欠片151.『戦いの末に』
欠片(ピース151.『戦いの末に』です!
※本作の「」と間にあるーーーの種類について説明
[]=人物名と年齢、種族、テキスト
「」=人物の話しているセリフ
『』=人外、多種族などのセリフ、複数人のセリフ、名称
()=人物の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=人物の念話
{{ }}=他種族の念話
【】=漫画で例えると四角い囲みのナレーション語り、用語説明
・・=強調
" "=強調、効果音など
ー1本=漫画の場面転換、幕間
➖ー➖1本=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
ー2本=漫画で例えた時の流れ
【一週間後】
【無丘陵連坦における人造人間との戦いは、第三勢力の介入により幕を閉じた】
【そしてーーーー極子水星要塞防衛戦は敗北】
【大要塞の陥落に】
【要塞に滞住する生存者は存在せず】
【死者は三万を超えたとされる】
【歴史的な大災害の一つとして、大要塞をはじめとし各要塞に報告された】
【情報元は『聖教会』の聖女からの報告により、信憑性を疑う者はおらず】
【主謀者の行方はすでに死んだとされているが】
【また聞きの話に人々は何が虚実で】
【何が真実なのかを知るよしもなかった】
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【祈祷要塞 教会隣接の病院の一室】
窓ガラスの隙間からカーテンが揺れる中、ベットの上でサーチは目を覚ました。
「う……うぅ…。」
「ここは……どこだここ…。」
病室の天井を見上げながら、まだ頭がボーっとしているサーチがゆっくりと起き上がると、フロデューテがベッドの縁で肘を横について寝ていた。
「……」
「フロデューテ…?」
『…ん…んぅ〜……』
「そうか、終わったのか」
と、自身の右手の平を見ながら、気絶する前の光景を思い出していた。
『……サーチ?』
『起きたのねーー!!よかったー!!』
ギュッ!!
と、抱きしめるフロデューテだったが、サーチの体は"ビキビキッ"と悲鳴をあげていた。
「…がぁっ…!!いてぇぇぇぇ!!」
その声に反応して、フロデューテは飛び退いた。
『あ、ご、ごめん!えへへ』
『とりあえず、みんなに目が覚めたことを知らせてくるね!!』
「……うん」
と、サーチの声は静かだった。
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サーチの元に、アストラ、フロデューテ、ホリー、クロード、ヴィーナスの5人が集まっていた。
第一声はホリーが声をかけた。
「サーチ様ぁぁ〜〜!!良かったですわ〜♡」
「一週間も目を覚まさないから、心配しましたのよ!!」
「……そんなに寝てたのか、オレは。」
カチャリ。
「本当によかったです。サーチくんが彼を倒してくれたおかげで、私たちは無事でしたからね。」
「うん。」
クロードの言葉に、サーチは素直に喜ばなかった。
俯くサーチの表情は無表情のままで、いつもの明るい様子ではないことに、みんなが気づいていた。
『チビ助ェ!ありがとな!!オマエのおかげで、アタイも助けられちまったぜ!!』
『この借りは、必ず返す!!八天星の名にかけてな!!』
「ありがとう。ヴィーナスの姉ちゃん。」
「サーチ。」
その声にサーチは、今までみんなの顔を見れていなかったが、初めてアストラの顔を見た。
「アストラ…」
「全く、ヒドイ顔だな。フフッ。」
柔らかく微笑んだアストラは、少しだけ間を空けた後言葉をかけた。
「よくやった。」
「!!!」
瞳孔が開き、死んだ魚のような目から目を見開いたサーチの目からは涙が溢れていた。
「オレ……オレは…。」
「結局なにも…。ううっ…。」
「力が……」
「あの時、師匠が守ってくれなかったら。オレはまた死んでた。」
「ホリーがいなかったら、師匠もヴィーナスの姉ちゃんも……みんな助からなかったかもしれねぇ…。」
「うぐっ……。オレは……どこかで、負けないと思ってたんだ。弱いくせに、強くなったと勘違いしてた……。」
「だからほんとは…」
サーチの言葉を遮るように、アストラが言葉をかけた。
「あの場にいた誰もが想定できていなかったことだ。」
「誰にでも予期せぬことはあるんだ。」
「ワタシたちも長年この世界で、多くの戦場で戦ってきた。だが、上手くいくことばかりじゃない。」
「……。」
サーチはそのまま静かにアストラの言葉を聞いている。
「力を持たなければ、"誰も救えない"のは確かだ。」
「だが……力を持っていても。"救えないこと"だってある。」
「ワタシたちは全てを全力でやりきった。だが、結果的に見れば……今回の戦いで、ワタシたちは負けたんだ。」
「すぐに気持ちを切り替えろとは言わん。みな同じ気持ちだ。」
「だが、亡くなった者たちの気持ちを、存在を。過去も未来も繋いでいくのは……」
「生き延びてしまった我々の役割だ。」
「これからの行動で、それを示せばいい。」
「悔いても、過去は戻らないんだ。」
「だがな、サーチ。」
「オマエのおかげで、ワタシたちは"生きている"。」
「そのことは忘れるな。」
「そして、オマエも。生きていてくれてありがとう。」
「………。」
ググッ…。
手のひらを握り、何かを決心したサーチの顔は、目の下が少しだけ赤くなりながらもいつものサーチへと戻っていた。
「おっす!!」
「ヘヘッ!」
二人の後ろでは、そのサーチの笑顔をクロードは微笑み、それ以外のみんなは笑顔になって泣いていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
あと、1話か2話挟んで、後日談は終わろうと思います!




