欠片170.『サンファン・イーグル』
欠片170.『サンファン・イーグル』です!
※背
刃の反対側で、ナイフの厚みがある部分
※本作の「」と間にあるーーーの種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
【】=漫画で例えると四角い囲みのナレーション語り、用語説明
・・=強調
" "=強調、効果音など
ー1本=漫画の場面転換、幕間
➖ー➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
ー2本=漫画で例えた時の流れ
翌朝、3人が起きている間に、顔合わせと今後のことについて話し合っていた。
「起きたか!」
『あ、ああ、貴方はサーチ殿だったな。』
「どのって……ハハッ!堅苦しいなオマエっ!」
「まあ、好きに呼んでくれ!えっと、サンファン?イーグル?ん──……」
「長いから、"サン"でいいかっ!!」
「フム」
と、アストラも納得していた様子だった。
『私は何でも構わない。サーチ殿やアストラ殿がお好きなように呼んで下され。』
「分かった」
「それでだが、サン。今後の行動について話したい」
『そうであったな。私は追われ身。貴方たちと共に居れば、危険があるかもしれぬ。』
『旅の物資さえ補給出来れば、立ち去れるのだが……』
「サンはさ、なにかやることあるのー?」
『いや、追手から逃げているだけで、特にやることは……』
「ならさ、追手のことはオレらも何とかするからさ、一緒に来ないか?」
『……なっ!?そんなこと、関係もない貴方がたに……もし何かあったら責任が取れない…。』
「大丈夫だって!オレたち強いから!ヘヘヘッ!」
「まあ、特に師匠がだけど!」
『しかし……』
悩んでいるサンに、アストラが話しかける。
「我々の目的地は、彷宵徨要塞だ。そこで、八天星・ウェスト・ヴィーナスへの協力を手伝うことだ。」
「この時期なら、聞いたことくらいはあると思うが、"侵食の災害"……『蝗害』について対策を進めている途中だ。」
『…なっ!!まさか、アレらを相手取るというのか!!?』
『貴方たちはいったい……』
「まあ、策もなしにはやらん。すでに装置は作成済みだ。あとは、ヴィーナスがほとんど終わらせるだろう。」
「ワタシたちは、残党処理だな。」
「比較的ラクに終わるハズだ。」
『……そうは言っても…凄まじい数だと聞く。』
『オウギ族、族長の話でも聞いた事があるが……空の地を得る我々でも危険視するほどだと聞いている。』
「規模にもよるだろうな。今年がどのくらいかは、ヴィーナスの方もまだ分からんだろう。」
「なぁなぁ、こーがいってなんだー?」
「サーチは知らなかったな。伝え忘れていたが、磁塊集器は、ヤツらに使うための道具だ。」
「そして、『蝗害』とは、毎年起きている、バッタ型の機屑物……『砂屑飛蝗』の大群が各地の森林を食い荒らし、次の食べ物となる森林へ、行進し続ける災害の一つだ。」
「ヤツらは止めない限り、行進を辞めない。なのに、毎年何処からともなく大量に現れるんだ。」
「マジかよ……森を食い尽くすとか、どんな規模なんだ…?」
「数千、いや数万はいるだろうな。」
「まあ、幸い毎年、磁塊集器とヴィーナスのおかげで被害を食い止めてはいるが……」
「それでも、年々森林が減っていっているのは確かだな。」
「元々、彷宵徨要塞は森林豊かな土地だったらしいが、『蝗害』の被害にあった場所だ。」
「へぇ〜〜。マジでヤバいんだな…。」
「砂屑飛蝗……倒しまくってやるぜ!!」
「……!!」
『…!!!』
(これは……)
「囲まれたな」
『ええ。おそらくは……』
「え!?なに?追手か!?」
と、3人が背を預け、森の周囲を見渡した。
「だろうな。……八、いや九か。武器破壊が容易ならそれで構わないが、無理なら躊躇するなよサーチ。」
「……わ、分かってるよ……!」
(また、ヒトと戦わなきゃいけねぇのか。)
(でも、仲間のためだ。覚悟を決めろ。)
『すみません!巻き込んでしまって!!』
"ガチャリ"!!
と、魔掘屑箱からサンは、破片ノ武器を取り出した。
破片ノ武器『二刀羽』
双頭槍の見た目をした、先尾に刃がついている槍。
しかし、左が三:右側が七の割合で接続部分があり取り外しが可能。
そのため、取り外し後は双剣として使う事ができ、リーチの差を得たり、近接特化として状況に応じて戦う事が出来る破片ノ武器である。※
刃の形はクリップポイントナイフに似た形をベースに、背の中央部分が、『C』のようにくり抜かれて返しが付いてある。
"ガキッン"!!
と、接続部分を取り外し、槍から双剣へと持ち変えたサンは、右手は柄をそのまま持ち、左手は逆手に柄を
持って『二刀羽』構えていた。
「気にするな、乗りかかった船だ。」
『感謝するッ!!』
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森の中で隠れていた全身黒い服面とマントを着た追手達は、勘づかれたことに気付いていた。
「チィッ……バレたな。」
「ああ。相当、勘のいいヤツがいるな。」
「気を抜くな、一人に三人ずつ付け。各距離で連携しろ。」
「「「御意。」」」
「散」
"バババッ"!!"シュシュ"!!!
と、9人の追手は分散していった。
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"キンッ"ーー!! "キンッ"ーーーー!!!
と、刃が交わる音が鳴り響く森の中で、次第に音が鳴り止んでいった。
シュッ!!ババッ!!
「ハァァァァア!!!」
"ガキィンッ"!!"シュバッ"!!
と、飛び上がり短剣を振りかざす追手の攻撃を、サンは左手で持つ逆手の刃の背にある『C』のような凹みで短剣を受け止め、右手に持つ刃で追手の腹を切り裂いた。
『多種多様に応用が効くのが『二刀羽』の良さだ。ただの短剣にやられはせん。』
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「終わったようだな」
「うん」
『コチラも終わりました』
『みなさんご無事で良かった!』
3人は合流し、追手の正体について確認していた。
「誰なんだコイツらー?」
「こいつらは……」
『"隠雲"』
『大気嵐要塞の特殊隠密部隊です。』
サーチは後ろを振り返り、サンに尋ねたがアストラが口を挟んだ。
「ハイドー?聞いた事ない!各大要塞には、いろんな部隊があんのか!?」
「ないことはない。が、組織によって役割は関係性は違う。」
「大気嵐要塞の公爵はシュマックと言ったか?ヤツのやり方は昔から手段を選ばないと噂を聞く。」
『いえ、シュマックはすでに死んでいます。数年前に、何者かによって暗殺されました。』
『私が逃げ出したのは、"シュマックが暗殺された後"でしたが、今は、別の若い者がやっていると噂で聞きました。』
「……。」
その言葉にアストラは少しだけ気にしていたが、そのまま無言で聞いていた。
『ですが、私も彼のやり方には納得していませんでしたので、隠雲にとっても良いと思っている派閥もあったみたいですね。』
「そうだったのか。まあ、こいつらはマシな方だろうな。そもそも、抜け忍に九名も送り込むなんて昔では有り得んからな。」
『ですね……それほど情報の漏洩を危惧しているのでしょう。』
『とにかく、助かりました。』
『このご恩は忘れません。』
「ならさ!せっかく、乗り掛かった船なんだし!」
「やっぱり、オレたちと一緒に来ないか?」
「さっきは話の途中だったけど、サン、スゲェ強いし!どうせ旅をすんなら、誰かとした方が楽しいじゃん!」
『サ、サーチ殿やアストラ殿が良いのであれば、私はお供致しましょう』
「いいよな!師匠!」
と、サーチは、拳を握ったまま両手を胸の辺りにあげ、ワクワクしながら笑顔でアストラの顔を見ていた。
「ワタシはかまわないが。」
「やった───!!!」
「よろしくな!サンッー!!」
両手を上げ喜ぶサーチと、その様子を見て微笑むアストラにサンは答えた。
『こちらこそ、お二人とも……よろしくお願い致します!!』
そうして、サンファン・イーグルことサンはサーチたちの仲間になった。
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[今回の一言♩]
オウギワシカッコいい!ツンツンしてて色味も白黒、たまらん!




