欠片197.『誇り』
欠片197.『誇り』です!
【アタシは、鬼人のくせに生まれつき体が弱くて泣き虫だった。】
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【周りの鬼人は女性でも強くて、勇ましくて、体つきもしっかりしてて、誇らしい鬼人だなぁって。アタシの目にはいつもそんな風に映っていた。】
【アタシには七つ上のお姉ちゃんがいる。】
『ヴィーナスはいつも強くて立派だねぇ!』
『おーい!ヴィーナス!コレやるよ〜!たくさん食べてもっと強くなれよッ!』
『オマエは鬼人一族の誇りだ!』
『ねぇ、聞いた?ヴィーナスの妹さん。体も細くて、弱々しいわよねぇ。』
『ホントにあんなのがヴィーナスと血が繋がってるのか?』
【お姉ちゃんはとても強くて、アタシなんかがお姉ちゃんの妹でいいのかな。って大人達の言葉を聞くたびにそう思った。】
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【16年前──】
辺りには3人の鬼人の少年がおり、汚れた服で地べたに座り泣いているフロデューテの姿があった。
『うわあぁぁん〜。おねぇちゃぁぁん〜。』
ヴィーナスの妹[フロデューテ(4)]
『メソメソしてんじゃねーよ!』
『オマエのねえちゃんが、兵士に選ばれるからわりーんだ!』
『そうだ!』
『そうだ!』
1人の少年に続けて、他の少年たちもフロデューテを責める。
『女のクセに、オレのにいちゃんよりも優れてるって、とおちゃんが言ってたんだ!』
『オマエのねぇちゃんのせいで、オレのにいちゃんも別のところに入ったっていってた!』
『オレのとこもだー!』
『うぅ……あぁぁぁん〜。』
『おね"ぇ"ちゃぁ〜〜ん。うぅぅ……グスっ。』
『オマエ、いつも泣いてばっかでキモいんだよ!』
『カラダもヒョロイし。なんでねえちゃんはつよいのに、オマエはそんなよわっちいんだよ。』
『そんなんで、誇り高き鬼人にはなれねぇからな!』
『そうだ!オマエのねえちゃんも、そのうちガーベマジルにやられて死ぬんだ!』
"キッ"!!
と、少年たちを涙が溜まった目で睨みつけるフロデューテ。
『……もん。』
『……おねぇちゃんは死なないもんっ!!』
『おねぇちゃんは強くて、誰よりも立派な兵士になるんだもんっー!!』
『ふ、ふんっ!どうせいつか死ぬんだ!』
『オマエも、オマエのねぇちゃんも!』
『ねえちゃんが周りの大人から認められて、いい気になんなよ!このブスっ!』
"ドカッ"!!
と、蹴り飛ばされるフロデューテ。
その先には水たまりがあり、『バチャ』っと音を立てて背中や後ろ髪が泥だらけになっていた。
『うわぁぁぁ〜〜ん。え〜〜ん。』
すると、遠くから叫ぶ声が聞こえてきた。
『───らァァァアッ!!!』
『ん?』
『げっ!マズイぞ!』
『ヴィーナスだ!逃げろー!!』
3人が見たのは、鬼の形相で迫り来るヴィーナスの姿だった。
『テメェらァァァアッ────!!!』
『アタイの妹に何しゃがんだボケがッ─!!』
フロデューテの姉[ウェスト・ヴィーナス(11)]
少年たちはその場を去り、ボロボロのフロデューテを抱きかかえるヴィーナス。
『大丈夫か?デューティ。遅くなっちまって悪かった。』
『こんなにボロボロに……。ケガはないか?』
『ぐすっ…。ズズゥ…。う、うん。汚れちゃっただけ。』
『アイツらの顔は覚えたかんな!後でぶん殴ってやるッ!!』
『ダメだよ……おねぇちゃん!兵士になれたんだから、問題起こしちゃったらダメっ!!』
『アタシは……大丈夫だから!』
《おねぇちゃんの足手まといにはなりたくないから。》
《アタシが我慢すれば、おねぇちゃんは立派な兵士になれる。》
『………。なんかあったらすぐに呼べよ。絶対にアタイが駆けつけてやるから。』
『うんっ。ありがとう。おねぇちゃん!』
ヴィーナスは立ち上がると、小さく呟いた。
『アタイの大切なもん傷つけるヤツァ……ぜってェ許さねェ。』
その後ヴィーナスは『ガシッ』とフロデューテの頭に手を置き、ワシャワシャと撫でた。
『せっかく綺麗な赤髪が台無しだな。ハッハッ!』
『帰って風呂はえんぞ!』
『にひぃ〜』と笑顔でヴィーナスは笑いながら、フロデューテと共に家へ帰って行った。
『うんっ!』
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《あの時も。お姉ちゃんがアタシを助けてくれた。》
《アタシはいつもお姉ちゃんに頼ってた。でも、お姉ちゃんの立場を危険にさせるわけにはいかなくて、いつもこれ以上相手に手を出させないためだけに呼んだ。》
手を握り、胸に手を当てるフロデューテは、再び昔の記憶を思い出していた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
一応章ごとにキャラのスポットは当てたいな〜と考えていて。
サーチは主人公なんですけど。まあ……当分はスポットは来ないです(笑)
ただ、ちゃんと各章では活躍や成長をさせてあげたいとは思ってるので頑張ります!
今は、掘り下げはあまりしないようにしてますが、各章で少しずつする予定です。




