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純然たる力


「――ホーリーブレイド!!」


 闇の中から顔を出してきたクレインが、手に光の剣を持ちながらこちらにやってくる。

 明らかに剣の間合いを超えているが、彼が剣を横薙ぎに振るうと同時、刀身がそのままこちら目掛けて伸びてくる。


 ――これ、魔法剣か!

 勇者含めてかなり限られたやつしか使えない超高等技術だったはずだが、まさかこいつも使えるとはな。


 内包している魔力がかなり多そうなので、真っ向からぶつかるのは避けさせてもらおう。

 一旦攻撃を躱し、こちらに伸びてきている刀身を上から殴りつける。


(……硬いな)


 わりと強めに殴ったんだが、刀身は割れることなく形を保ち続けていた。

 本気でぶん殴ってなんとか壊せるってところか……これだと真っ向からぶん殴ったら俺の手がただじゃ済まないな。


 とりあえず距離を詰めながら考える。

 考えながら戦うのなんか、ずいぶん久しぶりだぜ。


「まず光魔法をなんとかしなくちゃな……身体強化!」


 身体強化を再度発動させ、更に出力を上げていく。

 この魔法には他の魔法と違い、等級というやつが存在していない。

 故に俺は自分の身体強化を、1~10(MAX)のレベルに分けて管理するようにしていた。


 今の俺が使っている身体強化はレベル4。それを再度魔法を使うことで5まで上げる。


 ちなみに最大となるレベル10は使えば人外じみた動きができるようになるが、こいつを使うと数秒で全身の筋肉が断裂して動けなくなる。

 まだまだ俺も修行が足りてないってことだな。


 とりあえずこれで、光魔法の対策はできたはずだ。

 身体強化は基本的に個別の場所にかけることはできない。全身をまんべんなく強化して肉体のスペックを上げるというのがこの魔法の本質だ。


 次に厄介なのが闇魔法だ。

 こいつを使われると視界が闇で隠されてるせいで、とにかく捕捉がしづらくなる。


 一応気配や魔力を察知して攻撃を合わせることまではできるが、どうしても狙いが甘くなって浅い一撃しか入らなくなってしまう。


 そんな状況でも相手は自由に行動できるっていうんだから、もっと皆闇魔法を使った方がいい気がするぞ。


 とりあえず俺にとって一番大切なのは、いかにしてクレイン相手に距離を近づけるか。

 更に駆けていくとクレインが光の剣をしまう。

 そして闇を作り出しその中に身を隠してから、光魔法を閃光弾のように使ってきた。


 さっきまでの俺なら明順応がうまくできずに攻撃をもらってたかもしれないが……これなら問題なく動けるッ!


「おらあっ!!」


 俺は光の中でこちら目掛けて魔法を放っているクレインの下までダッシュし、そのまま無防備な足を刈る。


「なっ!?」


 そのまま倒れ込んだクレインの腹に足を回す。

 そしてがっちりとマウントポジションを取った。

 これでもう――逃がさないぜ!


「おおおおおおおっっ!!」


 殴る殴る殴る殴るッ!


 防ごうと出してくる手ごと殴打し、綺麗な顔面が崩れようがぶん殴り、無防備になっている腹を殴る。


 攻撃が来たところへ手を持っていけば無防備になった箇所を殴り、魔法を使ってこようとすればそれを防ぐためにとにかく頭を殴る。


「ぐううっ!? まだまだぁっ!!」


 クレインが身体強化の出力を上げれば、それに負けぬよう俺もまた一つレベルを上げる。 

 レベルが6から7に上がり、更に8まで上げたところでクレインの方は打ち止めになった。


 どうやらこいつが使える身体強化はレベル7までらしい。

 いや、こいつ化け物かよ……これじゃあ身体強化しか使えない俺の立つ瀬がないぞ。


 ただ一度マウントポジションを取ってしまえばこっちのもんだ。

 クレインは魔法を使って自分の身体ごと焼き切ろうとしたり、大量の水で押し流そうとしたりと色々と策を弄してきたが、俺はそれを全て強引に力で押さえつけて殴り続ける。


 最後の方は自分ごと焼き焦がすレベルの業火を使ってきたせいでレベル9……今の俺が維持できる最大出力を発揮せざるを得ないくらいまで追い込まれた。

 けれど格闘すること十分ほどが経過し……


「ぐっ……見事だっ……」


 がくっと首を落とし、クレインが意識を失う。

 念のために首の辺りに触れると、脈は問題なく動いていた。

 どうやら気絶しているだけらしい。


「ふぅ……なんとかなったな」


 ゆっくりと立ち上がり、額の汗を拭う。

 周りを見ると、戦いの余波で色々ととんでもないことになっていた。


 練兵場の地面はめくれ上がり地割れが起こり、あちこちに人が入れるサイズの水たまりができ、火魔法が飛んでいったのか遠くにある小屋がめらめらと燃えている。


 人に被害はないかと思ったら、遠くに避難してくれているらしく、そこは一安心だ。


 しかし、ここまで悲惨なことになってるとはな。

 ……あれ?

 これってもしかしなくても……やりすぎた?


「俺……また何かやっちゃいました?」


「やりすぎですわあああああああああっっ!!」


 侯爵邸の敷地の中に、高飛車お嬢の声が鳴り響く。

 勝利の後は、いつも虚しい……。

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