激戦を終えて
激戦(ミリアとの買い物)を終えた俺は、若干グロッキーになりつつも一人王都を散策していた。
初めて王都にやってきたミリアは、お上りさんそのものだった。
見るもの全てに目をキラキラさせながら、色んなものを買い、そしてその荷物は俺が背負う。
王都中をあちこち引き回されながら色んなものを買わされて、俺のライフは完全にゼロになっていた。
次回、マスキュラー死す。
デュエルスタンバイ!
(ようやく人心地つけるな……)
ふぅ、とため息を吐きながら、暗くなり始めた王都をゆっくりと歩く。
別に体力的に問題はないので、歩いているうちに心の疲れが取れてくれば、体調はいつも通りに戻っていた。
一日中はしゃぎ回り眠ってしまったミリアを置いて一人でやってきているのには、もちろん理由がある。
俺は『ソード・オブ・ファンタジア』の記憶を頼りに、とある場所へと向かっているのだった。
えっと、今回はどこだったかな……。
あれから苦節三十分。
同じ道を何度も行き来したり、候補だったはずの場所に行って無駄足に終わり周りのやつから変な目で見られたりしながらも、俺は探索を続けていた。
ひょっとすると俺は方向音痴なのかもしれないという驚愕の事実に恐れおののきながら差に探索することしばし。
なんとか目的の場所へとやってくることに成功していた。
裏路地の三番通りを四分の三ほど進んでいったところにある、一見するとただの壁にしか見えない入り口。
さて、今回はどうかな……と入り口になるであろうあたりを手探りで探してみると、なんだかそれっぽい感触が。
間断なく続いているはずの壁の一角に明らかなへこみがあったのだ。
ビンゴ、ようやく見つけたぜ!
そのまま身体を沈めていくと、俺の身体が壁の中へと溶け込んでいく。
そしてドアらしきものを発見したので、そのまま力を込めて前に押す。
ちょっと嫌な音を立てながらもドアは開き、更にスペースができた。
更に壁の中に身体を埋めていくと、次の瞬間には視界が切り替わる。
俺の目の前には見慣れない、けれど見覚えのあるエスニックな感じの室内が広がっていた。
しばらく待っていると、ドタドタと音を立てながら誰かが歩いてくる足音が聞こえてくる。
そこから現れた影は勢いよくこちらにやってくると、俺の後ろに視線を固定させていた。
「うぉおい! お前、ドア壊して入ってきやがったな!?」
「む、すまん。勝手がわからなくてな」
「勝手が……って、初めてのお客さんか。それならまあ仕方ねぇか……ってあれ、あんたはたしか……」
「ああ――また会ったな」
俺の下にやってきた影の正体。
それは俺が王都にやってきた時に出会った、これといった特徴のない凡庸な見た目をした、あの男だった。
『ソード・オブ・ファンタジア』には、情報屋と呼ばれる存在がいる。
ストーリーを先に進めるのに困った時や、既に発生しているイベントの時間制限やレアアイテムの出現場所etcetc……本来ゲームをしているだけでは手に入らない情報を金銭と引き換えに教えてくれる、ある種のヘルプみたいな存在だ。
攻略サイトを見ないタイプのヲタクである俺には、彼らの存在は非常にありがたかった。
攻略情報を見ながらゲームしてるとさ、なんか自分でやってる感じがしなくていやなんだよな。
それに一回見ちゃうとちょっとつまづいた時にまたすぐに見ちゃうようになって、ゲームの攻略自体が面倒になるというパターンを一体何度やったことか……ってまあ今はそれはいいか。
そんな情報屋は各地に何人かいるんだが、中でも特に持っている情報の多いやつがこの王都を縄張りにしている情報屋のテファンだ。
大量の魔道具を使いこなすこいつは情報屋の居場所も定期的に変えるし、おまけに情報の一つ一つの値段がべらぼうに高い。
だがその分質も良い。
俺が情報を手に入れるのなら、ここ以上に適した場所はないと思えるほどに。
「お代は高くつくが、どんなことだって教えてやるよ。さあ、何が聞きたい?」
『ソード・オブ・ファンタジア』で何度聞いたかわからない口ぶりでそう言ってくるテファンに、思わず笑みがこぼれる。
本当ならこのまま聞ける情報がフキダシになって画面に出てくるんだが、ここは現実。
ゲームの進捗状況も関係なく、好きなことを聞ける。
俺は兼ねてから気になっていたある事実について、話を聞かせてもらうことにした。
「シータ村にいるグレンについて、何か知ってるか?」
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