欠片198.『アタシのルーツ』
欠片198.『アタシのルーツ』です!
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【12年前 フロデューテ8歳】
【彷宵徨要塞 旧砂丘の水皇林】
『今日はアタイと一緒に機屑物の調査に行くぞ!』
『準備はいいか?デューティ。』
『うんっ!ばっちり!』
『ちゃんと観測用に作った道具もあるもん!』
《アタシだって。おねぇちゃんの役に立つんだ。》
『ハッハッハ!流石はアタイの妹だな!もうそんなスゲェ〜道具も作れるようになったのか!』
『やるじゃねェか!』
『エヘヘッ』
頬を赤くして照れるフロデューテは、ヴィーナスに与えられた水皇林へと足を運んでいた。
そこは、かつては砂漠だった場所がある日突然。
一夜にして大きな木々が生え、その中央に湖が出来たとされる場所だった。
鬼人達はその場所を『奇跡の都』と呼んだ。
しかし、実際は突然変異した巨大な機屑物も多く住んでおり、危険な場所と判断された後は立ち入りが制限されていた。
その為、調査が出来ていない場所もあり、今回ヴィーナスにその調査が回ってきたのだ。
森の中は入り組んでおり、様々な種類の鳥の声が多く飛び交っていた。
ヴィーナスを先頭に2人は歩いていたが、フロデューテが辺りを見渡していると不思議な生物を発見して足を止めていた。
『わぁ〜!すご〜い!』
『ねぇねぇ、みてこの生き物!』
『おねぇちゃ───』
『えっ?』
振り返ったフロデューテの先にはヴィーナスの姿はなく、先ほどまであった道も木々に覆われ無くなっていた。
そして、そのまま異質な森の中をフロデューテは彷徨っていた。
すると、しばらくするとフロデューテの背後の木々が倒れる音が聞こえ始めた。
フロデューテが振り返ると、そこには巨大な機屑物の姿が木の隙間から見えていた。
『逃げないと……!!』
『……ハァ…ハァ…。出口はどこ……?』
『おねぇちゃん。どこにいるの……?』
"バキッ"!!"バキバキッ"!!
と、木々を倒しながらフロデューテの後を追いかけてくる大きな「トカゲ」に似た機屑物の『大口蛙屑蜥蜴』が迫っていた。
『シャァァァアア!!』
……"ドッドッ"……"ドッド"!!
迫り来る大口蛙屑蜥蜴から逃げるフロデューテ。
しかし、木の根に足が引っかかりこけてしまう。
"ガッ"…!
『あっ……!!』
──ドサッ!
地べたに座ったまま、ジリジリと後ろに下がって行くフロデューテだったが、背後にある木にぶつかり追い込まれてしまう。
"ドッ"……!
"ドッ"………"ドッ"……"ドッ"………"ドス"。
《木ッ!?どうしよう……もうだめ……逃げられない…。》
『イヤッ!!来ないでぇぇぇ!!』
『やめてっ!!』
『おねぇちゃぁ〜ん!!!たすけてぇぇ〜〜!!』
"ガバァッ"!!!
と、大口蛙屑蜥蜴が噛みつこうとした瞬間。
『アタイの妹に!!なぁぁにぃしてんだぁぁぁ!!!』
『こんのッ!!クソトカゲ────ッ!!!!』
"ドゴォォォ───ン"!!!
木の影から飛び出してきたヴィーナスが、大口蛙屑蜥蜴の顔面をぶん殴ってバラバラにしていた。
スゥ───ドッ。
と、着地してフロデューテの元へ駆け寄った。
『フゥ〜〜〜。ケガはねぇか?デューティ。』
『う、うん。』
『よく頑張ったな!!流石はアタイの妹だ!』
"ガシガシ"っと、フロデューテの頭を撫でるヴィーナス。
『うっ……う。うぅ〜〜……。』
『おねぇちゃぁん〜〜〜。うぅっ〜……怖かったよぉ〜〜。』
『うわぁぁ〜〜ん!!』
泣きながらフロデューテは、ヴィーナスに抱きついていた。
『ハッハッ!こんなもんでメソメソしてんじゃねぇよ!オマエはアタイの妹なんだ!』
『この先、どんな困難が訪れたとしても……デューティ。オマエならなんだってできる!』
『胸を張って生きろ!!心の強い鬼人になれ!』
『いつか……自分が後悔しないために。悔いのない人生を生きろ!!』
『分かったな』
ニカッ!っと、満面の笑みでヴィーナスは、フロデューテに言った。
涙を腕でゴシゴシ拭き取ったフロデューテは笑顔で応える。
『うんっ!』
『にしても、この森……木々が動き回って調査もクソもねェなァ〜。ハッハッ!』
『こんなんじゃ意味もねェだろ〜!っつーことで、かえんぞ!デューティ。』
『えっ?いいの?』
『ったりめーだ!別にあってもなくても困らねェんだから。ほっといても良いだろ。ハッハッハ!』
『危険な目にあってまでやることじゃねェよ!』
『うんっ』
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『あの時も、お姉ちゃんが助けてくれたから。今のアタシがいる。』
『アタシのルーツはお姉ちゃんだ。』
『アタシは、お姉ちゃんの力になりたくて、支えるためにサポート出来る魔屑道具師になったんだ。』
『それに──』
胸に当てていた両手を広げ、所々傷ついた自分の手を見つめるフロデューテ。
《アタシはあの時誓ったハズでしょ。》
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『……分かったよ。お姉ちゃん。』
『アタシは……もう…』
『迷わない!!!』
"ドグッ"!!
と、フロデューテはクルダの腹に蹴りを入れ吹き飛ばす。
ズザザァァァーー…。
『……さっきよりも威力が。』
《何があった…?直前までトラウマを見ていたハズなのに……》
クルダの目の前には、キリッとした目をしたフロデューテが、両出を握り拳を作りながら大声を上げていた。
『来なさいよ!!アンタなんかにアタシは負けない!!!』
《アタシは……お姉ちゃんの妹だからじゃない。》
『アタシはフロデューテ!!!誇り高き鬼人一族の戦士!!』
『覚えておきなさい……』
『アンタを倒す女の名前よ!!』
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『アタシは、お姉ちゃんに助けられる兵士のままじゃなくて、アタシも……。子供たちやお姉ちゃんを守れる戦士になるって決めたんだ。』
『誇り高き鬼人になりたいッ!!!』
『だから、アタシに力を貸して欲しいッ!お願いッ────!!!』
その時、目の前が光出し霧が晴れ渡って行った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
兵士と戦士の違いは明確にあるみたいです。




