欠片171.『バカパカ』
欠片171.『バカパカ』です!
※本作の「」と間にあるーーーの種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
【】=漫画で例えると四角い囲みのナレーション語り、用語説明
・・=強調
" "=強調、効果音など
ー1本=漫画の場面転換、幕間
➖ー➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
ー2本=漫画で例えた時の流れ
【サンの仲間加入地点から南東26km】
(進行108km 残り430km)
【残り9日】
3人はサンの体調も踏まえ、ゆっくりだが着実に先を進んでいた。
「なぁなぁ〜、オウギ一族って普段はどこに住んでるんだー?」
『大気嵐要塞と農楽園要塞の直線上に位置しているのですが、天峡雲山と呼ばれる山がありまして。』
『そこに住んでおります。』
『私は二十一の頃に隠雲に属したので、それ以降は里には帰ってはおりませんがね。』
「へぇ〜〜!!山育ちだったのかー!」
「いつか行ってみたいなー!」
『そうですねぇ……あまりオススメはしません。』
「え?なんでー!?」
『天峡雲山は鋭い剣山で出来てる山々なんです。我々は家という家を持ちません。』
『縄張りを決め、そこに近づくモノを狩る。そういう狩場としているんです。自然が家と同じなのです。なので、たいていの種族は山を登ることすら不可能とされてます。』
「なんだ〜〜、登れない山ならムリだな〜。」
と、サーチは落胆していた。
その様子を見て、『ふふふっ』『まぁまぁ』と、サンは笑いながら肩に手を置いて励ましていた。
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【サンの仲間加入地点から南東31km】
(進行113km 残り425km)
3人は高原の道を歩いていた。
「日没までは、もう少し進めそうだな」
「あそこに見える湖の近くで野宿するとしよう」
『ええ。』
「おーしっ!頑張るぞー!!」
と、サーチが張り切る中、サンが異変に気付いた。
『……!!ナニか来ますッ!!』
「え!?なんだ!?」
トテトテトテ。
と、3人の前に現れたのは、黒点の目をした、世界観に似合わない可愛らしい見た目をした1匹のアルパカだった。
そのアルパカを見て、サーチはあっけらかんと拍子抜けし、アストラは無言だった。
「へ?」
「………。」
(か、カワイイ。)
『ア、アルパカですね。』
「う、うん。」
トテトテトテ。
『………。ベェ〜〜。』
と、頭までの高さが1m70cmくらいで、四足歩行のアルパカが、3人を見つめたまま道の真ん中まで来ていた。
「な、なんなんだコイツ?」
「エサでも欲しいのかな?」
「………。」
(モフモフ。カワイイ。)
『どうなん、でしょう……?警戒しているわけでもないし、無表情ですねぇ。』
「ん?でも、なんか少しだけプルプル震えてないか?」
『言われてみれば、確かに。』
『………。』
「………。」
「………。」
『………。』
見つめてくるアルパカに全員が無言のまま、サーチが何かを言おうとした瞬間……それは起きた。
『なぁ、一緒に連れてってくれない?』
「は!?」『なっ!?』
「………。」
(フフッ。モフモフが喋った。)
『「えええええーーーー!!?」』
「な、ナニあれ!?喋ったんだけど!?あ、でも、モーラだってあの見た目で喋ってたし、獣人なのか?」
『じゅ、獣人のような見た目ではないですが……しかし、喋っているのは事実……。』
「………。」
(フフッ。モフモフが手を振りながら揺れてる。)
『や、違うんだけどさ。ちょっと、聞いてくれる?』
『こんな身なりしてるけど、オレっち人間なのよ』
『まあ、その、魔法?魔術?呪い?っつーの?それにかけられて、イマこんな感じ。』
『助けてくんない?』
『せめて、飯食いたくて……もう3日も草しか食べて……うぅ………ないんだよぉぉぉぉ〜〜!!!』
と、口を大きく開けながら、ブサイクな表情で泣き出していた。
「えぇ……。ホントかよ〜…。」
と、サーチは戸惑いながら、サンに相談していた。
「なぁ、どうしたらいいかな?」
「なんか、さっきから師匠はぽけ〜ってしたままだし。めちゃくちゃ怪しいんだけど、困ってるのもほっとけないよなぁ……。」
『そうですねぇ。怪しいのは間違いないですが……ヒトの姿を変える呪いの類いは聞いたことがあります。』
『なので、彼の言ってることも、ありえないことではないと思いますよ。』
『ベボォォォォォォぁん〜〜〜!!!』
と、大声で泣き続けるアルパカだった。
「う〜〜ん。まあ、悪いヤツではなさそうだしなぁ〜。」
『とりあえず、次の要塞まではご一緒しても良いのでは?』
「分かったよ〜、ははは……。まあ、なんとかなるか…」
「おいオマエ!」
「オレたちにも目的があるからずっとはムリだけど、次の要塞までは一緒に来ていいぞ!」
『ベボォォォォォォぁん〜〜……ん?おぉ〜!?本当かー!!』
『全然いい!ソレでいい!助かるよぉぉ〜〜……!!』
と、アルパカは泣きながら喜んでいた。
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『あ、オレっちはヒツジダ ヨウっす!』
「いや、アルパカじゃん!!」
『あ、いや、ヒツジダっす。』
「だから、アルパカだろ?」
『いや、ヒツジダですって!』
「どこがだよっ!!」
『あの、サーチ殿……おそらく…』
と、サンは何かを伝えようとするも……
『や、その、ヒツジ……』
ジト〜〜〜……。
「…………。」
と、睨むサーチに対して、羊田 洋は諦めた。
『あっ、ハイ〜……アルパカでいいです。もう。』
『好きに呼んで下さいっす。』
「オマエは、何度言ってもバカだから、バカパカにしよう!」
『えぇぇぇ〜〜!?そんなぁ〜〜〜……そりゃないっすよ〜……サーチさん〜。サンさんもなんとか言ってくださいよ〜〜!!うぅぅ〜……。』
『……その、生きてたら、色々となんとかなりますよ……。元気出して。』
『サンさんまで、諦めないでくださいよぉぉ〜〜!!』
と、泣きじゃくりながら、その声がやまびこするヒツジダだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
ちょっと流れで話を書いてたけど、ヒツジダさん好きになったから採用で!笑




