頷き
ルーク達を鍛えることしばし、新顔の連中も容赦なくぶん殴って上下関係を『わからせ』してから自主トレをして、少し早いが家路につく。
スラムで一日を過ごしてから街に戻るこの面倒さがどうにも懐かしい。
侯爵家にお世話になってた時は宿と屋敷だけの永遠ループで頭おかしくなりそうになってたからな……でも距離を歩くのも面倒なので、どっちもどっちだな。
これがないものねだりってやつなんだろうか。隣の芝生は青い的なサムシングなんだろう。
家に戻ると、既にローズがご飯を作っていた。
一体どういう風の吹き回しなのか、ミリアも一緒にご飯を作っている。
なんという成長だろうか。
前は俺と一緒に食器にフォークをちんちんぶつけながら、『ご飯まだー!?』と叫んでいたのが懐かしい……。
「私、そんなことしたことないと思うんだけど?」
「あれ、そうだったか?」
どうやらそんな事実はなかったらしい。
じゃああれは夢か何かか。
それなら少しでも正夢にしてやろうと、一人で食器をちんちんしてみるが……虚しくなったのですぐにやめた。
暇だったので、料理をしている二人の姿を見る。
ミリアはキッチンでローズから指導を受けながら、額に汗掻いて頑張って食事を作ってくれていた。
彼女は要領がいいので、基本的にそんなに頑張らなくても大抵のことはできてしまう。
なので一生懸命にやっている姿はなんだか新鮮だ。
今日の料理は、ミネストローネ風のスープと肉野菜炒め、そしてこんもりと盛られたパンだ。
がっつりご飯を食べる俺に合わせているため、肉が多めで食卓の色合いは男子中学生の弁当箱くらい茶色い。
「ん……美味いな」
こっちでは調味料が少ないので、基本的に味付けは塩だけだ。
だがどっちも結構複雑な味がする。
どうやらスープの方には肉を炒めて出た脂を入れてるらしい。
肉野菜炒めには……これなんだろう、なんか美味いのを入れてるな(バカ)。
ぶっちゃけ俺はかなりのバカ舌なので、味が濃ければ濃いだけ美味く感じる。
なので食べるものは大抵究極か至高で、俺の心のリトル海原雄○先生はいつも怒らずに頷いている。
「どう……かな? お母さんに教えてもらったんだけど」
「味が濃くて美味いぞ」
「そっか……良かった」
作りがいがないとか言われるかとも思ったが、そんなこともなく。
むしゃむしゃと食べる俺を見たミリアは、なんだか嬉しそうにニコニコ笑っていた。
なんだかこちらもテンションが上がってくる。
ちょうどタイミングも良いかと、さっき思い出した約束について話をしておくことにした。
「ミリア、前に言ってたアレなんだが……もしよければ、一緒に王都に行くか?」
「うん、行く行く!」
ミリアはそのままローズの方を見る。
するとローズが真面目な顔をして頷き、それを見たミリアもなぜか神妙な顔をして頷きを返していた。
……なんなんだ、一体?
というわけで俺とミリアは明朝から王都へと向かうことにした。
話を聞いていた限り彼女もかなり鍛えていたようだし、王都までの道のりでその鍛え具合を確認しておくか。
そして更に早くなった俺の瞬足具合をミリアに見せつけてやることにしよう。
コーナーで差をつけろ!
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