欠片175.『流れ落ちた星々』
欠片175.『流れ落ちた星々』です!
※本作の「」と間にあるーーーの種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
【】=漫画で例えると四角い囲みのナレーション語り、用語説明
・・=強調
" "=強調、効果音など
ー1本=漫画の場面転換、幕間
➖ー➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
ー2本=漫画で例えた時の流れ
「ちゃんと来たね。」
3人と1匹は、レイク・バーバに言われた通りに、小さな小屋の隣にある、大きな小屋の扉の前に集まっていた。
「なあ、舟を出すんだよな?」
「夜の方が、機屑物に襲われにくいのか?」
・・・・
「そんなのは昼でも夜でも変りゃしないよ。」
「ついておいで。」
ギィィィィィ───……ガガガッ…。
大きな扉を開けるバーバに驚くバカパカだったが、他の3人は中にあるモノに驚いていた。
「これは…」
『凄い大きさですね。』
「な、何だコレェ───!?」
「なんか、デッカいのが付いてるぞ!」
「タコの頭かー!?」
暗闇の室内に、破れた小屋の隙間から照らす光から見えたものは──
「コイツで向こう岸まで送ってやるッ!!」
「全員乗れる大きさはあるでね!」
「全員乗りなぁ!」
そこにあったのは、大きな"熱気球"だった。
大きさは下のカゴの幅は5メートルを超えていた。
そして、カゴの側面の2箇所には、人工的に開けたと思われる穴が開いていた。
「コイツは気球って呼ばれる乗り物でね、空を飛べるのさ!」
「アタシゃが昔から乗ってきた相棒さね。」
「うぉぉぉぉ──!!スッゲェ〜〜〜!!」
「これに乗ったら、オレも空を飛べんのか!?」
「フンッ。当たり前さね。」
「準備をするから、ちょっとお待ちよ。」
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上空に上がった気球は、ゆっくりと前進していった。
「バアちゃんは、ここを渡りたい人のために飛んでんのか?」
「………。」
「ん?どうしたのバアちゃん?」
「今日も……いい天気さね。星がよく見える。」
「この湖の名前は、『星鏡の湖』と言ってね。」
「夜空に浮かぶ星々の明かりが、大きな水面に反射する光景が綺麗だから、そう"あのバカ"が名付けたんだ。」
「ん?バカって?」
「そうさねぇ。昔はよく、一緒に見たもんさ。」
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【62年前 レイク・バーバ当時24歳】
アタシには恋人がいた。
一緒に湖の監視・案内役を任されていた2歳年上の彼が。
ここらの湖には、機屑物がよく現れるらしい。
だから、アタシと彼は中型の木船を、『竜巻』の魔屑石に魔力を込め動かしていた。
普通は威力がありすぎるため、魔力の量を調整しながら上手く仕事をこなしていた。
そんなある日、木船が壊されるほど大きな機屑物が現れた。
姿は首が長く、ハッキリと姿までは分からなかった。
その場にいた皆姿まではみることが出来ずに、シルエットしか分からなかったらしい。
それから、アタシと彼は新たな運搬方法について考えつき、検討していた。
「バーバラ!この気球ならいけるよ!!」
「熱の気流を利用して、空を飛ぶんだ!!」
レイク・バーバラの恋人[プロポミス(26)]
[種族:ヒト]
「そんなリスクあるもの、ホントに大丈夫なの?」
プロポミスの恋人 本名[レイク・バーバラ(24)]
[種族:ヒト]
「大丈夫さ!ボクの計算だと、かなりの重量の荷物やヒトも乗せれるッ!」
「この気球を二台作るんだ!湖の向こう岸にもう一機置いて、この湖を渡る!!」
「それも、広大な綺麗な湖を上から眺めながら行けるんだ!」
「想像するだけで胸が躍るよッ!ハハハッ!」
「お客さんの喜ぶ顔が浮かんでくるんだ!バーバラ!必ずキミにも上からの景色を見せてやる!」
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「そう言って、プロポミスは気球を二台作り、運搬を始めた。」
「この気球の両サイドについている二つの穴は、気球同士を固定するための接続部分なんだよ。」
「鉄のパイプをはめ込むことで、連結させ固定させたり、上空で固定したまま二機の気球で飛ぶことも出来る。」
「そう……あの日もアタシゃあとプロポミスは、二人並んで流星群を眺めていた。」
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「どうだ?綺麗だろ──!!」
「キミにこの景色を見せたかったんだ!」
2機の気球が完成してから、しばらくしてアタシとプロポミスはそれぞれの岸で働くことになっていた。
昼間は運搬として気球を飛ばして、受け渡しをする。
彼に会う時間も短くなっていた。
そんな時、夜にこっそり会うことを提案された。
アタシは嬉しくて、その案に乗った。
だから、昼間の暇な時に昼寝をして、夜に備える日が多くなっていた。
「今日はどうしても、キミとココに居たかったんだ。」
「どうして?」
「下を見てごらん。」
「ん?」
アタシが下を覗くと、大きな湖には闇に光り輝く多くの星々と流れ行く流星群が反射していた。
「──!!」
「綺麗……素敵だわ。」
今思うと、水面に流れる流星を眺めながら横目で見えたプロポミスの視線は、アタシを眺めていたのかもしれない。
「凄いだろ!星が鏡のように反射して輝いている湖……『星鏡の湖』。」
「ミーラテュア?」
「そうだ!ボク達だけが知ってる景色の名前さ!」
「ここの呼び名にしよう!」
「いいわねぇ、それ!」
「また来年も見られるといいわね!」
「ああ!毎年夏ごろに流星は観測されてる!」
「来年も見れるさ!」
その時だった。
銀色に輝く大きな影が、湖に反射するのが目に映った。
「ん?」
そして、1秒にも満たない間に、アタシとプロポミスが乗っていた気球が大きく揺れていた。
「う、うわァァア!!な,何だ今のは!?」
「何が起こったのッ!?」
「プロポミスっ、大丈夫?」
「ボクは平気だよ!そ、それより高度が落ち始めてる!!気球は──」
「──ッ!!!」
「マズいッ!球皮が破損してるッ……!!」
(墜落の速度が早すぎるッ……!!)
(ダメだ……このままじゃ二人とも墜落する。)
(それだと……バーバラまで…)
「破れてる気球はボクの方だけか……」
(やるしかない。)
バッ──!!
アタシには何が起こっていたのか、全く理解できていなかった。
けど、あの時に見た。
銀色の大きな鳥が、飛び去っていく姿は忘れることができなかった。
そして、すぐにプロポミスがしている行動に気がついた。
ガチャ──ガチャガチャ……。
「なっ──何をしてるのッ!?」
「それを外したら…!!」
プロポミスは、連結している鉄のパイプを外そうとしていた。
「このままじゃ、ボクの気球ごとキミも墜落するッ!!」
「キミを、死なせたくないんだ。」
「ボクの命なんてどうだっていいッ!」
ググッ──。
(コレを引き抜いてしまえば……ボクはもう。)
「キミのことを愛してるよ。バーバラ。」
「いつまでもキミを愛してる。最後にキミと素敵な景色を見れてよかった。」
「何年も、何十年経とうと、この景色は変わらない。」
「だから……キミが見ている限り、ボクもあの世で思い出せる。」
ガコッ──。
「待っ───、プロポミスッ!!」
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「その日から、事故を起こしたことで、この場所を利用する客はいなくなった。」
「そして、アタシゃあは今でもこの場所で、毎晩湖の上を飛んでるのさ。」
「おっちんじまった……あのバカと一緒にねぇ。」
「ほんと、バカだよ。」
「おかげで様で……昼間は寝てばっかりさね。」
「バァちゃん。」
サーチが一緒に下を覗くと、空から下に向かって光り輝く一筋の星が流れていた。
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[今回の一言♩]
湖畔までたどり着くとこまでは考えていたんですけど、その後の話は、歯医者の治療中に思いつきました。




