きもない。ワタシの力も発揮できないだろうしな。)
「もう何名か手練れの力を借りたい所だな。」
静寂が流れる室内で、その場にいる誰しもが思いもしれない声が響き渡った。
『ボクが行く。』
ヘーパの返答に、オールドや大臣が驚き反論する。
『またんか……!!オヌシはここの公爵じゃ。ヴィーナスが目覚めん今、この要塞の要はオヌシなんじゃぞ!!ヘーパ!』
『そうだ!キサマがここを離れると言うことは、民への信頼を損なうと言うことだぞ!!』
『要塞に何かあった時、お主は責任を取れるのか!?』
『民の長が、易々と要塞を放置して如何なるものか!!』
ヘーパは握り拳に力を入れると、プルプルと手が震えていた。
『分かってるよ。でも、ヴィーナスならそうする。』
『ボクじゃなくて、ヴィーナスがもし公爵だったとしたら、大切な妹の為に力を貸すのは当たり前だろう?』
『民のことも大事だけど、家族を守りたいって気持ちはいけない事なのかい?』
『立場が危ない…?そんな事どうだっていいッ!!』
『ヴィーナスの夫であるボクが、彼女の大切なものを守れないなら……。』
『ボクが長に立つ意味がないじゃないか!!!』
『ヴィーナスも、フロデューテちゃんも大切な民の一人だ。そうだろう?』
『ヘイパ……。』
『ヌゥ……。』
『……しかし。』
『……それはそうじゃが…。』
『必ずみんなで帰ってくる。その後のことは好きにしてくれていい。』
『公爵。ヘイパ・トイストの名において。』
『ヘイパ・トイスト。フロデューテちゃん。サーチくん。アストラさんの四名にて──』
『鳳凰屑神鳥の討伐に出るッ!!!』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
眠たくて眠たくて震える。




