欠片16.『鉄大猩久屑』
欠片16.『鉄大猩久屑』です!
サーチとテツゴウが意気投合した所に、アストラがサーチに声をかけた。
「サーチ、これからオマエはどうする?」
「ここで見学すると言っていたが」
「んー……『鉄大猩久屑』の退治も見てみたいけど」
「オレは工房の作業の方が見てみたい!」
「そうか、分かった」
「ではまた後で合流しよう」
「うん!気をつけてな師匠!」
「フッ。ワタシを誰だと思っている」
「心配するな」
そう答えると、アストラは西門の方へ歩いて行った。
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【PM2:00〜 アストラサイド】
「さて、痕跡を辿ろうか」
西門があった外壁の外へと出たアストラは周りを見渡した。
「フム」
(西側と南西の方向の木が倒れているな)
(地面にある足跡もデカい)
「これならすぐに見つかりそうだな」
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【PM2:04〜 サーチサイド】
『いいか、まず鉄を溶かすのには1500℃以上の熱が必要だ』
『これは知ってるか?』
「うん!故郷の機巧技師に教えてもらったから!」
『そうか、そいでだ』
『サーチよぅ。オメェさんは機屑物らの外殻や装甲の溶ける温度は知ってるか?』
「オレが故郷でやってた時は、鉄の二倍の温度くらいでやってた気がする!!」
『正確には分かんねぇってことか』
『まあ、造るときは感覚も大事だ。仕方ねぇ』
『自然と分かるヤツァいるもんだ』
『それに優秀な師がいたとみえる。』
「ヘヘヘッ」
と、思わず嬉しくてにやけるサーチ。
『でだ、実際は『甲鎧型』以外の外殻は2600℃くらいで溶ける。だが『甲鎧型』の装甲はもっとかてぇ…だいたい3200℃以上はする。』
『が………だ!『純資源型』や『資源型』の鉱物の中にはもっとかてぇもんがある。』
『それは──』
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【PM2:24〜 アストラサイド】
"ドゴォォン"!!!
"バキバキ"………ズズゥン…!
「近いな。この音の数……」
「何かと交戦中か」
『ウガァァアアア!!!』
『キシャアァァァァァ!!!』
2匹分の鳴き声が聞こえてきた方向へ進み、少し遠方の木の上に止まって様子を見るアストラ。
「あれは」
「『菱苦土屑蛇』か」
(普通なら『菱苦土屑蛇』が捕食する側だが…)
(それは小型の『草果大猩久』の場合だ。)
(しかし、あの大きさの『鉄大猩久屑』となると…)
「拮抗してるな」
その時、木の上から見ていたアストラが何かに気づいた。
「ッ!……アレは!!」
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【PM2:05〜 サーチサイド】
『これが『純資源型』の『ミスリル』の欠片だ。』
「コレって……確か歴史本『リングストーリー』に載ってた伝説の鉱石のひとつじゃんか!!!スゲェー!!!」
『ほぅ。あの本を読んだことあんのか!』
『オメェさん、なかなかのマニアだな、ヒヒッ!!』
「実物なんて見れねぇと思ってたけど、ほんとに存在してたんだ……!!」
『まあ、欠片だがな』
『ほんの"五グラム"しかねぇ』
『それでもコイツの価値ァ…とんでもねぇもんさ』
『いくらしたと思う?ヒヒッ!』
と、テツゴウは"ニヤリ"と笑った。
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【PM2:25 〜 アストラサイド】
アストラは『菱苦土屑蛇』と『鉄大猩久屑』の近くの木の影に、幼い少女が隠れているのに気づいた。
「マズいッ…!!」
……"バッ"!!
と、勢いよく飛び出すアストラ。
『鉄大猩久屑』によってブン投げられた『菱苦土屑蛇』が、少女がいる場所めがけて飛んできていた。
スチャ……
「『龍屑・孔』」
"ビュッン"!!!"シュパパパパッ"!!!
その瞬間、少女の目の前で大きな大蛇の体がバラバラになり崩れ落ちていった。
「きゃあぁぁ〜〜!!」
「無事か?」
その場に膝から崩れ落ちていた少女は、恐怖で涙を流し震えていた。
しかし、アストラからの問いかけになんとか頷いた。
「そのままそこにいてくれ」
「ヤツはワタシが何とかする」
その言葉に、少女は再び頷いた。
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【PM2:07〜 サーチサイド】
「んん〜〜〜……100万シリカ!!」
『残念!!ヒヒッ…なんと』
『1000万シリカだ!!!』
「うへぇぇぇええ〜〜〜!!!タッケェ……!!」
『オレの貯金がすっからかんになっちまったけどな ヒヒヒッ』
『けど、コイツで破片ノ武器を造ってみたかったんだ。』
「ワクワクするな!おっちゃん!!」
「どんな破片ノ武器を造りたいんだ?」
『……。』
サーチを見つめてしばらく黙ったままのテツゴウだったが、ようやく開いた口から出た言葉は衝撃的なものだった。
『サーチ。コイツでオメェの破片ノ武器を造らせてくれねぇか』
「え?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
─裏メモ。─
『猿人似屑(エープ』の由来
類人猿 エイプ