欠片172.『モフモフ』
欠片172.『モフモフです!
※本作の「」と間にあるーーーの種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
【】=漫画で例えると四角い囲みのナレーション語り、用語説明
・・=強調
" "=強調、効果音など
ー1本=漫画の場面転換、幕間
➖ー➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
ー2本=漫画で例えた時の流れ
バカパカを仲間にした3人は、湖まで進んだ後に野宿をして一夜を明かしていた。
そして、次の要塞までバカパカを送り届けるため、早朝から出発の準備中にサーチがアストラに話しかけていた。
「あの〜?アストラさんー?昨日からどうしたんでしょうか……?」
「ずっと喋ってないですけど……」
「………。」
「サーチ。この世には……素晴らしいモノだってある。ワタシは今、それを噛み締めているんだ。」
「邪魔をするな。」
「ええっ?」と、動揺するサーチをよそに、アストラはブツブツと1人で呟いていた。
「要塞までしかないのは致し方ないが……くっ…。それまで、ワタシは見届けるぞ。」
「えっと……?よく分かんねぇけど、もう分かったよっ!」
と、サーチはよく分からないまま納得したフリで誤魔化した。
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──
サーチが宿泊道具を片付け終わると、サンが話しかけてきた。
その間、アストラは、バカパカの毛を触ろうとしていた。
『出発ですか?』
「うん!なかなか進めてないから、今日で五十Kmくらいは進みたいな!」
『では、私が先行して、先の状況を見てきましょう。』
「え?どうやって?」
『ケガで飛べませんでしたが、もう治りましたので。空から!見渡して参ります。』
「おおぉぉぉ〜〜!!!マジかー!」
「頼んだー!何かあったら知らせてくれっー!」
『御意。』
"バサッ"!"バサバサッ"ー!!
と、サンは大きな翼で羽ばたき、上空へと駆け上がっていった。
太陽に照らされる光の影に、大きな黒いシルエットで下から眺めるサーチは見えていた。
「うっはぁ〜〜!!スッゲェ──!!」
「あんな高さまで飛べるのか──!!」
「飛べるっていいなぁ〜〜!!」
"キキィィィ"─────!!!
と、高らかに鳴き声を発して青空の下を飛んでいた。
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『………。』
《五十Kmくらいとなると、まだしばらく高原を歩きそうですねぇ。》
《要塞は……ここから見渡しても見えませんか。》
『キキィィィ────』
ビュンッ───
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サンは急降下し、サーチたちの元へと戻ってきた。
バサッ……バサッ……
「サンッー!!どうだったー?ナニか見えたかー?」
『いえ、しばらくは高原が続きそうです。』
『要塞も見当たりませんでした。』
『数十Kmほど進んだ後、大きな湖と古屋が見えました。そして、湖の奥にある大きな山を超えなければ……先の景色は見えなさそうです。』
「マジかよ〜〜……」
『まあまあ、のんびりと行きましょう。ふふふ。』
『アストラ殿も……』
「フフッ。モフモフ。」
アストラは、バカパカの毛をもふりながら顔を背中に押し当てていた。
『………。』
《見なかったことにしましょう。》
「ところでさ、バカパカは元々なにしてたんだー?」
『ベェボ…?あ、すいやせん。この体になってからつい鳴き声が反射的に……』
『そうっすね〜、前は王都にいたんすけど、この姿にされた後、気付いたらこの辺りにいて……』
『直前に魔法陣が出てたんで、もしかしたら…飛ばされちゃった感じっすかね〜?あはは〜』
「ふ〜〜ん。何でいきなりそんな姿にされるんだよー?悪いことでもしたのかー?」
『いやいやっ!そんなことしてないっすよ〜〜!!ほんっとに心当たりがなくて、そもそも……』
ボソッ…
『この世界のことさえ……知らないのに。』
「ん?よく聞こえなかったけど、かわいそうだな〜」
「メシも草しか食べれてないんだっけ?」
『そうっすね〜、何もないまま飛ばされちゃったので、最終手段として草を食べましたよ。そして、途方に暮れてる時にサーチさんたちに出会ったって感じっすね!』
『いや〜ほんと神っす!サーチさんたちが来なかったら、自分、絶対今日も草食べてたっすもん〜!!』
「はははっ!今日は魚かキノコでも獲れたらいいな!」
「サン、この近くに川は流れてた?」
『ええ、もうしばらく進むとありましたよ。』
「なら、そこで釣りでもするか!」
『やった〜〜!!魚が食べれる〜〜!!ベェボォ〜!!』
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3人と1匹は、小さめの川に辿り着いていた。
「キレイな水だな〜!」
「魚もいっぱい泳いでるぞ──!」
『ベボォ〜〜!!さっかな♩さっかな〜♩』
『もうどれくらいタンパク質を取れてないことか〜!!』
「たんぱく、しつ?なんだそれ?」
「そんな魚がいんのか?」
『あっ、そっか……』
『アハハハハッ……えっとっすね〜!魚を食べると元気が出るじゃないっすかー!その元気の元となる名前のことっす!』
『まあ、覚えなくて大丈夫っすよ〜〜』
「へぇ〜〜!意外と物知りなんだなオマエ!」
サーチに褒められたバカパカは、内心焦っていた。
『ま、まぁまぁっすよ〜!』
《あっぶねぇ〜、そこまで詳しくないけど、何とか誤魔化せたっすね。この世界の人に、オレっちの世界のことを言ってもちんぷんかんぷんっすからね〜!》
《にしても、太陽くんと真子ちゃんは無事っすかね〜?オレっちだけ飛ばされたのも謎っすけど。あの二人は無事かな〜》
《てか、絶対あの王様と姫様ゆるさねぇ……。》
《まっ!今は魚が食べれる喜びを満喫しますかね!!》
その後、各々が罠を作ったり、石で囲って逃げ場を無くして手掴みしたり、釣りをしたりして魚を獲っていた。
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パチパチ……ポタッ。ジュウゥゥ……。
と、串に刺した魚の在屑物から脂が滴り落ちながら、焼き魚を3人と1匹は食べていた。
『う、うんベェェェェェ〜〜!!』
『最高っす!肉厚でホクホクの白身にこの脂!!尻尾は白くて硬いから食べれないけど……うますぎる〜〜!!』
と、バカパカが興奮していた。
「ホントに何も食べてなかったんだな……ハハハ…」
『そういえば、サーチさん達はなんで旅をしてるんすか?』
『何か目的があったり?』
「ああ!オレたちの今の目標は、彷宵徨要塞に用があるんだ!」
「詳しいことは分かってないけど、バッタを倒すらしいぞ!」
『は、はぁ……バッタっすか?』
「そうだ!まあ、バッタって言ってもさ!」
「歴史生物図鑑に載ってる、あの「バッタ」だろー?」
「なら全然大したことねぇじゃーん!大きさもちっこいし!」
「いや。違うぞ。」
と、バカパカの毛を、モフモフ触りながらアストラが答えた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
この話を書いてる途中に、新作の『ムレスズメ』を執筆し始めたけど、そっちばかりで一気に20話くらい執筆してしまった。笑
星屑も頑張るぜ!




