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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第二章ー彷宵徨要塞〜あの日の覚悟と鳳凰の願い〜ー
204/266

欠片202.『銀白鳥を討て─①』


欠片(ピース)202.『銀白鳥(ぎんはくちょう)()て─①』




フロデューテとサーチの返答を聞き、口元が上がる鳳凰フィーニクスは答えた。


『ありがとう。』

『ワタシはそろそろ眠るとしよう。会えてよかった。』


《其方も良くやってくれた。》


フィーニクスはタリバーに翼を向けると、タリバーは炎に包まれて燃えてく。

そして、『ポワポワ』っとオレンジの丸い光の粒になって空は舞っていった。



『タリバー様!!』


『弔っただけだ。ワタシの炎に包まれたなら、天へといける。』


『さあ、これに乗って下に。』


3枚の大きな羽が3人の前に現れ、一同は羽に乗った。

すると、鳳凰が目を瞑ると一緒に、下へと降りて行った。



─────────────────────────



スゥ──。ストッ。


羽が地面の近くまで降り立つと、3人は羽から降りた。

サーチとフロデューテが無言の中、アストラが言葉を切り出した。


「………。」

『……。』


「霧も晴れたな。」


「帰ろう。」


「うん。」

『ええ。』


そうして、3人は彷宵徨要塞(イブニングフォートレス)へと帰還した。



─────────────────────────

─────────────────────────



彷宵徨要塞(イブニングフォートレス) 会議室】


会議室には、公爵ヘイパ・トイストを始め、元公爵オールド、各大臣が揃っており、今回の(くだん)について話し終えた後だった。


『ご苦労じゃった。』


オールドの一言から、少しの間をあけて話し始めた。


『そうか。タリバー様が。』

『しかし、鳳凰様からは無事に恩恵を受けたようで安心したわい。』



『お姉ちゃんはまだ起きないの?』


フロデューテの質問に、ヘーパが答える。


『ヴィーナスはあれからうなされたりしているけど、目を覚さないんだ。今はデューンたちが観てくれてるよ。』


『そう…。』


『ヴィーナスの本意では無いとはいえ……ごめんね。フロデューテちゃん。キミを守っていたヴィーナスには、顔向けができないよ。』



『んーん。お姉ちゃんの過去を、フィーニクス様から聞いたの。』



『なんじゃと…!?では、オヌシ……』



『ええ。オールドおじちゃんも、お姉ちゃんと一緒に守ってくれてたんでしょ?……ありがとう。』


『ワシは……。そうか、全てを知ったのじゃな。』


『うん。』

『だから、今度はアタシがみんなを守るよ。』



『それに今回、フィーニクス様が言ってたお願い──』



銀白鳥(ぎんはくちょう)を討て。』



「なあ、その四神?なんだっけな、なんとかへいやのホウオウセツシンチョウだっけ?」

「それってどんなヤツなんだ?」


サーチが尋ねると、ヘーパが答えた。


『四神。と呼ばれる。今まで人類が勝てなかった機屑物(ガーベマジル)のことだよ。』


『この世界に突然現れ、機屑物の頂きに立つとされる物達って言われててね。これまでに確認されている四体の機屑物がいるんだ。』

『まあ、確認と言っても歴史的な手記に残されているだけなんだけどね。実際に見たことがあるか分からないから、その実態は謎に包まれてるんだけど。』


『それでも、最近そのうちの一体が確認された。』



「マジかよ……」

「どんなヤツがいるんだ…?」



『手記や噂では──』


『吹雪の中を駆け抜ける赤い二つ残光……四神・血染(ちぞめ)百雪花繚乱(びゃくせっかりょうらん)雪屑白虎(セキセツビャッコ)。』


『自身の体を八つの龍へと散りばめた、四神・()(さか)星屑龍(セイセツリュウ)。』


『大地を踏み鳴らし、平地へと()す。四神・大震災(だいしんさい)……象屑亀(エレマントールス)。』


『そして、ありとあらゆる草木を燃やし尽くし、生命を奪う。』

『………四神・更地平野(こうちへいや)鳳凰屑神鳥(ホウオウセツシンチョウ)。』



『その四種が確認されている……人類ですら敵わなかった機屑物だよ。』



その時、アストラがサーチに声をかけた。


「サーチ。オマエの仇であるデカい亀の機屑物がいただろう。」



「え?」

「うん。」


「ヤツはその内の一体だ。」


「……!!アイツが……!!」

(おやっさんやみんなを殺したあの機屑物が……四神の一体……。)



「その、鳳凰屑神鳥(ホウオウセツシンチョウ)が相手ともなると、ヴィーナスが居ないままなのは戦力として厳しいとも言える。」



『鳳凰様はフロデューテちゃんと、キミ達に頼んだんだよね?』


「ああ。だが、今のままでは勝てる見込みは薄いかも知れないな。」

(月の満ち引きもない。ワタシの力も発揮できないだろうしな。)


「もう何名か手練れの力を借りたい所だな。」



静寂が流れる室内で、その場にいる誰しもが思いもしれない声が響き渡った。



『ボクが行く。』



ヘーパの返答に、オールドや大臣が驚き反論する。



『またんか……!!オヌシはここの公爵じゃ。ヴィーナスが目覚めん今、この要塞の(かなめ)はオヌシなんじゃぞ!!ヘーパ!』


『そうだ!キサマがここを離れると言うことは、民への信頼を損なうと言うことだぞ!!』


『要塞に何かあった時、お主は責任を取れるのか!?』


『民の長が、易々(やすやす)と要塞を放置して如何なるものか!!』



ヘーパは握り拳に力を入れると、プルプルと手が震えていた。


『分かってるよ。でも、ヴィーナスならそうする。』


『ボクじゃなくて、ヴィーナスがもし公爵だったとしたら、大切な妹の為に力を貸すのは当たり前だろう?』

『民のことも大事だけど、家族を守りたいって気持ちはいけない事なのかい?』



『立場が危ない…?そんな事どうだっていいッ!!』



『ヴィーナスの夫であるボクが、彼女の大切なものを守れないなら……。』



『ボクが(ココ)に立つ意味がないじゃないか!!!』



『ヴィーナスも、フロデューテちゃんも大切な民の一人だ。そうだろう?』



『ヘイパ……。』


『ヌゥ……。』

『……しかし。』

『……それはそうじゃが…。』



『必ずみんなで帰ってくる。その後のことは好きにしてくれていい。』

『公爵。ヘイパ・トイストの名において。』


『ヘイパ・トイスト。フロデューテちゃん。サーチくん。アストラさんの四名(よめい)にて──』



鳳凰屑神鳥(ホウオウセツシンチョウ)の討伐に出るッ!!!』


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


[今回の一言♩]

眠たくて眠たくて震える。


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